短頭種の呼吸障害のリスクを特定するための研究
パグやフレンチブルドッグなど短頭種の犬は世界的に高い人気が続いていますが、それと並行して短頭種の犬の健康問題についても議論が続いています。
特にイギリスでは短頭種の犬の健康問題への取り組みが目立っており、この度はイギリスにある世界最古の畜犬団体であるザ・ケネルクラブが資金を提供して、短頭種の呼吸器疾患のリスクを特定するための大規模な調査研究が実施されることとなりました。
研究を実施するのはケンブリッジ大学と王立獣医科大学の研究者チームです。ケンブリッジ大学では過去10年にわたって、短頭種気道症症候群についての調査を続けています。
短頭種の犬は人為的な遺伝的変異によって、マズルが短く顔が平らであるという特徴があります。この特徴のために頭蓋骨の形が変化した結果、気道が狭くなり呼吸機能に影響を及ぼしているのが短頭種気道症症候群です。
対象犬種と調査の内容
この研究では短頭種の異なる犬種がそれぞれどの程度呼吸への障害を持っているのかを調査し、その危険因子を特定することを目標としています。
募集対象となる犬種は、アフェンピンシャー、ボストンテリア、ボクサー、キャバリアキングチャールズスパニエル、チワワ、フレンチマスティフ、ブリュッセルグリフォン、狆、キングチャールズスパニエル、マルチーズ、ペキニーズ、ポメラニアン、シーズーです。
短頭種の健康問題で常にその名が挙がるイングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグ、パグについてはこれまでに十分なデータが揃っているため、今回の調査では比較のために他の短頭種が募集されています。
参加の条件は生後12ヵ月齢以上であること、調査は一般的な臨床検査、体型測定、綿棒を使ったDNA採取、呼吸機能の測定、全身の脈波測定が行われる予定だそうです。
短頭種の調査研究が目指す目標
この調査研究によって短頭種の呼吸系の問題と神経系の問題との関連、それらの問題が犬の体質とどのように関連しているのかをより深く理解することを目指しています。
また、ケンブリッジ大学の短頭種気道症症候群研究チームではイングリッシュブル、フレンチブル、パグの呼吸機能を評価して等級付けを行うスキームを確立しています。
この研究で収集されたデータによって、より多くの犬種の呼吸機能等級付けの開発が期待されています。
そしてザ・ケネルクラブと研究者の最終目標は、短頭種のブリーダーが犬種特有の健康問題を改善する倫理的なブリーディングを行なっていくために必要なデータを蓄積していくことです。
正しいブリーディングが普及するためには、犬を購入する消費者の意識も重要です。そのためには調査研究の結果だけでなく、このような研究に一般の飼い主の参加が募集されるということも大きな意味があります。
まとめ
イギリスのザ・ケネルクラブと短頭種気道症症候群の研究者チームが、短頭種の呼吸器疾患の危険因子を特定するために調査に参加する犬と飼い主を募集しているという話題をご紹介しました。
調査結果が発表されるのはまだ少し先の話ですが、このような研究の積み重ねによって短頭種の健康問題が周知され、先天的に苦しい思いをしている犬たちが減っていくよう強く願います。
《参考URL》
https://www.vettimes.co.uk/news/dogs-sought-for-boas-research-project/