DV被害者とペットのためのプロジェクト
家庭で一緒に生活している相手から身体的、精神的、経済的な虐待を受けるドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)は、日本も含めて世界の多くの国で大きな社会問題です。
アメリカでは女性の3人に1人、男性の4人に1人が生涯に何らかのDVを経験すると言われています。被害者が避難して安全に生活を立て直すための支援をするシェルターはあるのですが、ペットを同伴して入所できるシェルターが非常に少ないことはあまり知られていません。
DV被害者が愛犬や愛猫といっしょに避難することができるシェルターを増やすため、アメリカのDV被害者支援団体と大手ペットフードメーカーのピュリナが共同で、『パープル・リーシュ・プロジェクト』という活動を行なっています。
プロジェクト名から、紫色の犬用リーシュ(リード)やカラーにプロジェクトのスローガンをプリントしたものをキャンペーングッズにしています。
ペットといっしょに避難できるシェルターを増やすための活動
ペットと暮らしている人がDVの被害者となった場合、身の安全を確保するためにシェルターに避難するという選択はハードルの高いものです。現在アメリカのDVシェルターのうち、ペットを受け入れているところは15%しかないからです。
また、被害者のうち約3分の1の人が「加害者にペットに危害を加えると脅された」と報告しており、被害者の約半数は「シェルターにペットを連れて行けないのなら加害者の側に留まるしかない」と答えています。
DVのケースでは多くの場合、人間だけでなくペットも被害を受けています。ペットと一緒に避難できるシェルターを増やすことは、人間と動物両方の命を守るために非常に重要です。
このプロジェクトの活動内容は次のようなものです。
- 既存のシェルターが犬や猫を受け入れられるよう助成金の提供
- シェルターにペットのためのボランティア人員を派遣
- シェルターでの動物のトレーニングを提供
- 社会全体のDVシェルターへの認識を高める
パープル・リーシュ・プロジェクトでは2025年までにペットといっしょに避難できるDVシェルターの割合を現在の15%から25%にまで引き上げることを当面の目標としています。
プロフットボール選手からのバックアップ
このプロジェクトに強力な助っ人が現れました。プロフットボールリーグNFLのワシントン・コマンダースのジェームズ・スミス・ウィリアムズ選手が活動に参加したのです。
スミス・ウィリアムズ選手は大の愛犬家で、人気スポーツのスター選手というプラットフォームをこの活動のために利用できることを光栄に思うと語っています。
フットボールリーグのNFLには、選手が自分にとって重要な活動を選び、その活動のためのカスタムデザインのシューズを履いて出場するという、チャリティのためのシステムがあります。
これだけでもサポートしたい活動を多くの人に知らせる効果があるのですが、このシステムでは試合後にこのシューズがオークションに出品され、その売上がサポート対象となる活動に寄付されます。
スミス・ウィリアムズ選手は、パープル・リーシュ・プロジェクトをチャリティの対象となる活動に選びました。カスタムシューズはピュリナ社が出資して制作されます。このシューズは来たる12月の試合で着用され、その後オークションに出される予定です。
スミス・ウィリアムズ選手はこの件でいくつかのテレビ出演にも応えており、プロジェクトの知名度アップに大きく貢献しました。すでに助成金を受けたDVシェルターを訪れ、犬のためのクレートの寄付なども行なったそうです。
まとめ
アメリカでDV被害者支援団体とペットフードメーカーが共同で実施している「ペットといっしょに避難できるシェルターを増やそう」というプロジェクトに、プロフットボールの選手も参加して貢献しているという話題をご紹介しました。
資金調達を行なって助成金を提供するだけでなく、ペットのためのボランティアやトレーニングを提供というのは動物に対する理解の深さが感じられると思いました。
外国の話ではありますが、日本でも多くの人の考えるきっかけになれば幸いです。
《参考URL》
https://redrover.org/the-purple-leash-project/
https://www.prnewswire.com/news-releases/purina-and-redrover-broaden-support-of-domestic-violence-survivors-with-pets-with-a-new-voice-championing-the-cause-301640191.html