犬の感情
犬は、数千年前に人と一緒に暮らすことを選んだ結果、現代になっても、自分のすべてを飼い主となるご家族の皆さんにゆだねるようになりました。つまり、飼い主さんを喜ばせたり褒められたりしながら楽しく暮らすことが、犬にとっての喜びであり生きがいなのです。
そのため、犬は飼い主さんをとても良く観察しています。そして、何をすれば喜んだり褒めてもらえるのか、どうすれば自分の要求を叶えてもらえるのかを常に学習しています。その学習結果に基づいて、自分の行動を選択しているのです。
もちろん、犬たちの頭の中の全てが「喜ばれる」「褒められる」「要求が叶う」ということで埋め尽くされているわけではないでしょう。しかしこれらが大きな要素であり、満たされることで、穏やかで安心感を覚えて暮らせるのだということに間違いはないでしょう。
愛犬の期待を裏切っている飼い主のNG行為
上記で説明した犬同様、飼い主さんも愛犬の行動に喜んだり褒めたり、要求を叶えたりしてあげたいと思っているはずです。しかし、忙しさに追われる日常生活の中では、時として愛犬のために愛犬の期待を裏切ってしまうような行動をとってしまうことがあるはずです。
愛犬の期待を裏切る行為が頻繁に繰り返されると、愛犬は混乱し、飼い主さんに対して次第に不信感を抱くようになります。
そうならないためにも、愛犬の期待を裏切ってしまう「飼い主のNG行為」とはどういうものなのかについて、ここできちんと整理しておきましょう。
1.だます
飼い主さんの意識としては悪意がなくても、愛犬にはとてもショックなのが「だまされる」という行為です。(愛犬を騙すなんて絶対にない!)と思っているかもしれませんが、実はよくあることなのです。
例えば、注射嫌いの愛犬にワクチン接種をする時、「お散歩に行こう!」と言って動物病院に連れて行ってはいないでしょうか。お散歩だと思ってワクワクしていた犬にしてみれば、だまされたと思ってしまう行為です。
2.上の空で犬の相手をする
愛犬にとって、忙しい飼い主さんと一緒にいられるお散歩や遊びの時間は、とても大切な時間です。愛犬は全身全霊をかけて飼い主さんとの時間を楽しもうとしています。
そんな時、仕事のことやご家族のこと、見たいテレビ番組のことなどを考えて、つい上の空になっていることはありませんか。自分にたいして気持ちが集中していないのは、犬にとっては裏切られた気持ちになる行為です。
3.名前を呼んだ後に嫌なことをする
愛犬を迎え入れてすぐの頃は、とにかく愛犬との間に信頼関係を構築しようと、愛犬の名前を呼んでは褒めたりご飯を与えたりしていたのではないでしょうか。そうすることで、犬たちは自分の名前を「良いことがある合図」として認識し、覚えるのです。
しかし、名前を呼ばれたので喜んで飼い主さんのもとへ駆け寄ったら、歯磨きや爪切り、シャンプーなどの大嫌いなことをされたとしたら、裏切られた気持ちになるのも当然でしょう。
4.叱ってばかりいる
前述の通り、愛犬はこれまでの学習を通して、飼い主さんに喜ばれたり褒められたりするであろうという行動を選択するようになります。
それなのに、ちっとも喜んでくれないし褒めてもくれず、それどころか当たり前に行ったことに対しても叱ってばかり…。そうなると、愛犬は裏切られた気持ちになり、飼い主さんに対して期待も信頼もできなくなるでしょう。
5.しつこくからかう
愛犬のことをちょっとからかってみたら、その反応がとても可愛らしかったので、ついつい何度となく愛犬のことをからかってしまう、という飼い主さんもおられるでしょう。
飼い主さんにとっては悪意のない楽しい行為でも、からかわれる犬にとってはとても嫌な行為です。これも、愛犬の立場に立つと裏切られたと感じる行為の一つで、度重なるとストレスが溜まってしまいます。
愛犬との信頼関係を壊さないために心がけるべきこと
愛犬の期待を裏切っている行為としてご紹介した5つの内、「だます」「名前を呼んだ後に嫌なことをする」「叱ってばかりいる」の3つに関しては、飼い主さん側には全く悪気がない場合が多いと思います。それどころか、愛犬のためという意識があるのではないでしょうか。
どんなに愛犬が嫌がることであっても、病気の予防や治療、歯磨きや爪切り、シャンプーといった日々のお手入れ、やって良いことと悪いことを教えるためのしつけは必要なことだからです。
しかし、愛犬に何度も繰り返して「裏切られた」と思わせてしまうことは、そのままお互いの関係性の悪化を招くことにつながります。愛犬に「裏切られた」と思われないように、うまく嫌がることをさせるための工夫ができるはずです。
例えば、動物病院での診察を受けたらご褒美をあげる、嫌がるお手入れはできるだけ手早く行うようにした上で最後まで我慢できたらご褒美をあげる、やってほしくないことはできないような環境にする、やってほしいことを積極的にやりたくなるように誘導する、などです。
からかわれたり上の空で対応されることで、愛犬はストレスを溜めてしまうこともあります。ストレスは、犬が体調を崩す原因につながってしまいます。
忙しい時はほんの短い時間でも良いので、なんとか時間を工面した上で、その時間だけはしっかり愛犬と向き合うようにし、どんなにかわいくてもからかわないようにしましょう。
まとめ
飼い主さんの思惑がどうであれ、犬たちは期待した通りに飼い主さんが反応してくれないと、がっかりし、裏切られた気持ちになります。
もちろん、いつでも愛犬の思い通りにことが進むわけではないでしょう。しかし、裏切られることが度重なると、次第に飼い主さんへの期待も減り、同時に信頼感もなくなっていきます。
愛犬に安心して楽しく暮らしてもらうことは、飼い主さんにとっての幸せでもあるはずです。
できるだけ愛犬の期待を裏切るような行為は避け、嫌がることも工夫をしながら乗り越えてもらえるようにしていきたいものです。