飼い主の養育スタイルから犬の行動パターンが予測できるという研究結果

飼い主の養育スタイルから犬の行動パターンが予測できるという研究結果

飼い主が犬にどのように接して来たかによって、犬がどんな風に行動するかや認知のパターンが予測できるという研究結果が発表されました。

お気に入り登録

飼い主の犬への対応と犬の行動の関連を検証

ソファーで犬を撫でる男性

2000年代以降、犬が物事をどのように理解し判断しているのかという認知の問題、またその認知によってどのように行動するのかといった問題を科学的に分析する研究が数多く発表されています。

飼い主と犬の関係についても多くの研究が行われていますが、飼い主が犬に対してどのような対応をして来たかという養育の方法やスタイルが、犬の行動や認知に影響を与えるのかどうかについては、ほとんど検証されていませんでした。

人間の親子の場合、親の行動は子どもの発達に重要な要素だと考えられています。親が子供にどのように対応するかによって、子供の心の健康、知育、社会性、愛着、仕事のパフォーマンスなど、多くの事柄に影響を及ぼすことがわかっています。

この度アメリカのオレゴン州立大学の動物自然科学の研究者が、人間の親子のように飼い主の行動や対応が犬にどのように影響するのかを調査した結果を発表しました。

飼い主の養育スタイルを3つに分類

トレーニング中の2頭の犬

研究者は犬の飼い主48名を募集し、愛犬をどのような方法やスタイルで育てているかについてアンケート調査を実施しました。アンケートの結果から、それぞれの養育スタイルを人間の子育てスタイルの研究で用いられるのと同様の次の3つに分類しました。

1.民主的養育スタイル

犬の意向を尊重しながら日常生活のトレーニングなどを行うスタイル。飼い主から犬への期待値が高く、犬の行動や欲求に対する反応も大きい。

2.権威的養育スタイル

犬の意向に関わらず必要なトレーニングなどを行うスタイル。飼い主から犬への期待値は高いが、犬の行動や欲求に対する反応は小さい。

3.寛容的養育スタイル

犬の意向を中心にして犬の行動を寛容に受け止めるスタイル。飼い主から犬への期待値も犬の行動や欲求に対する反応も小さい。

アンケート調査の後、犬たちは3種類の行動テストに参加しました。1つめのテストは犬から飼い主への愛着度を評価するものです。

犬と飼い主が同じ部屋に入り、犬の方から近寄って来た時にだけ飼い主は犬と触れ合います。次に飼い主が部屋を出て、しばらくしてから戻って犬と再会という一連の様子を観察分析します。

2つめのテストは犬の社交性を評価するものです。犬と飼い主の他に見知らぬ人がいっしょに部屋に入り犬に声をかけたりアイコンタクトを行い、一連の様子を観察分析します。

3つめは犬の問題解決能力を評価するものです。犬にトリーツの入ったフードパズルを見せて、トリーツが取り出せるかどうかを検証します。犬は飼い主の手助けを得ることができます。

飼い主の養育スタイルと人間の子育てスタイルに共通する点

犬と遊ぶ子供と両親

飼い主の養育スタイルと犬の行動テストの結果は、人間の子育てスタイルと子供の発達との関連とよく似たものでした。

民主的養育スタイルの飼い主の犬たちは、飼い主が見えなくても落ち着いていられる安定した愛着を持つ割合が最も高く、人間からの社会的な合図(「おいで」などの声かけ)に対する反応が強く、見知らぬ人よりも飼い主のそばにいることを好みました。

パズルの課題では持続的に粘り強くトリーツを取り出そうとしました。パズルから自主的にトリーツを取り出すことができたのはこのグループの犬だけでした。

権威的養育スタイルの飼い主の犬たちは、飼い主に対して不安定な愛着(分離不安など)を示す傾向がありました。

人間からの社会的な合図に対する反応は民主的養育スタイルのグループよりも小さいが、見知らぬ人よりも飼い主のそばにいることを好んだ点は民主的グループと同様でした。パズルの課題では人間が手を貸さない状態では持続することができませんでした。

寛容的養育スタイルの飼い主の犬たちは、見知らぬ人からの社会的合図には反応するが飼い主には反応が弱く、飼い主の反応に関わらず飼い主のそばにいることを好みました。

パズルの課題では権威的グループと同じく、人間の手助けなしには課題を持続することができませんでした。

このように民主的スタイルで養育された犬は、飼い主に対して安定的な愛着を持ち、社会の状況に敏感で社会性が強く、問題解決に成功する確率が高いという行動や認知のパターンが予測できることを示しています。

まとめ

飼い主と歩くオーストラリアンシェパード

犬の飼い主の養育スタイルと犬の行動テストの結果を検証したところ、犬に対して高い期待を持ち犬の行動や欲求への対応が高い飼い主に育てられた犬は、安定した愛着、社会性の高さ、問題解決能力の高さなどが予測できるという研究結果をご紹介しました。

人間の子育てスタイルと犬の飼い主の養育スタイルが生み出す結果がよく似ているというのはとても興味深い結果ですね。犬の幸せを作るのは飼い主の行動であることを改めて感じさせる研究結果とも言えます。

《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-022-01694-6
https://phys.org/news/2022-10-pet-parenting-style-dog-behavior.html

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。