犬と猫は犬猿の仲?
顔を合わせば喧嘩ばかりして仲が悪いことの喩えを「犬猿の仲」と言いますが、英語では同じ意味でCats and Dogsという言い回しがあります。
犬と猫は仲の悪いものの代表のように言われているわけですが、今日では一つ屋根の下で同居している犬と猫はたくさんいます。また、飼われている犬猫と対照的に野良犬と野良猫も都市部で同じ空間を共有してい生活しています。
犬と猫は同じ環境を共有することで友達になれるのでしょうか?またお互い同士や飼い主に対して、どのようなアプローチの仕方でコミュニケーションを取っているのでしょうか?
このような点についてイタリアのペルージャ大学獣医学部動物倫理/福祉学研究室の研究チームが、犬と猫両方を飼っている人を対象にアンケート調査を行い分析した結果があります。
犬と猫を飼っている人へのアンケート調査
調査はオンラインアンケートを使って実施されました。SNSやウェブサイトでの告知、回答者からの紹介などを通じて犬と猫両方を飼っている参加者が募集され、1,270名から回答が得られました。
質問項目は飼い主の基本情報、犬と猫の性別、年齢、不妊化の状態、品種、健康状態、飼育年数など犬猫に関する基本項目の他に、それぞれの性格や行動、相互の関わり合い、飼い主との関係などについての項目がありました。
主な質問項目は、犬と猫が初めて出会った時の行動、同居していない犬猫と出会った時のアプローチ、犬から猫へのアプローチ、猫から犬へのアプローチなどが、食事中、遊び中、散歩中など様々な状況に分かれて設定されていました。
犬と猫、それぞれの行動とアプローチ
回答を集計分析した結果は次のようなものでした。
- 飼い主など身近な人間に対して社交的 犬95.6% 猫79.2%
- 飼い主など身近な人間に無関心 犬2.0% 猫14.6%
- 飼い主など親しい人間とよく遊ぶ犬と猫 76.2%
- 見知らぬ人に対して社交的 犬51.4% 猫29.4%
- 見知らぬ人を怖がる 犬23.7% 猫37.1%
身近な人間に対する反応が一致している例が多いのに対して、見知らぬ人への反応は犬と猫で一致しない場合が多くなっていました。
- 同居している犬と猫が一緒に遊ぶ 62.4%
- 同居している犬と猫が一緒に寝ることがある 68.5%
これらが示すように、同居している犬と猫の多くは良好な関係を持っているようでした。
遊びの種類は追いかけっこや待ち伏せが多いのですが、犬は猫との社会的な結びつきを強めるためい遊びを利用するのに対し、猫はこれらの遊びを狩りの擬似行動にしているという違いがあると考えられます。
同居している猫を舐める犬は42.8%、同居している犬を無視する猫は41.8%で、それぞれ逆のパターンよりも多くなっていました。
食事は離れて取る場合が多かったのですが、ほとんどの犬と猫がお互いの食べ物を尊重していました。食べているものに近づくと、唸ったり、シャーッと威嚇する様子が報告されましたが、多くの場合は唸られた方はすぐに引き下がりました。
犬と猫は異なるボディランゲージを示しますが、飼い主の多くが犬と猫はお互いのボディランゲージを理解し、それに応じて反応すると回答しました。犬と猫がお互いに攻撃的だという回答はほとんどありませんでした。
見知らぬ犬や猫に対して社交的に近づこうとする犬は、攻撃的に近づこうとする犬よりも多くなっていました。一方、猫は見知らぬ犬や猫に対して社交的な場合は少なく、無関心または怖がったり攻撃的な行動を見せる場合が多くなっていました。
まとめ
犬と猫両方を飼っている人を対象にして、それぞれの関係性や行動についてアンケート調査を行なった結果をご紹介しました。
調査の結果、同居している犬と猫の多くはお互いを尊重して良い関係を築いていました。
お互いへのアプローチおよび飼い主への接し方には大きな違いはありませんでしたが、見知らぬ人や動物へは犬の方が友好的で、猫の方が無関心でした。予想通りとも言える内容ですね。
研究者はさらに研究を進め、社会性の発達におけるそれぞれの種固有の特性、学習能力、飼い主の性格や行動のとの関連を明らかにしていきたいと述べています。
《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0237822