イギリス最大の老舗保護団体が警告を発信
イギリスに『ドッグズ・トラスト』という犬の保護団体があります。1891年に設立されたとても歴史のある非営利団体で、現在は犬の保護団体としてイギリスで最大の規模となっています。
ドッグズ・トラストは飼い主のいない犬を保護し新しい家庭へと送り出すリホーム活動の他、飼い主のためのトレーニング講座、犬の福祉向上のための科学研究など幅広い活動を行っており、その影響はイギリス国内のみにとどまらない大きなものです。
そのドッグズ・トラストが先日「イギリスの動物福祉が危機に瀕している」というショッキングな警告を発表しました。
愛犬を養いきれない人が続出している状況
同団体は2022年を振り返り、設立以来131年の歴史の中で最も厳しい状況だと説明しています。前述のようにドッグズ・トラストにはいくつかの部門がありますが、危機的な状況にあるのは動物保護の部門です。
イギリスでは他の多くの国と同じように、燃料や食糧の高騰、インフレ対策のための金利上昇などで、光熱費や住宅ローンなど生活のコストが大きく上昇しています。
そのため生活費がかさみ愛犬を養い切れなくなった人が増え、今年ドッグズ・トラストに犬の引き取りを依頼した人の数は過去最高水準となりました。2022年の犬の引き取り依頼件数が年間5万頭に達したことが、警告を発表するきっかけとなりました。
さらに悪いことに、新しく犬を家族に迎え入れる余裕がないという人が増えており、保護施設を出ていく犬よりも入ってくる犬の方が多い状態が続いています。
世論調査では、イギリスの犬の飼い主の約3分の1が経済的な問題が犬の世話に影響することを懸念していることがわかっています。飼い主が最も心配しているのは、愛犬の医療費(48%)次にドッグフード代(23%)、ペット保険(14%)となっています。
保護団体が打ち出している対策
このような危機的状況を受けて、ドッグズ・トラストでは犬を手放さなくても済むように手遅れになる前に相談して欲しいと呼びかけています。
団体が打ち出している対策は、必要な人に無料でドッグフードを提供する犬用フードバンク、犬の行動が問題である場合は無料でトレーニングの提供の他、厳正な審査が必要ですが獣医療費サポートファンドも設けられています。
また家族に迎えることはできない人には、団体がフード代などを負担する一時預かりボランティアが広く呼びかけられています。
これはイギリスでの話題ですが、インフレは世界的な規模で進んでおり生活コストが嵩んでいるのでは日本でも同じです。
日本には全国的な調査をするような大規模動物保護団体がないため全体像は掴みにくいものの、同じような事態が進行している可能性は低くありません。
もしも身近に、やむを得ない事情で愛犬や愛猫を手放さなくてはならない人がいたら何らかの手を差し伸べられることが理想ですが、それができなくても責めたり非難したりすることのないよう心がけていたいものです。
また余裕のある方はぜひ信頼できる動物保護団体へ資金や物品の寄付なども考えてみてくださいね。
まとめ
イギリスの大規模保護団体が、犬を手放さなければならない人の増加と犬を迎える余裕のある人が不足しているという事態が急速に進行している現状について、「動物福祉の危機」と警告を発信したという話題をご紹介しました。
楽しい話題ではありませんが、他人事で済ませられることとも思えません。悲しい思いをする犬と飼い主さんが少しでも減るように、何ができるのかを考えてみたいと思います。
《参考URL》
https://www.dogstrust.org.uk/how-we-help/stories/cost-of-living