ペットとの暮らしはマナーが大切
動物との暮らしは、人生を豊かなものにしてくれます。特に、孤独になりがちな一人住まいの方には、犬と一緒に暮らすことで毎日外に出るようになり、公園等で犬友だちもできるなど、健康的にも社会性の維持にも良い影響がたくさんあることが分かっています。
しかし世の中は、動物好きな方ばかりではありません。犬が怖い方や、犬アレルギーで体調を崩してしまう方もおられます。そういう方々にも配慮できないと、ご近所トラブルに発展してしまうこともあるのが現実です。
万が一愛犬の存在が原因でご近所トラブルになってしまった場合、攻撃の矛先が愛犬に向けられたり行動範囲を制限される等で、愛犬自身の不幸にもつながりかねません。
犬には悪意がなく、行動の全てが飼い主さんの管理下にあるため、決して犬は悪くありません。飼い主さんが愛犬をしつけ、周囲へ配慮を行うことが、トラブルの予防につながります。今回は、犬が原因となるよくあるご近所トラブルをご紹介します。
1.糞尿の不始末
東京都福祉保健局の公開資料に、動物への苦情に関する平成29年度都政モニターアンケートの結果が掲載されています。『他人のペットが原因で、被害を受けたり迷惑に感じたりしたことがある』という回答中の50.2%を占めたのが、「糞尿の不始末や悪臭」でした。
排泄物を通して広まる感染症はたくさんあり、公園や道路は幼児から高齢者まで、さまざまな方に利用されます。排泄物の悪臭や不衛生な状況は、よもや容認される範囲を超えており、「トイレのための散歩」という考え方は一昔前のものになりました。
トイレトレーニングで、愛犬の排泄タイミングをコントロールできるようになります。散歩の前に、自宅で排泄を済ませてから外に出るよう習慣づけましょう。それが難しい場合は、便や尿を吸い取ったトイレシーツの持ち帰りの他、マナーパンツの活用等も検討することをおすすめします。
2.鳴き声
前述のアンケートで第2位(32.1%)だったのが、「鳴き声がうるさい」でした。飼い主さんにとっては気にならなくても、他人には騒音です。特に庭先での繋ぎ飼いは防音が難しいため、問題が大きくなりやすいでしょう。
飼い主さんが家を出入りする時間帯が早朝や深夜の場合は、特に注意が必要です。留守番が長時間にわたる場合、帰宅されるまで延々と鳴き続ける犬もいます。不在時のことなので、飼い主さんには気付きづらいでしょう。
問題となるような吠え方をする原因の多くは、不安やストレスです。留守番時に愛犬が過ごす部屋の位置や環境改善、防音対策、しつけの他に、ストレスをためさせないことも大切です。留守中の鳴き声に関して、積極的にご近所に確認をする姿勢も大切です。
3.咬傷事故
前述のアンケートの第3位(19.4%)は「放し飼いのペットに恐怖を感じた」で、5位(10.9%)は「自分や家族がペットに襲われ(そうになっ)た」でした。
放し飼いに限らず、犬の咬傷事故もよく耳にします。特に予測不能な行動をするお子さんや、社会性の低い犬とすれ違う際には注意が必要です。ノーリードで過ごせる施設を利用する場合は、ノーリードでも犬が指示に従えるようにしておく必要があります。
万が一加害者になってしまった場合は、謝罪と誠意ある対応をすることが大切です。対応を間違えると、事件や訴訟問題に発展することも少なくありません。
4.抜け毛
犬アレルギーのある方は、犬の毛やフケが原因でアレルギー性鼻炎や結膜炎、呼吸困難などを発症します。ベランダや庭などの敷地内に飛んできた抜け毛や公園に落ちている抜け毛で体調を崩してしまうため、軽視できない問題です。
排泄と同様に、ブラッシングも必ず室内で行いましょう。ご自宅の敷地内であっても、庭やベランダは屋外です。
5.イタズラ
意外かもしれませんが、愛犬がイタズラされるというケースもあります。庭先での飼育や店先に係留して飼い主さんが目を離している間が、被害に遭いやすいタイミングです。
具体的には盗難、係留中のリードの無断解放、勝手な餌付け、暴力、落書きなどです。餌付けの場合、中毒を発症してしまうこともあります。
加害者にならないための対策
「アイコンタクト」「オスワリ」「マテ」「フセ」「コイ」といった基本的なしつけを、日頃から定着させておくことが大原則です。愛犬が興奮してもクールダウンさせられ、施設内でノーリードの時にも飼い主さんの下に呼び寄せられるようになります。
鳴き声問題は、毎日のお散歩や十分な遊びによるストレス発散、居心地の良い環境作りが重要なポイントです。留守番時間が長くなっても、「必ず帰って来る」と信頼していれば、犬も問題となるような鳴き方はしません。
庭先での飼育を避けて完全室内飼育をすることも、鳴き声、悪臭、抜け毛などの問題予防につながります。
被害者にならないための対策
愛犬から目を離さないことが大原則です。そのためには、お散歩の途中で寄り道をして「店先に係留したまま買い物をする」といった行動はやめましょう。
一度愛犬を加害者にしてしまうと、それが原因で恨みを買い、愛犬を被害者にしてしまうことがあります。愛犬を加害者にしないことが、そのまま被害者にしないための対策にもつながります。
完全室内飼育は、愛犬を被害者にしないための対策としても有効です。庭先での飼育は、被害に遭いやすい環境を作ります。
まとめ
愛犬との暮らしは人生を健康的で豊かなものにしてくれますが、同時にご近所トラブルの原因になることもあります。トラブルになるか否かは、飼い主さんの周囲に対する配慮ある行動やマナーにかかっています。
逆に言えば、飼い主さんが周囲の方々への配慮を忘れず、ルールやマナーを守り続けることで、ご近所トラブルを防げるでしょう。愛犬のためにも、しつけの徹底と周囲への配慮を忘れないことが大切だといえます。