スマートフォン、衛生上の意外な盲点
スマートフォンは今や多くの人にとって生活必需品であり、日常生活のあらゆる場面に組み込まれています。
さまざまな場所に置かれ、1日に何度も手に取って操作されることからスマホが有害物質を媒介する可能性があります。どのような有害物質が検出され、何を使ってクリーニングすれば効果的にこれらの物質を低減できるのかを調査した結果が報告されました。
この研究を行ったのはアメリカのアイオワ大学公衆衛生学部の研究者を中心としたチームで、研究結果は2022年の米国アレルギー喘息・免疫学会議総会において発表されました。
犬や猫と暮らしている人は特に気をつけた方が良いという内容をご紹介します。
スマホに犬猫由来のアレルゲンがくっついていた!
研究のための調査には15人のボランティアが参加し、一般的なスマートフォンとほぼ同じサイズと材質の模擬スマートフォンが配布されました。
これを一定期間携帯してもらった後に、模擬スマートフォンの表面からサンプルを採取して、β-Dグルカン、エンドトキシン、アレルゲンのレベルを測定しました。
β-Dグルカンは真菌の細胞壁の構成成分です。慢性的な気管支刺激症状を引き起こす環境で多く発見されます。特定の場所や部位の有害な真菌を調査するためのマーカーとなります。
エンドトキシンとは、菌体が死んだ後に菌体の細胞壁などから遊離する毒素のことで、強力な炎症物質です。
数値のバラつきがあるもののβ-Dグルカンとエンドトキシンが15人の模擬スマホから高い濃度で検出されました。また、ペットを飼っている人の模擬スマホからは犬猫由来のアレルゲンが多く検出されました。
これは自分のスマートフォンを触った手から刺激や炎症を引き起こす物質、あるいはアレルゲンが体内に入ってしまうリスクが想像以上に高いことを示しています。
犬や猫は飼い主の手や顔を舐めることもありますので、犬や猫と暮らしている人は特に注意が必要です。
スマホを衛生的に保ち、人もペットも守るために
この研究ではこれらの物質を洗浄するのに最も有効な成分についても調査が行われました。
B-Dグルカンとエンドトキシンの低減にはクロルヘキシジン(病院で広く使用されている殺菌消毒薬)とセチルピリジニウム(強い殺菌と抗カビ作用を持つ界面活性剤)の組み合わせが効果的でした。
また犬や猫由来のアレルゲンには安息香酸ベンジルとタンニンの組み合わせが効果を示しました。
しかしこれらの薬剤は一般に手に入るものではなく、スマートフォンの取り扱い上推奨されるものでもありません。
研究者は、スマートフォンにはケースを使用し、外したケースを石鹸で水洗いすることを勧めています。スマートフォン本体にはスマホ専用除菌タイプのクリーナーを使って常に清潔に保つことが大切です。
まとめ
スマートフォンには真菌やカビに由来する有害物質、犬猫由来のものを含むアレルゲンが多く付着しており、人やペットの健康を守るために清潔に保つことが重要という研究結果をご紹介しました。
スマートフォンは1日のうち最も長く手に触れているものだという人が多いかと思います。毎日長時間使用するデバイスを清潔に保つことにデメリットはありませんので、スマホの清掃を習慣にすると良さそうですね。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.anai.2022.08.565
https://annualmeeting.acaai.org/2022/smartphones.cfm