飼い主のストレスは愛犬にも伝わっている?

飼い主のストレスは愛犬にも伝わっている?

私たち人間は、一緒に暮らしている愛犬はもちろんのこと、かわいらしい動物たちの姿を見て心を和ませ、場合によっては明日への活力や生きる力を得ていると感じることがあります。では、人間を見ている犬は人間から何か情動的な影響を受けているのでしょうか。今回は、飼い主のストレスが愛犬に伝染するという2つの研究結果をご紹介します。

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長い歴史の中で築かれた犬と人間との関係性

犬との絆

犬は、人間と一緒に暮らし始めた最も古い家畜だといわれています。共に暮らしてきた長い歴史の中で、犬と人間は種を超えた絆を結んできました。「指差し」や「視線」といった人間が示すサインを、人間と同じ類人猿のチンパンジー以上に犬はよく理解し、高い反応を示すようになったのです。

また、仕事を終えて帰宅し愛しい愛犬の頭を撫でていると、心が穏やかになり明日も頑張ろうという気持ちになると感じている方は、決して少なくないはずです。では、犬は一緒に暮らしている飼い主からこのような情動的な影響を受けることがあるのでしょうか。

今回は、飼い主のストレスが飼い犬に伝染することを示している2つの研究結果をご紹介したいと思います。

スウェーデンでの研究例

不安そうな犬

スウェーデンのリンショーピング大学の動物学者は、2019年6月に、飼い主のストレスが飼い犬に伝染するという研究結果を学術誌に発表しました。ストレスの指標として使われたのは、人間の毛髪と犬の被毛に含まれているコルチゾールというストレスホルモンの量です。

コルチゾールは、恐怖や不安を感じていると分泌されるホルモンです。根元から3cmの毛髪や被毛に含まれるコルチゾール量を計測することで、直近3〜4ヵ月のストレスレベルを測ることができるのです。コルチゾール含有量が高ければストレスレベルが高く、少なければ低いと判断できます。

スウェーデン在住の飼い主と飼い犬の58組の毛髪および被毛のコルチゾール含有量を調べた結果、コルチゾール含有量が多い飼い主の飼い犬は、やはりコルチゾール含有量が多いことがわかりました。しかし、コルチゾール含有量が多い犬の飼い主の場合、同じようにコルチゾール含有量が多いという結果にはなりませんでした。

つまり、飼い主のストレスは飼い犬に対して影響を与えますが、飼い犬のストレスが飼い主に与える影響は少ないということのようです。

この研究では、飼い主の性格による犬へのストレス影響度も調査されています。その中に、外向的で几帳面な性格の飼い主の場合、飼い犬のストレス度は総じて低い傾向であることが分かったといいます。

単純に考えると逆の結果になりそうなものですが、几帳面な性格が飼い犬との間のルールに一貫性をもたせたり、愛犬の生活環境に配慮したりといった効果を発揮して、良い影響を与えるのかもしれません。

日本での研究例

イライラした飼い主と犬

次にご紹介するのは、日本の麻布大学、奈良先端科学技術大学院大学、熊本大学大学院、名古屋大学大学院の共同研究グループによる研究で、2019年7月にスイスの心理学専門誌に掲載されました。

ストレスの指標として使われたのは、心拍数です。飼い主と飼い犬34組の双方に心拍計を装着し、犬からは飼い主だけが見えるような状況にした上で、飼い主に対して暗算や専門的な文章内容の説明をそれぞれ5分ずつ行わせることでストレスを与え、双方の心拍数の計測と犬の様子のビデオ撮影を行いました。

飼い主と飼い犬の双方で客観的なデータを得られた13組の心拍変動などを詳しく解析した結果、一部のペアは心拍数の変動が同じような動きを見せ、相関関係を示すことを突き止めました。この傾向は、一緒に暮らしている期間が長ければ長いほど同期しやすく、またオスよりもメスの方が同期しやすい傾向があることが分かったとのことです。

この研究では、3〜4ヵ月という中期的なスパンでの影響だけではなく、秒単位での細かな情動変化まで、犬に伝染しているということが分かります。

まとめ

女性にハグされる犬

今回は、飼い主のストレスが飼い犬に伝染するということを証明した研究をご紹介しました。中期的な影響だけではなく、飼い犬は飼い主のごく僅かな時間で変化する気持ちの変化にも同調することがわかりました。

私たちの心を和ませ、明日への活力を与えてくれる飼い犬に、自分のストレスを伝染させることはぜひとも避けたいことです。そのためには、飼い主自身がストレスを受けないことが理想ですが、そうもいきません。

愛犬と一緒に散歩をしたり運動をしたり遊んだりといった行動をすることで、飼い主自身のストレスを軽減し、愛犬に余計なストレスを与えないように工夫したいものです。

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