子犬、子猫、子オオカミは人間の真似をするか?比較した調査結果

子犬、子猫、子オオカミは人間の真似をするか?比較した調査結果

子犬、子猫、子オオカミの社会的行動を比較した実験の結果が発表されました。それぞれの違いが興味深い結果です。

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子犬と子猫と子オオカミ、社会的な行動を比較調査

ハスキーの子犬と子猫

犬の社会的行動の研究は数多く発表されています。また犬とオオカミの比較、犬と猫の比較をした研究も少なくありません。しかし犬とオオカミと猫、しかもまだ幼い週齢での社会的行動を比較した研究はほとんどありません。

この度、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究チームが、子犬、子猫、子オオカミが人間が示した行動を見て同じように行動する傾向を調査する実験を行いました。

犬の社会性の高さと家畜化の歴史から、子犬は他の2種に比べてこの傾向が高いであろうと予測されたのですが、実験の結果はどうだったのでしょうか。

未知の物体と人間の行動に対するそれぞれの種の行動

オオカミの子どもたち

実験に参加したのは犬42頭(平均13.4週齢)、猫39頭(平均13.8週齢)、オオカミ8頭(平均12週齢)犬も猫もコンパニオンアニマルとして人間の家族の中で生活している個体たちです。

オオカミはメキシコとハンガリーのリサーチセンターで生まれ、人間の手で育てられた個体たちです。この子オオカミたちも人間の家族の中で生活しており、面識のない人間や他のオオカミに出会うという経験を定期的に持っています。

実験には動物たちが見たことのない2つの物体が使用されました。1つは白いプラスチック製のバスケット、もう1つは犬用玩具のコングです。

実験者が動物の飼い主に手順を説明する間、動物は同じ部屋で自由に探索し、実験者とも挨拶をしました。その後、実験に使う物体(2つのうちのどちらか)を置いて、動物に自由にさせました。

次に実験者が動物の名前を呼んで注意を引き、実験用物体と動物を交互に見ながら物体を鼻で転がす、または手で転がすという動作をして見せました。この後は動物が自由に行動し、その様子が観察されました。この手順は1頭につき3度ずつ行われました。

また物体に透明のテグスを付けて遠隔操作で物体を動かし、動物の反応を見る実験も行われました。全ての実験の様子は録画され、行動が分析されました。

種によって大きく違っていた反応

茶色い子犬と子猫

まず最初に、実験室に未知の物体(プラスチックのバスケットまたはコング)が置かれた状態で自由に探索するという場面では、約6割の子犬が物体に近づいて接触しました。

子犬よりは若干少ないものの子オオカミも同じように反応しました。これに対し子猫では物体に接触したのは約2割と低い割合でした。

実験者が物体に鼻または手で触れて見せるデモンストレーションと、テグスで物体が動いて見えるデモンストレーションでは、子犬はほぼ必ず注目しました。注目した割合はテグスよりも実験者がいる時にやや高くなっていました。

一方、子猫と子オオカミは実験者のデモンストレーションへの注目度は低く、反対にテグスで動く物体に対しては、ほぼ必ず注目しました。これは犬が人間の行動に惹きつけられるのに対し、猫とオオカミでは物体に動きだけに惹きつけられていることを示します。

デモンストレーションの後の物体への接触については、子犬では自由行動の時よりも物体に接触する割合が高くなりました。

自由行動の際の接触では全員が鼻を使って触れたのに対して、デモンストレーションの後は前足を使って触れる行動が増えました。これは犬が人間の行動に同調したことを示しています。

オオカミの場合は、デモンストレーションの後に物体への接触が増えましたが、前足を使う行動はほとんど見られませんでした。

猫は実験者によるデモンストレーションの後も物体に対して接触が増えることはありませんでした。しかし猫とオオカミはテグスで物体が動いた時には、積極的に接触する行動が見られました。

この実験では食物による報酬を使っていないので、犬は食物報酬がなくても、人間の行動に自分の行動を自発的に一致させる傾向があることが示されました。猫とオオカミは人間の行動にあまり注意を払わない傾向があり、猫は特に人間の影響を受けにくい傾向があるようです。

まとめ

子犬と子猫と女の子

子犬と子猫と子オオカミの前で、実験者が物体に触れるデモンストレーション、物体が動くデモンストレーションを見せたところ、犬は実験者に注目して物体に触れるという行動を真似する傾向があり、猫は人間の行動の影響を受けず、猫とオオカミは動く物体に対して強く反応するという結果をご紹介しました。

食べ物を使わない実験で犬が人間の行動に同調したことは、この傾向を利用して強化することで、犬の自発的な意思を利用したトレーニング方法の開発につながる可能性があります。

また、子猫の場合は違う方法でアプローチすれば、人間の行動から社会的に学習する傾向が見られるかどうかをさらに研究が必要だということです。

犬と猫の家畜化の歴史の違いが表れたとも言える結果ですが、今後の犬、猫、人間の社会的な関係を築いて行く上でも研究の次の行方が楽しみです。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-023-28959-5

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