飼い主が他の犬に友好的に接した時に犬が示した行動とは?【研究結果】

飼い主が他の犬に友好的に接した時に犬が示した行動とは?【研究結果】

飼い主が他の犬と友好的に触れ合うのを見た犬はどのような行動を起こすでしょうか?犬の嫉妬に関する研究結果をご紹介します。

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犬は飼い主が他の犬と仲良くすると嫉妬するだろうか?

2匹の小型犬におやつをあげる女性と柴犬

犬の感情のうち「嫉妬」については多くの飼い主が「うちの犬はヤキモチを妬く」と考えており、嫉妬と思われる行動の数々が報告されています。しかし、犬の行動学研究ではこれらの報告と矛盾した結果が出ており、犬の嫉妬行動については未だ不明な点が多いとされています。

オーストリアのウィーン獣医科大学のメッサーリ研究所は、飼い主がリアルに作られたフェイク犬に対して友好的な態度を示した時に、それを見ていた犬が嫉妬行動を示すのか、それとも別の行動を示すのかを検証する実験を行いました。

研究者は、飼い主とフェイク犬が親密に見える時に犬は嫉妬と考えられる行動を示すだろうと予想しました。実際の結果はどうだったのでしょうか。

飼い主と家庭犬が参加したフェイク犬を使った実験

じっと見つめるボーダーコリーの横顔

実験に参加したのは一般募集された102頭の家庭犬(オス51頭メス51頭、平均年齢5.8歳、10ヵ月齢〜12歳)とその飼い主でした。

犬たちは年齢と性別のバランスを考慮した4つのグループに分けられ、実験の内容はグループごとに次のように設定されました。

  • 犬の飼い主がフェイク犬をハグしたり撫でたりする(友好的な関わり)
  • 犬の飼い主が病院でするようにフェイク犬の耳や歯をチェックする(中立的な関わり)
  • 犬にとって見知らぬ人がフェイク犬にハグしたり撫でたりする
  • 犬にとって見知らぬ人が病院でするようにフェイク犬の耳や歯をチェックする

フェイク犬は実物大のリアルなラブラドールのぬいぐるみで、車輪付きのボードに固定されており遠隔操作によって実験参加者のところに近づいていきます。

犬たちはあらかじめ実験室に入り探索済みで、実験室は犬にとって全くの未知の場所ではありません。

実験中に飼い主または見知らぬ人がフェイク犬と関わり合っている時には、犬は研究者によってリードにつながれて近づくことができませんが、所定の時間が過ぎるとオフリードで自由に動き回れるようになります。

犬がオフリードになってからも実験参加者はフェイク犬との関わりを続けます。この間に犬がフェイク犬に対してどのような行動をとったかが観察されました。

実験の様子はすべてビデオ録画され、犬の行動と行動カテゴリーが分類分析されました。

犬の行動は嫉妬よりも同調!

ハグし合う男性とハスキー

この実験に参加した102名の飼い主さんへの事前アンケートでは、70%の人が「飼い主が他の犬と仲良くしていると愛犬が嫉妬と思える行動を見せる」と回答していました。

嫉妬行動の内容は飼い主と他の犬の間に割り込もうとする(ブロッキング)、他の犬に対して唸ったり吠えたりする攻撃的行動などです。そのため、実験においても犬たちはブロッキングや攻撃的な行動を示すであろうと予想されました。

実験室にフェイク犬が現れた時には、犬たちの大半は不安のボディランゲージを示しました。残りの犬は関心を示さない中立的な態度でした。

オフリードで自由に行動できるようになると、ほとんどの犬はフェイク犬のお尻や顔の匂いを嗅ぐという犬同士が行うチェック行動を見せました。フェイク犬と関わっているのが飼い主の場合、見知らぬ人との関わり合いに比べてブロッキングが多く見られました。

これは当初の予想と一致しています。しかし飼い主の行動が友好的なグループと、中立的なグループにおいてブロッキングの回数には大きな違いがありませんでした。

飼い主がフェイク犬に対して友好的に接していたグループではブロッキングはするものの、犬はリラックスした様子でフェイク犬に対してフレンドリーな行動を多く示しました。

あまり関心を示さない中立的な行動がそれに次ぎ、不安や攻撃的な行動は中立的行動の半分以下と少ないものでした。

飼い主がフェイク犬に対して中立的だったグループでは、犬は中立的行動を最も多く示し、不安と攻撃的な行動が、飼い主が友好的だった場合に比べて大幅に増加していました。

見知らぬ人がフェイク犬に対して友好的に接したグループでは、犬は不安を示す行動を最も多く見せたのですが、フレンドリー、中立的、攻撃的な行動も不安と大差のない数で見られました。

見知らぬ人が中立的だったグループでは、不安を示す行動が友好的に接したグループの約半分になり、その分中立的な行動が増えていました。フレンドリー、攻撃的な行動は中立的行動とほぼ同じでした。

これらの結果から、犬の行動は嫉妬を示すものよりも飼い主への同調を示すものであると結論づけられました。飼い主が友好的に接している相手に対しては、飼い主に同調して自分も友好的に接するということです。

飼い主からの犬の嫉妬行動の報告には、擬人化のバイアスがかかっていた可能性が指摘されています。今後は同様の実験で、心拍変動、呼吸数、体温、ホルモンレベルなどの生理的指標を追加して検証する必要があると研究者は述べています。

まとめ

男の子と2匹の犬

フェイク犬を使った実験で、飼い主がフェイク犬に対してハグなどの友好的な態度を示した場合に、飼い犬は嫉妬行動よりも飼い主に同調して友好的行動を示すことが多いという結果をご紹介しました。

犬は自分が愛着を持っている相手が(この場合は飼い主)第三者と親しくした場合に、第三者を否定する関わり方ではなく肯定するような関わり方をすることが多いという可能性が示されたわけです。

犬の行動を評価する時に、ついつい人間と照らし合わせて擬人化することの危うさを改めて思い知らされる結果とも言えますね。

《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani12121574

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