ドッグトレーニングは犬を従わせる・教育することではない
ドッグトレーニングまたはしつけというと、「犬に教える」「従わせる」というイメージを持っている方が多いかもしれません。
しかし、実際は教えるや従わせるというものではなく犬に対して協力をお願いし、もし協力してくれるなら必ず良いことがありますがどうでしょう?という提案をしているだけなんです。
ただ、プロを含めたまだまだ多くの方が「教える」「従わせる」という認識・イメージでいるように、協力・提案という認識でドッグトレーニングをしている人は少ないと思います。
だからこそ、昔は当たり前だった教える・従わせるではなく協力・提案なのだというふうに認知していただき、犬にとっての福祉を向上させるための取り組みがドッグトレーニングとまずは覚えてもらいたいです。
ドッグトレーニングは仮説・実験・結果を分析する科学
ドッグトレーニングは犬の福祉を向上させるための取り組みですが、そのためにやみくもに何でもやるというわけではありません。
また、現状を把握するにあたっても「この子はこういう性格だから」「舐められているから」「ビビリだから歯向かっている」といったその犬の内側のせいにすることもないのです。
あくまでもその行動の機能(目的)を考えそれに沿った仮説を立て、実際にその仮設が正しいのかを実験し、実際に起こった結果から仮設が正しかったのかそうではないのかという外側に目を向けて考えていきます。
これは「行動分析学」という学問です。すなわち科学であり行動の目的を知り、人間にとって望ましい行動を引き出し協力してもらう、そして動物福祉の向上に繋げるためにはどうすればいいのかを考えています。
よって、それに矛盾する行動である罰を使うや叱るということは一切しませんし、そもそもする必要がありません。
ドッグトレーニングで楽しいしつけをしよう
ドッグトレーニングの目的は動物福祉の向上であり、そのために行動分析学で得られた知見を社会での問題解決に応用しようというものが応用行動分析学(ABA)で、ドッグトレーニングにも取り入れられています。
そして、それを利用してドッグトレーニングをすることで見えてくるのは「こういう条件のときこのような行動をとると良いことがある→だからこの行動を増やそう・強くしよう」というもの。
もちろんこれに当てはめて「この条件(環境)のときこの行動をとると嫌なことが起こる」とすれば、「それなら、その行動はやらないでおこう・弱めよう」という現象が起こります。
しかし、すなわちそれは犬にとって嫌悪刺激(不快)となることが身に降り掛かっているということを示しますので、それではドッグトレーニングの本来の目的である「動物福祉の向上」に反することは明白です。
犬の福祉の向上がドッグトレーニングの本来の目的ですからそれに則った方法となると、必然的に犬にとって『嬉しい・楽しい』といったポジティブな方法を選択することになります。すなわちドッグトレーニングは、決して厳しくする必要も叱る必要もなく、「犬も人も楽しいしつけ」というものになるのです。
犬が楽しいと思えるドッグトレーニング・しつけであれば、良いことができるために当然犬は行動を増やしたり強めたりします。一方人間は、人間にとって犬の「困った」行動をやめてほしい代わりに、別の行動を提案することで「困った」を回避・予防することが可能です。
こうした方法であれば犬も人も「Win-Win」ですし、行動を封じ込められるわけではなく変わりの行動を犬は提案してもらえるので、犬の福祉も向上します。
まとめ
ドッグトレーニングはどうしても教える・従わせるというイメージがまだ根強くあり、そうしたイメージからときには厳しくしたり叱る必要もあるのでは?といった思い違いをしてしまいがちです。
しかし実際はそうではなく、仮説・実験・結果というシミュレーションをして犬のできることを発見し、それを伸ばしていくことなのです。
そしてその行動しか許さないのではなく、やらない選択も認め、「協力してくれるなら必ず良いことがあるけどどうでしょう?」と提案するものがドッグトレーニングです。
「教える」・「従わせる」という考えや方法でいると一方通行になってしまいますが、「協力」と「提案」という考えとアプローチでいれば、犬も人も嫌な思いをせずに円滑なコミュニケーションを取れるようになります。
そうすれば、今よりもっと犬との関係がすばらしいものになっていくはずです。ぜひお互いにとって楽しく、そして犬にとって優しい方法を活用していきましょう。