犬のガン診断年齢に関連する要因を調査
アメリカのカリフォルニア州のPetDX社は、ペット動物のリキッドバイオプシーを専門とするバイオテクノロジー企業です。
リキッドバイオプシーとは、血液や唾液などの体液サンプルを用いてゲノム解析を行う検査です。PetDX社では主に血液を使ったガン診断を行なっています。
ガンは犬にとって一般的な病気でもあります。PetDX社の研究チームは犬種、サイズ、性別などの因子とガンの診断年齢との関連を調査した結果を発表しました。
ガンと診断された犬の情報を分析
研究チームはガンの診断年齢に関連する因子を調査するため、過去に収集された3つのグループのデータを評価分析しました。
1つはPetDX社が先行研究のためにアメリカ、カナダ、ブラジルなどの41ヶ所の施設で収集した663頭の犬のサンプルです。
もう1つは米国内の8つの学術機関(コロラド州立大学など)からイヌ比較腫瘍学の共同研究のために収集された1,888頭のサンプル。
3つめはカリフォルニア大学デイビス校獣医学病院の患者901頭のサンプルです。3つのグループからの合計3,452頭のサンプルは全てガンの診断を受けた犬のものです。
この研究ではガンのタイプ、グレード、ステージには関係なくガンの種類のみを分類しました。その上で、ガンと診断された犬の犬種、性別、不妊化手術の有無、サイズ、診断時の年齢が分析されました。
ガン診断時の年齢の中央値に関連していた因子
分析から明らかになったのは以下の通りでした。
- サンプル全体でガン診断時の年齢の中央値は8.8歳
- オスの診断時年齢中央値は8.4歳、メスは9歳(以下年齢は全て診断時年齢中央値)
- 不妊化手術を受けていない犬の方が診断時年齢が若い
- 不妊化無しオス7.9歳、不妊化済オス8.9歳
- 不妊化無しメス7.3歳、不妊化済メス9歳
- 純血種は雑種よりも診断時年齢が若い(純血種8歳、雑種9.5歳)
- 体のサイズが大きいほど診断時年齢が若い
- 診断時年齢が7歳未満の犬種はマスティフ、セントバーナード、グレートデーン
- 診断時年齢が10歳以上の犬種はビションフリーゼ、ウエスティ、ミニチュアシュナウザー等
これらのことは、ガン診断時の年齢に影響を及ぼす因子には、体のサイズ、犬種、不妊化手術の有無があることを示しています。
この結果を受けてPetDX社の研究者は、7歳以降(犬種によってはもっと早くに)リキッドバイオプシーによるガン健診を受けることを推奨しています。
まとめ
アメリカでペットのためのリキッドバイオプシーを行っているバイオテクノロジー企業が、犬のガン診断時年齢に関連する因子を明らかにしたという調査結果をご紹介しました。
研究チームは7歳以降のリキッドバイオプシーを推奨していますが、研究に参加していない獣医師や獣医腫瘍学者には、この結論に対して疑問を呈している人もいます。
リキッドバイオプシーは早期ガンを検出するだけの感度を有していないこと、リキッドバイオプシーを販売している企業がその検査を実施する時期を特定して推奨することに対する疑問が指摘されています。
2023年からは日本でも犬のリキッドバイオプシーの検査事業がスタートしています。それだけに飼い主は検査で何がわかって何ができないかを知っておく必要があります。そして今のところ、犬のガンを早期発見するためのスクリーニング検査は未だ有りません。
《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0280795
https://www.scientificamerican.com/article/size-sex-and-breed-may-predict-dogs-cancer-diagnosis/
https://www.atpress.ne.jp/news/341434