人間が短頭種の犬に感じる「かわいい」の理由【研究結果】

人間が短頭種の犬に感じる「かわいい」の理由【研究結果】

欧州諸国では短頭種の犬の繁殖規制や健康上の問題が再三指摘されていますが、フレンチブルドッグなどの人気は衰えを見せません。そもそもなぜ人間は短頭種を可愛いと感じるのかを検証した結果が発表されました。

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短頭種の犬の人気はなぜ衰えない?

座って見上げるパグ

フレンチブルドッグやパグなど、短頭種の犬の特徴である平らな顔や大きな頭部は彼らが健康な生活を送る上で大きな支障となっています。このような動物福祉上の問題は、ヨーロッパを中心に当該犬種の繁殖規制、獣医師による警告など広く取り組まれています。

しかしそれにも関わらずこれらの犬種の人気は続いており、呼吸障害に苦しむ犬や高額な医療費に悩む飼い主が後を絶ちません。

短頭種の犬の人気が高いのは、彼らの姿を「かわいい」と感じる人が多いからですが、そもそもどうしてそれほど多くの人が短頭種の容姿をかわいいと感じるのでしょうか?

この点についてイギリスのブリストル大学、王立獣医科大学、オーストラリアのニューイングランド大学の研究チームが検証を行い、その結果を発表しました。

短頭種をかわいいと感じるのは赤ちゃんの特徴に似ているから?

赤ちゃんとパグ

人間が「かわいい」と感じる対象には、幼体に共通する特徴が含まれていることが多々有ります。これは『ベビースキーマ』と呼ばれる概念なのですが、簡単に言うと「赤ちゃんはかわいい」ということです。

人間の赤ちゃんに特徴的な、出っ張って大きめの額、顔との比率的に大きな目、小さく低い鼻などは大多数の人が「かわいい」と感じる特徴です。

これらは人間以外の生き物の幼体にも共通しているもので、成犬や成猫よりも子犬や子猫を「かわいい」と感じる人が多いことにも通じます。

研究チームは、短頭種の犬の人気が高いのはこれらの犬種は成犬になってもベビースキーマを感じさせる特徴を持っているからではないかという仮説を立てました。

この仮説は過去の研究でも言及されているのですが、実際に短頭種の犬がどの程度赤ちゃんや幼体の特徴に似ているのかを測定して調査されたことはありませんでした。

短頭種の大きな特徴であるマズルの長さを調査する際には、解剖学的な測定値が使われるのが一般的です。

しかしこの研究では、一般の人々が日常生活の中で目にして「かわいい」と感じる容姿の数値を測定するために、インターネット経由で入手した画像が使用されました。

調査に使用されたのは全部で57犬種、パグ、ブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭種の他にセッターやダルメシアンなどマズルの長い犬種も画像を使った測定が行われました。

こうして顔全体に対する相対的な目の大きさ、鼻の大きさ、額の広さ、目の丸み、鼻の丸み、目と目の感覚について犬種ごとの平均値が算出されました。

短頭種の福祉を改善するには多くの分野での研究が必要

開いた本とブルドッグ

測定と平均値の算出の結果、短頭種は額が比較的大きい、目が相対的に大きい、目が丸い、という特徴が確認されました。鼻が小さい、目が離れているという点は短頭種以外の犬と有意と言える差には達しませんでした。

しかし、マズルの短さがベビースキーマのいくつかの特徴に関連していることは確認されました。

短頭種の犬がベビースキーマに関連する容姿の特徴を持っていることについては、いくつかの経緯の可能性が考えられます。

1つは短頭種の犬は飼い主の庇護欲を満たすために、より幼く可愛らしく見える個体が選択繁殖されてきたという経緯です。

この場合、人間がかわいいと感じるベビースキーマ効果を残しつつ、呼吸障害や眼疾患が発生しないところまで犬種の特徴を修正する必要があります。

もう1つの経緯の可能性はもう少し複雑です。ブルドッグを例に取ると、この犬種は元々は闘犬のために作られたと考えられています。その際に短いマズルは咬みつかれにくく、たるんだ皮膚は大きな怪我をしにくい有利な特徴として選択されました。

これらの特徴を作るため、二次的に彼らの顔がベビースキーマの特徴を併せ持つようになったというものです。どちらの経緯でも、これら短頭種の身体的な特徴とその改善についての遺伝学的な研究が続けられています。

もしも人間が今後も「かわいい」を追求して選択繁殖を続けるとすれば、短頭種の健康や福祉の問題はさらに深刻化することが考えられます。

しかし文化的な流行は移り変わるものでもあり、マズルの長い犬を愛する人々もたくさんいるので、ベビースキーマ効果だけが犬種の人気を決定づけているわけではありません。

極端に短いマズルがもたらす健康と福祉上の影響への理解をより広く浸透させることで、人々がかわいいと感じる姿にも影響する可能性もあります。

このようにペットの飼い方や繁殖方法を改善するためには、社会的および心理的な研究が必要であると研究者は述べています。

まとめ

チワワとキャバリア

インターネットなどで広く見られる短頭種の容姿を測定したところ、赤ちゃんの可愛らしさに共通する特徴がいくつか見られたという検証結果をご紹介しました。

短頭種の犬の健康問題については多くの獣医師や遺伝学者が研究に取り組んでいます。しかし人々が「かわいい」と思う感覚、一般の人々の知識や意識の変化には社会学や心理学といった分野の研究も必要であるというのは、なるほどと思いつつも深く考えさせられます。

私たち人間が「かわいい」と感じる姿を作り出すために、大きな負担を背負って生まれてくる動物がたくさんいることを知っておく必要があります。

《参考URL》
https://doi.org/10.1017/awf.2022.6

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