動物の寿命
犬は、体の小さい犬種よりも、成犬の体重が25kg以上となる大型犬の方が、平均寿命が短いことがよく知られています。しかし哺乳動物の場合、一般的には体が大きい動物の方が、小さな動物よりも寿命が長くなる傾向があることが知られています。
よく例に出されるのが、ネズミとゾウです。寿命は脈拍数15億回で迎えるという説があります。
ハツカネズミの寿命は2〜3年であるのに対して、ゾウの寿命は70年以上です。しかし、ネズミは1回の脈拍が0.1秒であるのに対して、ゾウの脈拍は1回に3秒かかるため、ハツカネズミとゾウの寿命はどちらも同じ位の長さだというわけです。
ところが特定の種の中で比較した場合は、体の大きさと寿命の間には、逆の相関関係が見られるといわれています。特にそれがよく当てはまっているのが、犬とネズミなのだそうです。そこで、犬の老化についての研究が世界中でなされているのですが、この謎はまだ解明されてはいません。
今回は、現時点で考えられている、大型犬の寿命が小中型犬よりも短い理由について、ご紹介します。
1.老化スピードが速い
犬に関する書籍などで、犬の年齢を人の年齢に換算するための表を目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。前述の通り、体の小さな犬と体の大きな人間とでは、寿命が異なります。そのため犬の年齢を人間の年齢に換算することで、成長や老化の度合いを理解しやすくしようというための表です。
犬は、最初の1年はものすごいスピードで成長します。その後の1年は少し成長スピードが緩やかになり完全な成犬になります。そして、3年目以降は更に緩やかなスピードで老化していきます。この傾向は小中型犬も大型犬も同じなのですが、成長スピードが異なるのです。
小中型犬の場合、犬の1歳は人の15歳、犬の2歳は人の24歳、それ以降は1年で4歳分ずつ年を取るといわれています。それに対して、大型犬の1歳は人の12歳、犬の2歳は人の19歳、それ以降は1年で7歳分ずつ年を取るといわれています(諸説ある中の1つの説です)。
そう考えると、小中型犬の3歳は人の28歳、4歳は人の32歳に相当し、大型犬の3歳は人の26際、4歳は人の33歳に相当することになり、4歳を過ぎると小中型犬よりも大型犬の方が老化の度合いが進んでしまうことになります。
犬の中で比較した場合、成長が止まり老化が始まる時期は似ていますが、その後の老化のスピードが大型犬の方が速いということが分かります。
2.心臓の負担が大きい
大型犬と小型犬を比較すると、体の大きさに比べて心臓などの臓器の大きさが小さいと言われています。そうなると、大型犬の臓器に掛かる負荷は、小中型犬の臓器よりも高いことになります。
特に心臓は、酸素を含んだ新鮮な血液を全身の隅々にまで届けるための大切な役割を担っています。心臓が大きな全身に血液を行き渡らせるためには、通常の生活でも負荷が大きいでしょう。大型犬の場合、高齢犬に多い病気の一つに心臓系の疾患が挙げられますが、このことも関係しているのかもしれません。
3.遺伝子の影響
IGF-1遺伝子によって作られるタンパク質のIGF-1因子は、成長ホルモンの一種で、体のサイズを大きくする作用を持っています。しかし、IGF-1因子の分泌量が多いと、体のサイズは大きくなるものの、短命になる傾向が強いともいわれています。
アメリカの研究で、体重が9kg以下の全ての小型犬は、このIGF-1因子を作り出すIGF-1遺伝子に、ごく小さな変異が認められるということを突き止めました。つまり、この遺伝子変異により、体が大きくなるのを抑制された小型犬が生み出されたのだと考えられるのです。
逆の言い方をすると、小型犬はIGF-1因子の分泌が抑制されているために寿命が長くなっているが大型犬はそうではない、と考えられるのです。
まとめ
周囲を見渡すと、小さな動物たちは生き急ぎ、大きな動物たちはゆったりと暮らしているように見えます。しかし犬という種の中だけを見ると、不思議と大型犬の方が小中型犬よりも寿命が短い傾向にあります。
生物の分類における階級には、界・門・綱・目・科・属・種があり、進化の道のりを示しています。しかし、人間の手で行われた品種改良による犬という種のさらなる細分化の過程では、進化の法則がそのまま適用されないようです。
獣医学の発展や良質なフードの普及、犬のご家族への知識の啓発などにより、犬全体の寿命は年々伸びていく傾向にありますが、大型犬の方が小中型犬よりも短命であるという事実は、そう簡単には変えられそうにありません。
そこで、大型犬と一緒に暮らしているご家族は、下記の項目についてより気をつけることで、愛犬の健康寿命を少しでも長く延ばせる工夫を図りましょう。もし「ここが弱いな」と感じる項目がありましたら、ぜひ今日から、改善してみてください。
- 日々の健康管理(健康チェック)
- 定期的な健康診断
- 適切な体重体型管理
- 床の滑り止め
大型犬はもともと体が大きく足の関節に掛かる負荷が高いため、特にフローリングなどの滑りやすい床で生活をさせる場合は、厚めのカーペットやラグを敷く、ペット用の滑り止めを塗る等の対策を行ってください。