犬が「嫉妬」をする理由
犬と人間は異なる動物ですから、犬の行動を全て人間に置き換えて理解しようとすると、大きな誤解をしてしまうことがあります。そのため、犬を擬人化して考えることは、あまりおすすめできません。
しかし、動物行動学などの専門家による研究によって、犬も人間の嫉妬によく似た行動をすることが分かっています。
以前は、犬の嫉妬は犬固有のピラミッド型に固定された上下関係を覆されないための行動だと考えられていました。つまり、自分より下位にある者が自分と飼い主さんの間に割り込んできて、自分の地位を脅かそうとしたことに不安を感じて嫉妬し、相手に対して攻撃的になったり飼い主さんに対してより愛情を求めるようになるのだと考えられていたのです。
果たして、愛犬が嫉妬をするのは、自分の順位を守るためなのでしょうか?
実は、現在では犬には「上下関係」という概念がないということが分かっています。
実は犬は群れの仲間と協力し合い、縄張りを守ったり広げたりしながら、必要最低限の食物や寝床などを手に入れられれば満足できるのです。そのため、群れの中の関係性は上下関係ではなく、「家族関係」だということが分かってきたのです。
人と一緒に暮らしている犬にとって、飼い主さんは親のような存在ということになります。その視点で考えると、犬が嫉妬をする理由についても理解できるようになってくるでしょう。
愛犬が嫉妬をしてしまう理由
では、具体的に愛犬が嫉妬をしてしまう理由と状況を考えてみましょう。
1.仲間はずれにされた
愛犬だけを残してご家族が旅行に出てしまったとか、自分だけ仲間はずれにされて他のご家族だけで楽しんでいると感じた場合などに、愛犬は疎外感を抱き、家族に対して嫉妬をしてしまいます。
嫉妬の対象はご家族とは限りません。知人を招いてパーティーをするような場合も、同じ理由で来客に対して嫉妬してしまう場合があります。
2.不公平感
多頭飼いなどの場合、自分のご飯やおやつよりも美味しそうなものをもらえる犬がいると不公平だと感じ、ひいきされている犬に対して嫉妬をしてしまいます。
不公平だと感じるのは、ご飯やおやつだけではありません。声をかけられる頻度や遊んでもらえる時間など、自分よりも他の犬やご家族がひいきされていると感じると、嫉妬心を持つようになるでしょう。
3.愛されなくなった
今まで飼い主さんの愛情を一身に受けてきたという犬の場合に多いのですが、家族が増えた場合、飼い主さんからの愛情が新しい家族に奪われたと感じ、新しい家族に対して嫉妬心を持つようになります。
新しい家族というのは、赤ちゃんであったり新しく迎え入れた犬や猫などの他の動物であったりと、対象はさまざまです。場合によっては、新しく購入した情報デバイスなど、嫉妬の対象が生き物ではない場合もあります。
新しい家族を迎えるときの注意事項
愛犬には、ご自身のお子さんと接するときと同じように接しましょう。小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、決してお子さんをのけものにしてご夫婦だけが楽しむということはないはずです。
兄弟や姉妹の中で、特定のお子さんだけをえこひいきすることもないはずですし、弟や妹が生まれた場合も、お兄ちゃんやお姉ちゃんへの愛情は変わっていないということがしっかりと伝わるように接しているはずです。
愛犬にも、ぜひそのように接してあげてください。ご家族で行うイベントや旅行も、できるだけ愛犬と一緒に楽しみましょう。特定の子だけをかわいがったり、愛犬の目の前で知人の愛犬を特別かわいがったりするのもやめましょう。
また、新しい家族ができた場合も、先住犬を最優先にすることで、先住犬への愛情が変わっていないことを示しましょう。
愛犬にとって嫉妬をすることは、ストレスを受けているのと同じです。嫉妬の結果、自傷行為や嫉妬の対象となる他の犬や赤ちゃんへの攻撃行動などが出てしまうと、安心して暮らすことが難しくなってしまいます。
まとめ
愛犬が嫉妬をしている場合、現れる行動はその犬のそれまでの経験によって異なります。
例えば、「甘えると飼い主さんは自分をかわいがってくれる」という経験をしたことのある犬は、嫉妬をすることで、より飼い主さんに甘えることが増えるかもしれません。
愛犬から甘えられれば、嫌な気はしないでしょう。しかし、甘える原因が嫉妬からだと気が付いたなら、かわいいからとそのままにしないでください。
愛犬の嫉妬は、愛犬にとっての「ストレス」です。早くストレスから解放してあげられるように、愛犬に対する飼い主さんの愛情は何があっても変わらないということを、態度でしっかり伝えましょう。