アメリカのバイオテック企業が犬の老化研究に参入
家庭犬は人間と同じ環境で生活しているため、健康上の問題に人間と共通するところが多くあります。老化もそのような課題のひとつで、犬の老化は人間よりも早く進むために老化のプロセスを研究するための格好のモデルでもあります。
犬の老化をより深く理解することは人間の老化の理解にもつながるため、世界の多くの研究機関が犬の老化についての研究に取り組んでいます。
そして先ごろ、アメリカのサンフランシスコにあるバイオテクノロジー企業Loyal社が、犬の老化について犬のDNAのメチル化について調査した結果を報告しました。
1600頭の犬のDNAのメチル化と生物学的年齢を調査
Loyal社が調査した『DNAのメチル化』とは、動物の生物学的年齢を測定するためのマーカーとなるものです。生き物の年齢は生まれてからの経過時間に基づく暦年齢と、それとは別に加齢に伴って表れる身体機能の低下過程を反映した生物学的年齢があります。
DNAのメチル化とは、DNAの特定の部位にメチル基(炭素原子1個と水素原子3個で構成される分子)が付加することです。メチル化のパターンは時間と共に変化することと、その個体の行動や生活環境に影響されるため、生物学的年齢の指標として研究が進められています。
Loyal社は同社のウェブサイトなどを通じて研究に参加する家庭犬を募集、アメリカの48州から187犬種、約1,600頭の犬の唾液サンプルと健康情報が集められました。参加した飼い主さんたちは愛犬の生物学的年齢を含む個別の情報を受け取ります。
DNAのメチル化を研究することでどんな成果が得られる?
前述した通り、DNAのメチル化は時間と共に変化するため生物学的年齢および暦年齢を推測するためのマーカーとなります。これは正確な年齢がわからない保護犬などにとっては、ライフステージに合わせたケアを受けるための重要な手がかりとなります。
しかしDNAのメチル化については、老化による直接的な変化として引き起こされるのか、他の老化関連因子によって引き起こされるのかがまだわかっていません。DNAのメチル化についてより深く理解することは、老化因子の理解にもつながります。
この研究では集められた唾液サンプルから、口内の細菌叢とDNAメチル化の関連についても研究を進めていくとのことです。
Loyal社は研究の目標として犬の老化を遅らせ健康寿命を延ばすための薬剤の開発をあげています。そして最終的には人間の老化対策へと応用して、ガンや変形性関節症など老化に深く関連する病気の治療法開発が目標だということです。
まとめ
アメリカのバイオテクノロジー企業が犬のDNAメチル化に基づく老化研究をスタートさせたという話題をご紹介しました。
人でも犬でも歳をとるのは当たり前のことですが、認知症や関節炎など老化に関連する辛い症状を経験せずに生涯を終えられるとしたらとてもありがたいことです。
またもっと身近でシンプルな問題として唾液で生物学的年齢が測定できるというのは保護動物と暮らす人にとっては嬉しい情報ですね。
《参考URL》
https://www.axios.com/2022/11/30/aging-humans-dog-lifespan-methylation
https://blog.loyalfordogs.com/how-old-is-your-dog-really-predicting-age-through-methylation/