抱っこから落ちるリスク
犬のサイズにもよりますが、一般的に「抱っこ」で移動したりするのは子犬または小型犬です。彼らにとって人間が抱っこすると、普段の頭の高さより数倍高い位置に持ち上げられている状態になります。人間で例えれば建物の5階~7階、あるいは8階にいるようなものです。
つまり、人間の抱っこから落ちるということは、人間がビルの上から落下するようなものなのです。
猫の場合は体が柔らかいことと、耳の奥にある前庭器官という体の傾きを察知する器官が発達しているので、背中や頭から落ちることを回避して着地することができます。
しかし犬の場合は猫ほどの体の柔らかさもなければもともと高いところに上るという習性もないので「落ちる」ことに対して上手く動くことができません。
そのため落下すると重い頭から落っこちて強打したり、着地の際に上手く足を付けずに骨折したりするリスクがあるのです。
特に小型犬や老犬は骨が細く、もろいので骨折しやすいほか、当たり所によっては内臓を損傷する危険もあります。腰などを打てば腰椎の損傷から下半身マヒの可能性もありますし、頭を打てば脳震盪を起こしたり、最悪の場合死んでしまうこともあります。
落としてしまったときの対処法
気を付けていても事故は起こるものです。万が一抱っこしているときに落としてしまった場合、まずは落ち着いて愛犬の状態を確認しましょう。
1.手足を怪我していないか
運よく両足で着地した時も、細い足の骨には相当な負担がかかります、足の骨、指の骨、四肢の筋肉や靭帯に異常がないかすぐ確認しましょう。
犬は痛みに対して非常に我慢強い動物ですが、骨折や捻挫などをして居る場合は痛む箇所を触ると悲鳴を上げたり、逃げるようなしぐさをすることが多いです。
またキャンキャンと鳴く以外にも、じっとうずくまって動かなくなったり、ひょこひょこといつもと違う歩き方をしたりします。
人の場合も転んだときなどに、翌日になって変なところが痛みだすこともあるでしょう。犬も落ちるときにとっさに激しく体を動かしたりすることで、直後ではなく数時間たってから痛みを自覚することがあります。
日ごろから歩き方などをよく観察しておき、落とした直後や数時間後にいつもと違う歩き方などをした場合はすぐに動物病院へ連れて行ってあげましょう。
2.痙攣・嘔吐などしていないか
抱っこの最中に犬が暴れるなどして落とした場合、犬も人も思いもかけない体勢で落っこちることがあります。その結果、背中や頭を地面に強く打ち付けてしまう危険も。
頭を強く打っている場合はもちろん、背中や腰などの神経が集まっている部位を強く打ち付けてしまった場合は障害が残ったり、打ちどころ次第では死んでしまうこともあります。
万が一落ちた直後から痙攣や激しい嘔吐などがおこってしまった場合、なるべく頭や首、背骨を動かしたり揺らしたりしないようにして、すぐに動物病院へ連れていきましょう。
また、直後ではなく数日たってから血尿や嘔吐などの症状が出ることもあります。落下してもケロッとして何ともなさそうだからと放置せず、事故が起こった時はなるべく早めに動物病院を受診してください。
3.脳震盪を起こしていないか
落下した直後、頭を打った直後に起き上がりはするけれどふらふらしている、目の焦点があっていないなどの症状があれば脳震盪を疑います。
軽い場合はこれらの症状が徐々に回復して行きますが、これが治まらず痙攣や嘔吐などの症状が出始めるようでしたら脳挫傷、脳出血など命に係わるケガをしている場合があるのですぐに動物病院へ連れていきましょう。
頭を打った場合は症状の重い、軽いにかかわらず動物病院を受診し適切な診断と治療を受けることが大切です。
まとめ
抱っこしている犬を落とすことは命にかかわることもあるほど、大変危険な事故といえます。
飼い主さんは抱っこの最中にほかのことをして犬から手を離さないように注意をしましょう。また、犬に対しても抱っこの最中はじっとしていられるようにトレーニングをしておくこともよいでしょう。
しかしそれでも、どうしても事故は起こってしまうものです。もし万が一落下事故を起こしてしまった場合は、落ち着いて対処できるように犬の普段の様子をしっかり観察しておき、変だと思ったらすぐに動物病院へ連れて行けるようにしておきましょう。