感染とは
病気には、うつる病気とうつらない病気があります。人の場合、うつる病気の代表は風邪、うつらない病気の代表はアレルギー性疾患といえるでしょう。これは犬でも同じです。
うつらない病気の原因は体内にあります。例えば、免疫機構が過剰に反応するアレルギーや遺伝的な要因、老化による臓器の機能低下等です。一方うつる病気の原因は、外界に存在する病原体が体内に入り込んで増殖することです。
病原体が体内に入り込んで増殖することを、感染といいます。そのため、うつる病気のことを感染症というのです。病原体とは病気の原因となる微生物のことで、細菌、ウイルス、真菌(カビ)、寄生虫など種類はさまざまです。
感染経路もさまざまです。病原体を含んだ唾液などのしぶき(飛沫)を吸い込む飛沫感染、空中を漂う感染源となるものを吸い込む空気感染、直接・間接的な接触による接触感染、病原体を口から体内に取り込んでしまう経口感染、蚊やノミ等による媒介感染などがあります。
日常生活で犬が感染しやすい病気とは
ではここからは、日常生活で犬が感染しやすい病気についていくつかご紹介します。
1.ケンネルコフ
犬の上部気道感染症の総称で、咳、くしゃみ、鼻水、発熱などの症状が出るため「犬カゼ」とも呼ばれます。
特定の病原体ではなく、ボルデテラ・ブロンキセプチカ、犬パラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルスなどの複数の病原体が、単体または混合で感染します。
ワクチンがない病原体もあるため完全に予防することは難しいですが、ワクチン接種で重症化を防ぐことは期待できます。飛沫感染や接触感染するため、犬が集まるような場所(ペットショップ、ペットホテル、ドッグラン等)での集団発生が多いです。
2.犬パラインフルエンザウイルス感染症
飛沫感染し、咳、鼻水、発熱、元気や食欲の低下といった、風邪のような症状がみられます。
パラインフルエンザウイルス単体の感染であれば軽い症状の場合が多いですが、他のウイルスや細菌と混合感染してしまうと、症状が重篤化します。
3.犬コロナウイルス感染症
成犬が感染しても不顕性(症状が現れない)で終わることが多いものの、子犬の感染や、犬パルボウイルスと混合感染した場合は症状が重篤化し、死に至ることもあります。重篤化した場合、下痢、嘔吐、元気消失、食欲減退の他、血便になることもあります。
なお犬コロナウイルスは犬に特有のウイルスで、人に感染する新型コロナウイルス(2019n-Cov)とは異なります。
4.犬レプトスピラ症
病原体はレプトスピラという細菌で、ネズミやリスなどの野生のげっ歯類が感染源だと考えられています。人獣共通感染症の一つで、人を含めた多くの哺乳類に感染します。
レプトスピラは土壌や水を介して感染するため、特に台風後などの散歩では注意が必要です。不顕性の場合もありますが、発症すると肝臓や腎臓に障害が現れ、発熱、出血、黄疸、腎不全、乏尿等の症状が現れ、重篤化すると死に至ることもあります。
5.犬疥癬症
犬疥癬症は、犬センコウヒゼンダニの寄生で発症します。ヒゼンダニは皮膚にトンネルを作り、その中に出す糞や分泌物が原因で激しいかゆみを引き起こします。感染部位には発疹が出、掻き壊して脱毛することも多いです。
接触感染が主ですが、ヒゼンダニは犬の体から離れてもしばらくの間は生存して新しい宿主を探します。こまめな掃除や定期的なシャンプーとノミ・ダニの駆除が大切です。
愛犬が感染した場合の注意点
感染した愛犬が、接触したり同じ空間にいたりした他の犬の感染源になってしまうことがあります。例えば多頭飼いの場合なら、家中の犬達に感染させてしまうでしょう。
また犬に感染する病原体が、犬にしか感染しないとは限りません。猫やうさぎなど他の動物に感染する病原体もあり、もちろん人間への感染もあり得ます。
そこで、愛犬が感染症にかかった場合は、愛犬の治療と同時に愛犬を感染源にしないことが求められます。そのためには、下記の注意が必要です。
- 感染した愛犬を隔離し、他の動物と接触させない
- 感染している犬の排泄物、食器等はすぐに片付け消毒を徹底する
- 感染している愛犬の世話をした後は必ず手洗いとうがいをする
- 多頭飼いの場合、発症していない犬も同時並行で診察を受ける
病気への感染を最小限に抑えるために、動物病院に指示を仰ぎながら徹底して対処していきましょう。
まとめ
今回は犬の感染症について、その概要や感染した場合の注意点などをご紹介しました。
法律で義務付けられている狂犬病ワクチンだけではなく、コアワクチンも定期的に接種することで、愛犬を感染症から守りましょう。
ワクチン接種、寄生虫の駆除・予防、日常的な衛生管理等で、愛犬やご家族の健康を守ると共に、愛犬やご家族自身が他の動物への感染源とならないように注意しましょう。