子供が犬に本を読み聞かせることは音読スキルを向上させるか?という研究

子供が犬に本を読み聞かせることは音読スキルを向上させるか?という研究

子供が犬に向かって本を読み聞かせすることは、音読のスキルや読解力を向上させるだろうか?という調査が行われ、その結果が報告されました。

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従来型と犬参加型、2つの音読支援プログラムを比較

本を読む女の子と隣に座ったラブラドール

子供が犬に向かって本を読むという活動は、音読が苦手な子どものためのセラピーや、動物保護施設で退屈している犬に対するエンリッチメントという形で欧米諸国を中心に数多く行われています。

読んで理解するというのは日常生活の基本となるスキルで、声に出して本を読む音読は小学校で一般的に行われています。

どの単語が読めないのか(日本語ならどの漢字が読めないのか)、読み方や区切り方でどの程度文章を理解しているのかを教師が把握して、特別な支援が必要な場合に対処するために音読には大きな意味があります。

しかし教師や他の生徒の前では緊張してしまったり、うまく音読ができないことがコンプレックスになってますます読むことから遠ざかってしまうという面もあります。

この場合、何も言わずに座っていてくれるセラピードッグは音読の苦手な子供にとって大きな助けとなります。

音読のためのセラピードッグに関する研究もいくつか発表されているのですが、まだ新しい分野であり疑問点も残されています。

このたび、カナダのセント・メアリーズ大学の心理学の研究チームがセラピードッグが参加する音読支援プログラムと、従来のように大人が指導するプログラムを比較する調査を行い、音読の能力や読解力に対する影響を分析しました。

2つのタイプの支援プログラムの内容

本を読むセッション中の女性と男の子

調査のために選ばれたカルガリーの2つの小学校の7〜8歳の生徒を対象に、教師が音読について特別な支援が必要であると考えている生徒24名(男子14名、女子10名)が参加しました。

またそれぞれの生徒の音読スキルや、読むことに対する意識について担任教師や保護者がどのように認識しているかも回答してもらいました。

参加者は全員が2つのタイプの音読支援プログラム「従来のように大人が支援(従来型)」「セラピードッグが同席(犬参加型)」の両方を受けました。どちらが先になるかはランダムに割り当てられました。どちらのタイプも1回のセッションは15分で週に1回8週間にわたって行われました。

従来型には音読支援のための訓練を受けたボランティアが参加しました。生徒はこの人の隣に座って自分で選んだ本を音読します。読めない単語があったり詰まったりすると、ボランティアが手助けする、もう少し時間が必要か尋ねる、励ますなどの対応をします。

犬参加型では生徒が犬の隣に座って同じように音読します。セラピードッグのハンドラーは音読支援のための訓練を受けており、従来型の場合と同じように対応します。

どちらのプログラムにも研究者が同席していましたが、研究者は邪魔にならないよう少し離れており一切の介入は行われていません。

これら2タイプのプログラムをそれぞれ8回ずつ修了した後と、プログラム参加期間中に研究者が生徒、教師、保護者に対してさまざまな質問を行いました。

犬参加型プログラムはより高い効果を示した!

本を読む男の子と犬

研究者は参加した生徒たちの、音読スキル、読んだ内容に対する読解力、社会的スキル、読むことに対する感情について測定と分析を行いました。

従来型と犬参加型、どちらのタイプでも音読スキルと読解力が向上していましたが、犬参加型では音読スキルと読解力のスコアがより大きく向上していました。犬の存在が最も大きく影響していたと考えられるのは読解力でした。

従来の研究では音読スキルにのみ焦点が当てられていたので、セラピードッグが理解力の向上に良い影響を及ぼしたことは注目に値する点です。

教師や保護者への質問では、どちらの支援プログラムも生徒の音読スキルと読むことへの意識を向上させたと感じているが、犬参加型ではその効果がより強かったと感じていることがわかりました。

生徒たち自身もどちらのプログラムについてもポジティブな反応を示しましたが、犬に関して「聞き上手でうれしい」「批判しないので好き」といった意味の言葉が寄せられました。

この生徒たちの言葉は研究者がセラピードッグを有益だと考える理由をそのまま表しています。

また、犬参加型プログラムは社会的スキルについても全体的な向上をもたらし、参加した生徒の問題行動が減少したことがわかりました。

読解力の向上と併せて、セラピードッグの存在が生徒のストレスレベルを低下させ、社会的および情緒的な幸福感が向上した可能性を示しています。

まとめ

本を読む女の子と隣に座っている犬

7〜8歳の生徒を対象に、従来型と犬参加型両方の音読支援プログラムに参加した結果を比較したところ、どちらも有効ではあったが、犬参加型の方がより大きな効果があったという調査結果をご紹介しました。

子どもたちは、本を読み聞かせた犬について「批判しないから好き」「落ち着く」「じっと聞いてくれる」という言葉を述べていたそうです。子どもの教育について色々と考えさせられる言葉ですね。

日本でもいくつかの図書館などで子どもの音読を対象にしたセラピードッグが活躍し始めているそうですので、研究が進んで犬による音読支援プログラムを取り入れる施設や学校が増えるといいなと思います。

《参考URL》
https://doi.org/10.1007/s10643-022-01392-5

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