犬との主従関係ではなく信頼関係を
『犬 主従関係』『犬 主従関係 作り方』といったような検索ワードがまだまだ目立つ昨今ですが、まず犬と主従関係を築く必要は全くなく、必要なのは「信頼関係」です。
実際「主従関係を築くことで、信頼関係が生まれる」というような言葉を使う訓練士やドッグトレーナーもいますが、そのような言葉の使い方に惑わされないように注意をしてほしいのです。
科学的研究の進歩によって、犬と人間の関係は上下関係や主従関係というものではなく、家族や大切な友人のような横のつながりである、ということがわかっています。
犬を飼ったことがある人は、犬と一緒に生活をしていると、まるで小さい子供のように甘えてくる仕草や落ち込んでいるときになぐさめに来てくれているような様子など、心が通じあえているかのような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
その時の犬の気持ちは、そうすることで何かを得ようといったような自分の利益中止の行動ではなく、あなたと一緒にいることを望んで選択している行動なのです。
そしてその行動は、主従関係や上下関係という発想で普段から犬に厳しく接することで生まれたのでしょうか。恐らくそんな意識を持っていなくても、ただただ犬とともに優しく楽しく生活をしているなかで、自然と生まれたもののはずです。
それがいざ『しつけのため』という考えが生まれた瞬間に「上下関係や主従関係を養わなければいけない」となることに、一度疑問を感じてみてもいいと思います。
犬には、そのような「しつけのためには厳しくする必要もある」「リードショックや音で驚かすなどは体罰にはならない」「愛のある体罰ならそれは怒るではなく叱るだからよい」という人間の言葉遊びは通用しません。
犬にとっては単に脅威であり、自分を傷つける行為という事実だけで、それはれっきとした体罰・虐待であるのです。
犬との関係に必要なのは、主従関係でも上下関係でもなく信頼関係であり、そのために上下関係や主従関係というものは不要だと断言します。
犬に厳しくすると信頼関係はなくなる
犬と信頼関係を築く方法は「犬に優しくしてあげること」、これだけです。
厳しくする必要はなく、ただただ犬に優しく接し、親切であることだけ守れば、少しずつでも確実に信頼関係は築けます。しかし、犬を騙したり厳しくしたり、不必要に不安や恐怖を与えるような接し方をしていると、信頼関係はただただ壊れていくことに。
また、『不必要に不安や恐怖を与える』というと「それなら、しつけのためになら、ある程度そのような対応をするのも必要よね?」と考えるのもNGです。
例えば動物病院で治療をする際に、どうしても保定をして痛みを我慢してもらわなければなりません。また痛みとは同時に苦痛であり恐怖ですから、そこにはネガティブな気持ちや状況で犬を取り囲んでいることを意味します。
鎮静や麻酔処置をしてそれらを軽減できるのであればいいですが、必ずしもそうとは限らないため、結果として不必要な不安・痛み・恐怖を与えてしまっていることになります。
ただし、これは結果としてそうした状況になってしまっているのであって、不安・恐怖・痛みでわからせてやろうといったような意図したものではないのは明確です。
またこのような処置も、普段からトレーニングをして慣れさせることで、犬自身が受け入れやすい心のキャパシティを養うことも可能になります。
心のキャパシティーが広がれば、しつけ以外のところ(トリミングや動物病院での処置など)でもどんどん不安や恐怖等のネガティブに感じてしまう状況を減らしてあげることができ、よりよい環境で犬に生活を提供できることになるのです。
しかし、このような取り組みをするために、犬をコントロールすることを目的にした関わり方をしていると、当然信頼関係を築くことはできません。しかもそれだけではなく、犬との信頼関係はどんどんなくなっていき、相手のことを「安心できる人」ではなく「常に不安がつきまとう人」という認識をもたれてしまうようになります。
せっかく犬のためを思っていていることでも、それはとてももったいないことだと思いませんか?
犬の安全の管理をしてたくさん甘えさせて
前述のような話をすると、「犬をしつけるためには時には厳しさが必要で、甘やかしているとわがままになって後々困る」というった意見もよく耳にします。
しかしそれは間違いで、決して私たちは甘やかしているのではなく、甘えさせているだけなのです。「甘やかし」とは好き勝手な行動を許すことですが、甘えさせるというのは相手の心を満たすことです。
私たちが大事にしているのは犬の心を満たすことであり、決して不安・恐怖・痛みといったネガティブなものを与えて意のままにコントロールすることではありません。だからこそ犬にとって危険な物事を排除したり、リスクを減らし、安心安全に生活できるように生活環境を工夫をしてあげる必要があるのです。
まとめ
犬のしつけというと、どうしても「厳しさも時には必要で、そのためにはまず主従関係・上下関係が必要」という考えがでてくるものです。
そしてそれをプロの立場で発信する人たちもまだまだ多い世の中ではありますが、それは犬のしつけの世界が、なぜか科学的根拠をもとにアップデートする、とういうことがされにくい世界にあるからだと思います。
しかし、それでは結局、より良い方法で犬のために何をしてあげられるか?という基本的なところを見失っています。
まずは飼い主さん自身が最新の情報を知り、見極める基礎知識が必要な時代なのかもしれません。