飼い主は「頼れる母親」として存在すべき?!
オキシトシンというホルモンがあります。抗ストレス作用があるため、「幸せホルモン」とも呼ばれています。母親が子どもを産み育てる過程で活躍する、母子間の愛情形成に非常に重要な働きをするホルモンとして知られています。
近年犬の行動や認知科学の研究が進み、飼い主さんと犬のアイコンタクトにより、犬と人の双方でオキシトシンの分泌量が増えることが分かりました。飼い主さんと愛犬との間にも、人間の母子と同じような愛情の絆が形成されるのです。
家族の一員として家に迎えられた犬は、飼い主さんの保護の下でしか生きていけません。つまり情緒面だけでなく、実生活においても、犬は飼い主さんに対して、母親のような存在でいて欲しいと求めているのです。
犬が「頼りない」と感じてしまう飼い主のダメ行動
犬のしつけに関して勉強すると必ず目にするのが、犬のリーダー論とかアルファシンドロームといった理論です。犬の社会にはアルファというリーダーを頂点とした階層的な順位制度が確立されているという考え方です。そのため、アルファは飼い主さんだということを教え込むのがしつけだと考えられていました。
しかし近年の研究では、この考え方が誤りで、前述の通り、犬が飼い主さんに求めているのは「母子のような関係性」だということが分かったのです。
とはいえ、ただ甘やかせばよいという意味ではありません。愛犬は飼い主さんに対して上下関係を求めてはいませんが、自分をしっかりと導いてくれる、頼りになる母親像を求めているのです。
そこで今回は、反面教師となる「頼りない」と思われてしまう飼い主さんのダメ行動や、頼られるための考え方をご紹介します。
1.きちんと世話をしない
まずは母親として、以下のような最も基本的な日々のお世話をきちんとすることが大切です。
- 良質で美味しい食事を適切な量だけ与えてくれる
- 出掛けても必ず帰ってくる
- 具合が悪いと気付いて適切な対処をしてくれる 等
このような日々のお世話が、基本的な信頼関係を築きます。これができていないと「帰ってこないかもしれない」とすぐ不安になり、留守番ができない犬になってしまうこともあります。
2.褒めない
飼い主さんは、愛犬が人間社会の中で自信を持って生活できるように導く責任があります。そのために必要なのが、しつけです。何をすればよいのか、あるいはいけないのかを教えることで、犬は自分に自信を持てるようになります。
そのためには、「褒める」ことが大切です。叱られてばかりで褒められないと、愛犬は何が正しいのかを理解できません。そのため、飼い主さんの機嫌の良し悪し等で自分の行動を決めるようになってしまうでしょう。
3.自信なさげ
頼りにされるためには、常に冷静で堂々としていることが求められます。不安、心配、緊張、焦り、恐怖などのマイナスの感情を表に出すと、「いつも自信なさげで頼りない」と思われてしまいます。
頼りない親に対して、愛犬は「自分が守らなければ!」と思ってしまいます。それが、他の犬や人への攻撃的な行動につながってしまいます。
4.愛犬のことを理解できない
犬は言葉を話せませんが、自分の気持ちを伝えるために、サインを送っています。しかし、飼い主さんが積極的に犬の習性や犬種特性、ボディランゲージやカーミングシグナルを知ろうとしなければ、サインに気付けません。
伝えているのに理解してくれない飼い主さんを、愛犬も頼りにはできません。
5.ルールが定まっていない
愛犬に必要なことを教えるためには、しっかりとしたルールを決め、それを徹底することが大切です。
決めたルールを守らせることが、愛犬を人間社会の中で気持ちよく暮らせるように導きます。その場の気分や対応するご家族によってルールが変わってしまうようでは、愛犬を混乱させるだけです。
犬にとって「頼るべき飼い主」とは
では、犬から頼られる飼い主になるには、どのようにしたら良いのでしょうか。
「おおらかな人」になりきる
普段から冷静に落ち着いて判断や行動ができる人が、犬にとって頼りにされる飼い主さんだといえます。
ただ、それを実行するには、少々ハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。
あまり難しく考えず、ちょっとしたことで過剰に反応せず、何でもどんと受け止められる「おおらかな人」になりきって行動してはいかがでしょうか。最初は難しくても、次第に板についてくるはずです。
言葉でなく態度で伝える
愛犬に向かって、長々と解説したり説教したりしている飼い主さんを時々見かけます。
犬は単語を覚えられても、文章を理解するのは不得手です。ことの良し悪しは、「グッド」とか「ノー」などの短い単語できっぱりと伝えましょう。
愛犬に分かりやすいルールを決める
「ルールを決めてそれを一貫して守らせること」というと、分かりづらい「ルール」を設定してしまう飼い主さんがいらっしゃいます。
例えば「普段はソファに乗ってはいけないが、特別な日に限っては許す」とか「愛犬の誕生日だけは、人間の食べ物をおすそ分けする」といったような、複雑なルールです。
細かな前提条件は愛犬に伝わりません。「ソファに乗ってはいけない」「人間の食べ物を食べてはいけない」といった単純明快なルールを定め、いついかなる時もルールに従って「グッド」か「ノー」かを伝えることが大切です。
まとめ
愛犬は、飼い主さんとの間に母子のような関係を求めています。そして実際に、愛犬を人間社会の中で快適に暮らせるように導く必要があります。そのためには、愛犬から「頼られる」母親にならなければなりません。
犬の習性や犬種特性、ボディランゲージやカーミングシグナルなどを積極的に学び、愛犬の気持ちを汲むことができ、分かりやすくことの良し悪しを伝えられる、頼りがいいのある飼い主を目指したいものです。