犬の嗅覚
犬たちは大昔、移動しながら狩りをする生活をしていました。空気中や地面に漂う獲物のかすかなにおいを頼りに追跡をしたり、敵の居所を察知したりするために嗅覚は発達していったと考えられています。
におい物質を感知する器官は鼻の奥にある鼻粘膜に含まれている嗅細胞です。鼻粘膜の面積が広いほどにおい物質をキャッチしやすくなりますし、嗅細胞が多ければ少ないにおい物質にも反応することができます。
犬の場合、鼻粘膜の面積は犬種によって鼻の長さが違うため人間の10~50倍とばらつきがあるものの、人よりずっと広いことがわかっています。さらに嗅細胞の数は約40倍にもなるといわれています。
さらに、そのにおいに関する脳の領域が発達していることも分かっています。つまり「とてもにおいを感じやすい、覚えやすい」体のつくりをしているんですね。
このように嗅覚が発達した犬たちが、なぜ人間が嗅ぐと「臭いと感じるもの」に対して執着し、臭いとは思わないのでしょうか。
犬が臭いものを好む理由
1.「獲物のにおい」だから
犬が好むにおいの一つにミミズやトカゲの死骸などのにおいや、汗のにおいなどがあります。これらは人間がくんくんと嗅げばとてつもなく「臭い・嫌なにおい」ですよね。
しかし犬は臭いとは思っていません。これらに含まれる有機物のにおいを好んで嗅いでいるといわれています。
有機物のにおいは動物のにおいであり、犬たちにとっては「獲物」のにおいなんですね。大昔から犬たちは狩りをするためにこの有機物のにおいを追いかけていたので、気になって仕方なくなるのでしょう。
2.自分の体臭をごまかしてくれるから
人間は自分の汗や体臭が気になるとデオドラント製品を使いますが、犬たちも自分の体臭をごまかすために他のにおいを体に付着させることがあります。
その際に使われるにおいは、自分とは異なるかなりキツイにおいが好まれます。動物の死骸、糞、側溝の泥などに愛犬が体をこすりつけて悲鳴を上げたことがある人もいるのではないでしょうか。
犬たちが自分の体臭をごまかすのは、やはり狩りをしていた本能的が残っていて、外敵や獲物の注意をそらすカモフラージュのためといわれています。
3.安心のため
犬が好きなにおいの中には、もちろん大好きな飼い主のにおいがあります。しかも飼い主の汗がしみ込んだ靴下や下着など、よりにおいが強いものを好みます。
これは、汗に含まれている有機物のにおいに反応しているという理由以外に、やはり大好きな飼い主のにおいに包まれて安心したい、飼い主のにおいをずっと嗅いでいたいという犬が多いようですね。
お父さんの靴下を洗濯籠からこっそり持ち出しハウスやベッドでずっと大事に噛んでいる犬もいれば、自分の寝床に大好きな人の服などを持ち込んでいる犬もいます。
このように、犬は臭いものを好む傾向がありますが、たばこ臭や刺激臭などについては、同じ「臭いもの」でも嫌いな部類に入ります。特につんとする酢のにおいやハッカなどのメンソール系は刺激が強いため嫌いな犬が多く、これらをつけた場所には近寄らないようにするようです。
まとめ
犬の好きなにおいというのは私たち人間の鼻には同じように「臭いもの」ですが、犬たちにとっては「臭くないもの」です。むしろ良いにおい、気になるにおいであり、本能を満足させたり安心させたりする効果があります。
臭いものに執着したときも、一律に「イケナイ」とせずにそれに執着する理由を考えてみると納得できるかもしれませんね。
また、逆に人間が好む「いいにおい」が犬にとっては大嫌いなにおいで健康を害してしまうこともあるので、柔軟剤や芳香剤などを使用する際は注意したほうが良いようです。