犬が夜中に吠え出す理由と心理
犬は言葉で私達に自分の気持ちを伝えられないため、時に理解しがたい行動をすることがあります。
その中の一つが、「夜中に急に吠え出す」という行動です。夜中は周囲が静かなので、犬の吠え声が反響してご家族の睡眠を妨げたり、ご近所の迷惑になる場合が多いです。
犬の行動には必ず理由があります。その行動をやめさせるためには、その理由を理解する必要があります。
今回は、犬が夜中に急に吠え出す理由や心理についてご紹介します。
1.要求
夜に限らず、犬が急に吠え出す場合には、何かを要求していることが多いです。
例えば「お腹が空いた」「遊んでくれ」というような具合です。これは、過去に「吠えたら要求が叶った」という経験を持つ犬がよく行います。「吠えたら構ってもらえた」というような嬉しい経験を繰り返したことで、「吠えれば要求が叶う」と学習してしまったわけです。
この学習能力を利用して「してほしい行動」を教えられますが、「吠えたので叱った」という場合でも、構ってもらえたと喜んでしまい、飼い主さんの思惑とは異なる結果を引き出してしまうことがあるため、注意が必要です
なお、夜になれば、日中は仕事などで不在だったご家族が帰宅されます。そのため、夜になると興奮して吠え出してしまう場合もあります。そのような場合は、就寝前にお散歩や軽い遊びなどで気分転換してもらいましょう。この方法で犬もストレスが発散でき、要求もなくなって朝までぐっすりと眠ってくれるようになることも多いです。
2.不安
夜中に目が覚め、ひとりぼっちでいることに不安を感じて怖くなり、吠え出すというケースもあります。特に臆病な性格で、普段からちょっとしたことに不安がってしまう子は、このケースで夜に吠え出す傾向があるようです。
なお、最初の夜中に吠えだすきっかけが「不安」だったとしても、そこから「要求」のための夜鳴きに変化するというケースもあります。
そのため、夜鳴きを始めてもすぐに近寄って声をかけたりするのはやめましょう。基本的には安心できる寝床を用意した上で、昼間の内にたくさん遊んで疲れさせ、夜はぐっすり眠らせることが解決策につながるでしょう。
3.物音への反応
犬の聴覚は人よりも優れており、私たち人間には聞こえない周波数の音もキャッチできます。夜中は周囲が静かになるため、壁の向こうの排水管を流れる水の音や外にいる動物や虫の声、機械音など、かすかな物音も昼間以上に聞こえていることでしょう。
そのため、単に聞こえた物音に対してごく自然に反応している場合もあります。この場合は、物音がした瞬間に声を出す程度で、問題行動となるような鳴き方にはならないことが多いでしょう。
4.病気
ケガや病気で体に痛みを感じて鳴いているケースも考えられます。また、てんかんなど脳の病気が原因となって起きた発作の場合は、突然唸りだしたり異常な行動をし始めるというケースもあります。
病気が原因の場合は様子をよく観察して、おかしいと感じたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。
5.認知症
最近よく聞かれるケースとして増えてきているのが、老犬の認知症による昼夜逆転です。昼間はずっとウトウトと眠っていて、夜になると活動的になるという症状です。
活動的といっても、足腰の筋力が落ちてきて足元がおぼつかなかったり、延々と同じ場所をぐるぐると歩いたり、狭い隙間に入り込んで出られなくなったりと、目を離すと危ない場合もあります。
犬の老化はゆっくりと始まることが多いので、認知能力の衰えを感じ始めたらかかりつけの動物病院に相談し、その時々で必要な支援をして事故を防ぎましょう。早い段階で気付ければ、環境改善や適切な治療などで進行を遅らせたり、生活サイクルをある程度矯正することも可能です。
注意すべき鳴き方
では、犬が夜中に急に吠えだした場合、注意すべき鳴き方にはどのようなものがあるのでしょうか。
悲鳴のような鳴き声
突然、夜中に悲鳴のような鳴き声が聞こえた場合は注意が必要です。1度だけで収まった場合は、身体の状態を確認して異常がなければ、一応様子を見ても大丈夫でしょう。
しかし何度も悲鳴のように鳴き続けるようなら、病気や怪我の可能性を考え、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
他の症状も伴っている
夜鳴きだけではなく、食欲や元気がないなど他の症状も見られるようなら、病気を疑い動物病院に連れて行きましょう。
認知症のように治せない場合でも、まだ初期の状態であれば、適切な治療や環境の改善等で、認知能力や生活サイクルをある程度改善させることができる場合もあります。
毎晩のように夜通し鳴き続ける
夜鳴きを無視して要求に応えない、身体チェックをしても病気の兆候は見られないにも関わらず毎晩のように夜通し鳴き続けて問題行動化してしまっているという場合も、注意が必要です。
専門書などの行動診療事例を参考に、自己判断で対処してしまうと、行動そのものや飼い主さんとの関係性を悪化させ、こじらせてしまうこともあります。
まずは行動診療を行っている動物病院に相談することが理想的です。身近に行動診療科のある病院がない場合も、かかりつけの動物病院に相談することで、紹介してもらえる場合もあります。
まとめ
犬にとっての本来の活動時間帯は、夕方や明け方の薄暗い時間帯です。そのため、人が寝静まった時間に犬が起き出しても、特別異常なことではありません。しかし、犬は人の生活スタイルに合わせることができるため、昼間活動して夜には眠る犬が多いのです。
ただし、昼間はご家族が不在でウトウトと眠って過ごしていれば、ご家族が帰宅した夜に元気になるのは当然でしょう。就寝前にしっかりと運動させ、エネルギーやストレスを発散させましょう。そして寝心地の良い落ち着ける寝床で眠らせれば、愛犬の夜鳴きを予防できますので、ぜひ工夫してみてください。
ただし問題行動化してしまった場合は、できるだけ早く専門医のいる動物病院やプロのドッグトレーナーなどに相談しましょう。