犬が人間のストレスを嗅ぎ分けた!
犬の嗅覚については非常の多くの研究が行われており、犬が匂いを通じて世界を見たり感じたりしているという多くの例が明らかになって来ています。
そしてこの度は、犬にとって最も身近な生き物である人間がストレスを感じた時に匂いから察知しているという実験の結果が発表されました。
イギリスのクイーンズ大学ベルファストの動物行動学の研究チームが、犬が人間の汗や呼気からストレスを嗅ぎ分けたことを報告しました。犬が何を手がかりにしたのか、どのような実験が行われたのかをご紹介します。
平常時とストレスを感じた時の汗と呼気を嗅ぎ分け
この研究のための実験に参加したのは一般から募集された家庭犬たちです。募集はSNSやポスター、口コミを通じて行われました。20頭の犬が選ばれ、いくつかのサンプルの匂いを嗅ぎ分ける方法と正しいサンプルをハンドラーに示す方法がトレーニングされました。
最終的にトレーニングを完了し実験に参加したのは4頭の犬たちで、犬種はコッカースパニエル、コッカプー、雑種(ラーチャー系とテリア系)でした。
犬たちが嗅ぐ対象となるサンプルを提供したのは、同大学の学生を中心に募集された36人の参加者でした。参加者からは平常時の汗と呼気のサンプル、ストレスを誘発するために計算問題を暗算で解答した後の汗と呼気のサンプルが採取されました。
各犬は最初に、汗や呼気を何も含まない無臭サンプルとストレス時のサンプルを嗅いでストレスサンプルを示すよう指示されました。
次に同一の参加者の平常時サンプルとストレス時サンプルを嗅いでストレスサンプルを示すよう指示されました。それぞれのサンプルを嗅ぐのは4分ずつの間隔をおいて行われました。
犬たちはどの程度の精度でストレスを嗅ぎ分けたのか?
上記のようなサンプルの嗅ぎ分けの実験を行った結果、それぞれの犬がストレスサンプルを正しく示した精度は90%〜96.88%、4頭全てを合わせた精度は93.75%という非常に高いものでした。
心理的なストレスによって汗や呼気に含まれる揮発性有機化合物に変化がもたらされ、犬はその変化を嗅覚によって検出可能であることが示されました。
またこの研究は、犬が人間のストレスを感知するのに視覚的および聴覚的な手がかりを必要としないことも明らかにした初めてのものです。
この研究結果は犬と人間の関係についての理解を深めるとともに、心的外傷後ストレス障害の人などをサポートする精神科介助犬やセラピードッグのトレーニングにも役立つと考えられます。
まとめ
犬は人間がストレスを感じた時に変化する汗や息の有機化合物を嗅ぎ分けることでストレスを察知することができるという研究結果をご紹介しました。
視覚や聴覚に頼ることなく嗅覚だけでストレスを察知するということは、ストレスを感じている時に笑顔を作り穏やかな声を出すように努めても、犬にはお見通しということかもしれませんね。
実際にはストレスに関連する物質を嗅ぎ分けた犬が人間の心理状態をどのように解釈しているのかは今のところまだわかっていません。今後さらに研究を進めることで、この点についてもより深い理解や新しい発見が期待されます。
《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0274143