盲導犬への妨害行為を調査したアンケート
アメリカで盲導犬の育成と、目の不自由な方のサポートを行なっているSeeing Eyeという非営利団体があります。この団体が提供した盲導犬のハンドラーの方々を対象に、公共の場で盲導犬が受けた妨害行為についてのアンケート調査が実施され、その結果が発表されました。
妨害行為と言うと嫌がらせなどの悪質な行為がイメージされますが、実は圧倒的に多いのは、犬への好意を含む行為や一見何の問題もないように見える行為が、盲導犬の仕事の邪魔になっているケースなのだそうです。
犬が好きな人、犬と暮らしている人ほど知っておきたい「働く犬へのNG行為」をご紹介します。
「犬が好きでつい...」という行動が盲導犬を妨害している
アンケート調査はSeeing Eyeから盲導犬を提供されたハンドラー1,761人を対象にして行われました。
回答の中で挙げられた盲導犬の仕事への妨害には次のようなものがありました。
- 道ゆく人が犬に話しかけたりアイコンタクトをして来た 89%
- 他の犬から盲導犬への定期的な非攻撃的接触 78%
- オンリードだがコントロールされていない犬から盲導犬への非攻撃的接触 78.7%
- オフリードの犬から盲導犬への非攻撃的接触 61.8%
- 他の犬から盲導犬への攻撃的接触 36%
回答者の多くが、一般の人が勝手に犬に話しかけたり撫でたりしながら「いけないとわかっているけれど、犬が好きでつい...」といった発言をしていることも報告しています。
一般の犬の飼い主は盲導犬とハンドラーに遭遇した時に、自分の犬と自分自身の管理能力を過大評価する傾向があることが調査結果から示されています。リードを付けていても、犬が盲導犬に近づいて接触することが妨害行為になることは明白ですが、一般の犬同士の挨拶と混同している人がいるようです。
盲導犬など働く犬と出会った時の心得
盲導犬に出会った時に触ってはいけないことは常識として知られています。しかしこのアンケート調査の結果は、一般の人へのさらに深い教育と周知徹底が必要であることを示していました。
以下は一般の人々が知っておくべき働く犬と出会った時の心得です。
1.仕事をしている犬は無視する
勝手に撫でることがいけないのは言うまでもありませんが、一般の犬と違って「撫でてもいいですか?」と聞けばいいというものではなく絶対に触ってはいけません。犬に話しかけることもダメです。アイコンタクトをすることも避けてください。
人間にとっては「ちょっとしたこと」でも、それが盲導犬の注意を逸らすことにつながります。集中力や注意が逸れると犬と人の安全が脅かされます。
2.自分の犬を盲導犬に近づけない
たとえリードを付けていても、自分の犬を絶対に盲導犬に近づけないでください。犬がフレンドリーで大人しいというのは関係のないことで、盲導犬の注意を逸らすことになるからです。
またハンドラーの方は近づいて来た犬の表情やボディランゲージが見えないわけですから、他の犬が近づいて来ることは恐怖につながります。盲導犬とハンドラーが見えたら「こんにちは、犬を連れていますが距離を取っているので大丈夫です。」などの声掛けが推奨されています。
万が一自分の犬が盲導犬やハンドラーを傷つけてしまった場合には責任を持つこと、盲導犬に対する妨害や危害を目撃した場合には、記録や証言などの協力も団体によって呼び掛けられています。
まとめ
アメリカの盲導犬育成団体が実施したハンドラーへのアンケートから、一般の人の悪気のない妨害行為が多いこと、盲導犬と遭遇した時の心得などをご紹介しました。
働く犬の健気な姿や、盲導犬とハンドラーの強い絆などに魅了される気持ちはとてもよくわかるのですが、大切な仕事に就いている犬だからこそ遠くから正しく見守るようにしたいものです。
《参考URL》
https://journals.sagepub.com/doi/epub/10.1177/0145482X221132540