ハワイの環境保全犬
侵略的外来種の問題は世界の至る所で地元の人々を悩ませています。日本の場合はアライグマやカミツキガメにブラックバス、植物ではブタクサやアワダチソウがよく知られています。
人間の活動によって本来は生息していない地域に入ってきた生物のうち、生態系や人間の生活への被害が特に深刻なものがこのように呼ばれます。
深刻な被害とは、侵略的外来種が繁殖することで元々その地にいた在来種が絶滅してしまったり、農作物の収穫が減ってしまうようなことです。
アメリカのハワイでは、このような侵略的外来種を嗅覚を使って検出する犬を育成し活動している非営利団体があります。団体の名前はコンサベーション・ドッグス・オブ・ハワイ=ハワイの環境保全犬と言います。
デビルズウィード根絶のために働く犬たち
コンサベーション・ドッグス・オブ・ハワイの設立者キョウコ・ジョンソン氏は2016年に同団体を設立しました。
ジョンソン氏は「生態学的臭気探知」を専門とする認定ドッグトレーナーでもあります。臭気探知をする犬は爆発物や麻薬の捜査がよく知られていますが、動植物の生態調査のための臭気探知をするのが生態学的臭気探知犬です。
ジョンソン氏は現在9頭の犬とそのハンドラーでもある飼い主たちと共に、オアフ島を中心にはびこっているデビルズウィードと呼ばれる雑草を嗅ぎ分ける訓練をしています。
デビルズウィードはたいへん成長が早く在来の植物を駆逐してしまうだけでなく、乾燥していない環境でも非常に燃えやすい化学物質を含んでいる厄介な草です。またその燃えやすい物質は家畜に有害でもあります。
ジョンソン氏はデビルズウィードの匂いと犬の大好きな食べ物の匂いを条件づけて報酬ベースのトレーニングを行っています。
訓練を終えた犬はGPS首輪を装着しハンドラーと共に山野に出かけて、嗅覚を使って目当ての植物を探します。見つけたらトリーツやおもちゃなどの報酬をもらえるのですが、犬たちにとっては嗅覚を存分に使って山野を歩き回ること自体が報酬になっている面もあるようです。
発見した植物は根元から掘り起こし、その場所を記録します。花が種を落としている場合もあるので後日また同じ場所に戻って調査します。
環境保全犬に向いているのはどんな犬?
同団体の環境保全犬たちは侵略的外来植物だけでなく、ココナッツカブトムシやコキガエルなど侵略的外来生物の繁殖地の特定の訓練も受けています。
犬は一般的に優れた嗅覚を持っているものですが、臭気探知犬になるためにはある種の特性が必要だとジョンソン氏は述べています。
それは身体的な耐久性、自信、意欲、チームで仕事をするための社会性などです。犬種はあまり関係がないようで、大切なのはあくまでこの仕事向きの特性があるかということです。
環境保全犬の訓練は単に犬に技術を教えるだけではなく、このような特性を見極めることが非常に重要です。これは環境保全犬に限らずどのような職業犬でもそうですね。一般の家庭犬でも向き不向きを見極めることは犬と人間両方の幸せのために大切です。
ジョンソン氏は環境保全の仕事には終わりがないが、今後も犬とハンドラーと共に地域の自然を守っていきたいとおっしゃっています。
まとめ
ハワイで侵略的外来種の植物を探す仕事をしている環境保全犬たちの話題をご紹介しました。侵略的外来種という完全に人間の責任である問題をこうして助けてくれる犬たちにジョンソン氏も心からの感謝の気持ちを表しています。
侵略的外来種をこれ以上広めないために一般の市民にもできることはいろいろあります。まずはその内容を詳しく知ることから始めるのも私たちにできることのひとつです。