そもそも犬はしつけに必須の「コマンド」をどのように認識しているのか
愛犬が人間社会の中で安全に、そして周囲の人にも愛されて幸せに暮らせるようにしつけをするのは、飼い主さんの義務の一つではないでしょうか。
愛犬に特定の動作をしてもらうための指示として発する掛け声のことを「コマンド」といいます。
飼い主さんが愛犬に向けてコマンドを出すと、愛犬はそのコマンドに基づいた行動をします。その結果、公共スペースでも人に迷惑をかけずに過ごすことができたり、「かわいい!」と感じてもらえる行動をとったりできるのです。
コマンドには2種類あり、愛犬の身を守るために必要な基本コマンド(フセ、オスワリ、マテ、コイ、ハウス)や、芸をさせるためのコマンド(オテ、モッテコイ、ハイタッチ、ジャンプ)などがあります。
犬は狩猟犬や牧羊犬など、犬種毎の用途に適した資質を伸ばすように、選択的な交配を繰り返されてきました。そして彼らは、その資質を活かして仕事をする、つまり飼い主さんのコマンドに従うことが大好きなのです。それは、狩猟犬や牧羊犬以外の犬種でも同じです。
私達人間はコミュニケーション手段の殆どを言葉に頼っているため、犬たちもコマンドを単語として理解していると思いがちです。しかし、現在の科学者たちの見解では、その理解の仕方は私達人間とは少し異なっているということです。
彼らはコマンドを「音」「声のトーン」「アクション」で認識しているといわれています。人間よりも遥かに広い周波数を聞き分けられますが、単語の聞こえ方が私達とは少し異なり、子音の聞き分けが苦手なのです。そこで「オテ」という発音の他に、飼い主さんの声のトーンやアクションと一緒に、総合的に覚えているのです。
そのため一般的には、まずご褒美で誘導しながら動作を教え、覚えたらその動作をする瞬間にコマンドを聞かせてコマンドと動作を結びつけ、最終的にはコマンドにアクションも追加して、コマンドとアクションのペアで動作を教えていくことが推奨されています。
犬がオテをしてくれなくなった理由と解決方法
では、犬のコマンドの認識方法やトレーニング方法を知った上で、「覚えてくれたはずのオテをしてくれない時の理由」について考えてみましょう。もちろん、「オテ」以外のコマンドに関しても同様です。
1.コマンドが聞き取りづらい
身につけたはずの「オテ」をできなかった場合、コマンドが聞き取りづらかったのかもしれません。犬は子音を聞き分けるのが苦手なため、例えば「どけ」と「オテ」のように、母音が同じで子音が異なる単語だと、聞き分けるのが難しいのです。
コマンドを統一するだけではなく、声のトーンも常に同じように発するようにしてみましょう。別のご家族の場合も、声のトーンをなるべく合わせるようにすると良いでしょう。さらに統一したアクションを合わせて覚えさせると、より成功率が上がるでしょう。
2.環境が異なる
飼い主さんは「コマンド」と「アクション」で愛犬に「オテ」を教えたつもりでいても、愛犬は別の要因と合わせて覚えている可能性があります。そのため、いつもと異なる環境や状況になると、いつもできている「オテ」ができなくなることがあるのです。
例えば、いつもリビングでトレーニングをしているのに公園でやらせようとした、いつもは家族しかいないのに見知らぬ人がいた、といったようなケースです。
どんな環境でもできるようにするためには、リビングでできるようになったら玄関で、玄関でできるようになったら庭で、庭でできるようになったら…といろいろな環境で、根気強く練習を重ねることです。
3.気が散っている
しっかり身についている「オテ」も、気が散っていてはできなくなることもあるでしょう。気が散っている原因はその時々でさまざまですが、まずは愛犬の意識を飼い主さんのコマンドに集中させることが大切です。
そのためには、まず愛犬の正面に立ち、愛犬の名前を呼ぶことでしっかりアイコンタクトをとれるように、日頃からトレーニングしておくことが大切です。
4.アクションが違う
飼い主さんは無意識でも、愛犬にとっては「オテ」のアクションだと思っている動作があり、その動作がないために「オテ」だと受け止められずにいるのかもしれません。逆に余計な身振りが加わっているために、「オテ」だと判断できないのかもしれません。
コマンドを教える場合には、アクションも合わせて教えることで、よりしっかりとそのコマンドを愛犬に認識してもらうことができます。ご家族の間で「オテ」というコマンドを統一するのはもちろんですが、同時に出す「アクション」も統一するようにしましょう。
5.ご褒美が気に入らない
中には、飼い主さんが隠し持っているおやつが気に入らないのでコマンドに応じないという場合もあるかもしれません。特におやつに執着のある子の場合は、おやつによってコマンドに従ったり従わなかったりするかもしれません。
最初の内は、愛犬もおやつ目当てかもしれません。しかし、練習を重ねる内にコマンドを通して飼い主さんとのコミュニケーションが楽しくなり、喜びを感じるようになっていくはずです。楽しく練習を重ねて、愛犬がコマンドに応えるのを楽しめることを目指しましょう。
まとめ
犬には、その犬にあったトレーニング方法があります。そして、トレーニングには根気が必要です。犬は、経験を重ねれば重ねるほど、コマンドを覚えるコツを身につけ、楽しさを理解し、ぐんぐんと覚えていくようになります。
愛犬の身を守るための基本コマンドはもちろん、愛犬との交流を深める芸のコマンドも取り入れて、愛犬と豊かな生活を楽しみましょう。