パンデミックとペットの飼育放棄の関連を調査した研究結果

パンデミックとペットの飼育放棄の関連を調査した研究結果

パンデミックの間に世界の多くの地域でペットの飼育が増えたことが知られていますが、飼育放棄についての調査結果が報告されました。

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パンデミックと飼育放棄についての大規模調査

膝の上に犬と猫を乗せた飼い主

COVID-19のパンデミックは人間だけでなく、犬や猫などコンパニオンアニマルにも大きな影響を及ぼしました。

「パンデミックパピー」という言葉が生まれたことに象徴されるように、ロックダウンなどの期間中に犬や猫を新しく家族に迎える人が急増したことはよく知られています。

では反対に動物を手放した人の数はどうだったのでしょうか?この点についてイギリスのクイーンズ大学ベルファストとサセックス大学の研究チームが大規模なアンケート調査を行い、その結果が発表されました。

飼い始めた時期とペットを手放すことの関連

マルチーズとPCを開いた女性

この研究のアンケート調査は非常に緻密なものでした。参加者は学術研究への参加者募集サイトを通じて集められました。このサイトは研究参加への報酬を支払うもので、信頼性の高いデータを提供することが示されています。

調査への参加者は現在または過去にペットを飼っていた4,000名(男性2,000名、女性2,000名)で、3,945名から有効回答が得られました。多くのアンケート調査では回答者が女性に偏りがちなので男女比が揃っていることはこの研究の重要な要素です。

調査対象国はイギリス、アイルランド、イタリア、スペイン、フランス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、その他いくつかの少数の国を含め27カ国に渡りました。

調査はパンデミック初期である2020年8月に開始され、2度のフォローアップ調査を経て2021年4月に完了しました。

参加者は愛犬や愛猫を想定して質問に答えるよう指示されました。多頭飼いの場合は最近飼い始めた動物が対象となります。

最初の調査では、ペットを手放すことを考えたことがない人95.2%、考えたことがある人4.2%(168名)すでに手放した人0.5%(21名)の分類結果が得られました。

犬では4.4%が手放すことを検討、0.5%がすでに手放しており、猫では4.0%が手放すことを検討、0.5%がすでに手放していました。犬と猫というペットの種類については放棄リスクに違いがなかったことがわかります。

1度目の調査の1週間後と7ヶ月後に「手放すことを検討した」と回答した人にフォローアップ調査を依頼したところ、1週間後には5名が7ヶ月後には3名がペットを手放していました。ただし7ヶ月後の調査では3分の2の参加者から回答がありませんでした。

手放すことを考えたことがないグループでは、パンデミック宣言の6ヶ月以上前にペットを取得した人が87.1%、パンデミック宣言前6ヶ月以内が8.1%、パンデミック宣言後に取得したのは4.8%でした。

手放すことを検討したグループは、宣言6ヶ月以上前の取得が62.5%、宣言前6ヶ月以内が26.2%、宣言後が11.3%でした。

手放したグループでは宣言6ヶ月以上前の取得は52.4%、宣言前6ヶ月以内が28.6%、宣言後が19%でした。

ペットを飼い始めた時期がパンデミック宣言前の6ヶ月以内だったというグループが手放すリスクが高かったことが示されています。

パンデミック宣言後に飼い始めたペットの放棄リスクが高いことは予想されましたが、パンデミック直前に飼い始めたグループの方が高リスクであったことは注目に値します。

その他の飼育放棄のリスク要因

スマホでペットサイトを見ている人

ペットの取得時期以外に飼育放棄に関連していたのは次のようなことでした。

  • ペットをオンライン購入した人は放棄の検討または放棄のリスクが高い
  • ギフトとして贈られたペットは放棄の検討または放棄のリスクが高い
  • 放棄の検討の65%、放棄の72.2%が男性で、男性の放棄リスクが高いことが示された

これらの結果は、ペットの飼育放棄を予防するための対策を立てる際に有効なデータとなります。特に飼育放棄リスクの男女差はさらに調査検討が必要だと考えられています。

ペットを手放した理由のうち最も多かったのは経済的な理由で、次はコロナ特有の不安というものでした。これはペットから人間への感染を恐れてのことでした。この点についても一般市民への教育活動が重要であることが示されています。

研究においては「飼育放棄」という強い言葉が使われていますが、ペットを手放した人の多く(66.7%)は自分で次の飼い主を見つけて譲渡していました。残り14.3%がアニマルシェルターに、19%が他の人に一時預かりを依頼したと回答しています。

まとめ

マスクを着けた女性と茶色い犬

27カ国の約4,000人のペットの飼い主を対象にして、パンデミック中にペットを手放すことを検討または手放したかを調査し、リスク要因を分析した結果をご紹介しました。

このような調査結果はペットの飼育放棄を減らすための介入策として、どのような手法が効果的か、どのような教育が必要かといった対策を立てる際に有効活用されます。

この調査の対象国は欧米が中心ですが、調査分析の結果は日本でも共通する点が多いものです。自治体などが対策を立てる際、また政府や自治体がパブリックコメントなどを募集する際の一般の人の参考資料として役に立つことを願います。

《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2022.1017954

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