冬も油断できないマダニの被害
犬と暮らしている人にとって、マダニは愛犬の健康を脅かす大きな脅威です。一般的にはマダニの活動は春から秋にかけて活発になり、冬場は少し警戒が緩むという飼い主さんも多いと思います。
しかしマダニの中には冬でも活発な種類もいますし、気候変動の影響でマダニ活動期間は1年中いつでもという状態になっているという報告もあります。
このたび、ドイツのハノーバー獣医大学感染症医学センター寄生虫学研究所の研究チームが、ペットに付くダニを調査した結果を発表しました。日本とは少し事情が違うのですが、知っておいた方が良さそうな調査結果です。
ヨーロッパでマダニの生態の変化が起きている
過去数十年の間にヨーロッパのマダニの生態は大きな変化を遂げています。ヨーロッパ全域でマダニの分布が増加し、活動パターンも変化して年間を通して活動する傾向にあります。
過去には生息していなかった緯度や高度の場所に生息域を拡大する種類のマダニがいる一方で、また別の種類のマダニはポーランド、チェコ、ドイツなどで急速に生息範囲を拡大しています。
ヨーロッパにおけるマダニの生息域の拡大の理由は十分に解明されておらず、地球規模の気候変動が関連している可能性が指摘されています。また、森林破壊の結果として野生動物に付いていたダニが人間の居住地域に定着した可能性もあります。
増加したマダニの中には冬でも活発に活動する種類もあり(マイナス0.2℃から活動を開始する)ペットの犬への被害が増えています。ドイツや周辺国では犬のバベシア症が増加していることが憂慮されています。
獣医師と相談して、より慎重なマダニ対策が必要
研究チームはドイツとオーストリアの動物病院にマダニ調査への協力を依頼しました。調査への協力に同意した219軒の動物病院には月に1回ダニ取りキットを送付し、採取したマダニを返送してもらいました。
このマダニ採取は2020年5月から2021年6月まで14ヶ月にわたって行われ、期間中に合計19,514匹のマダニが届けられ、マダニのサンプルは形態学的に識別され、犬や猫の体に付着していた期間を推定するための測定が行われました。
調査結果はドイツ、チェコ、ポーランドなど中央ヨーロッパで急増している種類のマダニの勢力拡大を裏付けるものでした。このマダニは、従来の対ダニの駆虫薬では作用時間が短すぎることがわかっています。
また12月、1月、2月の冬季期間中も月平均180頭の犬や猫がマダニに関することで受診しており、マダニが年間を通じて活動していることが改めて明らかになりました。
研究者は認可された駆虫薬を年間を通じて使用することを推奨しています。製品の選択、正しい投与方法、作用時間について、獣医師と十分に話し合うことが不可欠だとしています。
まとめ
ドイツで犬猫に付くマダニを調査したところ、かねてから懸念されていたマダニの数の急増、種類の変化、生態の変化が確認されたという結果をご紹介しました。
冬でも活動するマダニが増えていることは日本も同様ですし、それが地球規模の気候変動のせいだとすれば決して他人事ではありません。これから暖かくなればますます警戒が必要になりますので、大切な愛犬を守るためしっかりと準備が必要です。
《参考URL》
https://parasitesandvectors.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13071-023-05693-5