ペットフードメーカーによるバイオバンクプロジェクト
大手ペットフードメーカーのマースペットケアは、2022年にペットの犬猫のバイオバンクをスタートさせました。バイオバンクとは、血液サンプルやその他の生体組織サンプル、それらに付随する情報などを集めて保管し研究に活用する仕組みのことを指します。
マースペットケア社の系列動物病院の顧客を中心に登録された犬と猫から、1年に1回10年間にわたって血液サンプルと便サンプルを提供してもらいデータを集めていきます。
このマースペットケア社のバイオバンクのプロジェクトが、MIT・ハーバード・ブロード研究所との提携を発表しました。同研究所はマサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の共同研究所で、各種バイオバンクプロジェクトの遺伝子解析で世界をリードする研究機関です。
犬猫2万頭の全ゲノム配列のデータベースを公開
マースペットケアのバイオバンクに登録された犬と猫のサンプルは、ブロード研究所の研究チームによって順次ゲノム配列の決定と解析が行われていく予定です。
ペットの犬や猫が新しくバイオバンクに登録されると同じようにデータが追加されます。マースペットケアは最終的に犬1万頭と猫1万頭の全ゲノム配列とバリアントデータのデータベース構築を目指しています。
このデータベースはアメリカ国立生物工学情報センターを通じて一般に公開されます。犬と猫各1万頭ずつのゲノムデータベースは世界最大級の規模であり、世界中の科学者が幅広い分野の科学的リサーチにこれらのデータを利用できるようになります。
犬と猫のゲノムデータベースに期待されること
バイオバンクに提供される犬と猫のデータは生体サンプルだけでなく、動物病院での診察の履歴、飼い主が回答した生活環境なども含まれているため、犬と猫計2万頭の健康状態やライフスタイルに関するデータとゲノムデータを結びつけて分析することができます。
これによって、さまざまな病気の予防や予測、新しい治療方法や効果的な医薬品の開発につながることが期待されます。
特定の犬種や猫種に特有の病気と遺伝子変異との関連の調査、犬猫の老化プロセスの研究、さまざまな犬種や猫種の祖先の起源など、大規模なゲノムデータが役立てられる研究分野は多岐に渡ります。
人間とほぼ同じ環境で生活している犬と猫の疾患の予防や治療の開発は、人間の医療に活かされる可能性も低くありません。
まとめ
大手ペットフードメーカーのバイオバンクプロジェクトが世界的なゲノム研究所と提携し、犬と猫2万頭のオープンアクセスのゲノムデータベースを構築するという話題をご紹介しました。
世界中の多くの科学者が大規模なデータベースにアクセスできるようになることで、犬や猫の病気の予防や治療、より健康的な繁殖などの新しい知見が得られることが期待されます。
治療が難しかったり原因がわからなかったりする病気で苦しむ動物のために役立って欲しいと思います。