独身シニアと犬
犬は古くから人間がペットとして飼育してきた動物です。日本でも長く愛されており、かつては一般家庭で飼育されるペットのおよそ6割が犬だった、ともいわれています。
そんな身近な動物である犬ですが、近年では愛玩動物という位置づけより伴侶動物(コンパニオンアニマル)として人生のパートナーのように考える人も多くなっているようです。そのため、パートナーとの死別等さまざまな理由で独身のシニア世代が、一人暮らしの心の支えとして犬を飼うことが増えています。
独身の方の多くは、室内で手軽に飼育できる小型犬や猫を選択しています。犬も猫もトイレのしつけをすればきちんとトイレで排泄してくれますし、ごはんを食べる量も少ないですし、犬種によってはトリミングの必要もあまりなく手入れが簡単なため、シニア世代の方たちに人気があるようです。
しかし、いくらお世話が簡単だからといっても、ある程度の年齢になった独身の方の場合には、ひとりで犬を飼育することにはさまざまなリスクが伴うことを知っておく必要があります。
独身シニアが犬を飼うリスクとは
では、独身シニアが犬を飼う場合のリスクには、具体的にどのようなことが考えられるのでしょうか。
犬の長寿化により最期まで飼育できない
犬の栄養状態や飼育環境が昔よりかなり良くなったことから、犬たちの寿命は大きく伸びています。かつては小型犬でも15歳を数えれば長寿犬と言われていましたが、今は17歳、18歳の犬も元気にお散歩しています。
大型犬も10歳が目安のように言われていたものですが、最近では13歳を超えても元気でいる子も多く、栄養学や獣医療の進歩の目覚ましさを感じています。猫に至っては20歳を超える子も珍しくなくなっているとも聞きます。
しかしペットの寿命が長くなることを喜んでばかりもいられません。飼い主が高齢の場合、自分で犬たちの世話ができない状態になってしまったり、犬たちを残して飼い主がこの世を去ってしまうこともあったりするからです。
また動物ももちろん加齢に伴う様々なトラブルが起こりますが、そのころには飼い主側に介護の余力がなくなっている可能性もあります。犬の寿命と自分の年齢から、もしもの時には犬の世話を頼める相手を確保しておかなくてはいけない、ということをしっかり考えておきましょう。
お金がかかる
犬たちを飼育する場合、日々の食事代(ドッグフードなど)以外にもペットシーツやシャンプーなどの生活用品や医療費などが必要です。また、病気になれば療法食など、特別なフードを買わなくてはいけなくなることもあります。
これらは働いていて収入があっても負担になる出費になる場合もありますが、高齢になって収入が減ってしまうとなかなか負担が大きく感じてしまうかもしれません。犬たちの医療費は予想以上に高額ですし、犬の介護が始まればおむつ代やシニアフードなど更に金額がかさんでいきます。
また、近頃高騰している電気代も気になるところです。(自分だけなら…)と我慢しがちなエアコンを使って、夏や冬の室温を維持する必要も出てきます。
また自分が世話をしきれなくなった場合や残念ながら先に死去した場合、犬の世話を安心して任せられる相手を事前に選択・依頼しておくとともに、その際の金銭的な負担をどうするかも考えておく必要があるでしょう。
しつけができない
『シニア世代の場合、子犬を迎えるより成犬を迎えたほうが良い』といわれることがあります。これは、子犬のしつけには思いのほかエネルギーが必要だからというのもあるでしょう。
子犬は、昼おきて夜眠るといった生活リズムがまだはっきりできていません。起きている時間は体力が続く限り遊び、経験をし、学んでいきます。
これは昼だけでなく夜も同様です。人と暮らす生活のマナーを学んでいないので、望ましくない行動をした場合は夜であろうとすぐ注意をしてしつけをしなくてはいけないのです。体力がある若い人でもなかなか難しいことですよね。
しつけは瞬発力が必要で、悪いことをした・望ましくない行動をした時には素早く的確に叱って、良いことをしたときはすぐさま褒めてあげなければいけません。犬が望ましくない行動(望ましい行動)をとった直後に「これをしたら叱られた(褒められた)」を教えてあげるのです。
年を取っているとこの瞬発力が鈍くなります。適切なタイミングで教えてあげることができず、犬が混乱する元となってしまうのです。
その点、成犬の場合は昼夜の生活リズムができていますし、ある程度のルールを覚えている場合も多いので、しつけの面や生活の面では「子犬より導入しやすい」というメリットがあります。
まとめ
子育てが終わり第二の人生のパートナーとして、配偶者がいないから、など様々な理由で独身シニアのペット飼育率は近年増加しています。
「動物と一緒に暮らしたい」という気持ちはとてもよく理解できますが、今回ご紹介したように、寿命、お金、体力などの面を十分に考慮する必要があります。
熟慮した上でもまだ不安が残るようでしたら、「飼わない」という選択をすることも大切だと思います。