犬が仲間を失った時に見せる『ペットロスの症状』3選!飼い主ができること

犬が仲間を失った時に見せる『ペットロスの症状』3選!飼い主ができること

多頭飼いの経験がある飼い主さんの中には、愛犬が仲間の死に直面した際に、「死」という概念を理解しているかどうかは別として、異変を感じ取り悲しんでいるように感じた事があるのではないでしょうか。ペットを看取った飼い主さんへのアンケート調査から、「仲間を失った犬の行動に変化が見られる」ことが分かっています。その調査概要をご紹介します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

同居犬・猫を失った犬にペットロスはあるか?

犬の葬儀

動物には、「死」という概念がないといわれています。たしかに、人間のように言葉で物事を理解しているわけではない動物たちにとって、「死」という概念を理解するのは難しいことでしょう。

しかし、多頭飼いをしている飼い主さんの中には、愛犬が今まで一緒に暮らしていた犬や猫の死に際して、私達人間と同様に悲しんでいると感じられるような、行動の変化を感じた経験をお持ちの方もおられるのではないでしょうか。

2016年11月に、ニュージーランド・コンパニオン・アニマル・カウンシルやオーストラリアのクイーンズランド大学などの合同研究チームが、実際にペットを看取った飼い主さんに対して、残っている犬や猫の行動の変化に対するアンケート調査の結果を発表しました。

そこで、犬や猫も仲間を失ったことによるペットロスのような行動の変化が見られたと報告されています。そこで今回は、この調査結果の概要を通して、犬が仲間を失った時に見せるペットロスの症状のような行動の変化についてご紹介します。

調査の概要

寂しそうな犬

まず簡単に、調査の内容と結果の概要をご紹介します。

<調査内容>
1.亡くなった同居ペットの遺体を見たか。見た場合、どう反応したか
2.同居ペットの死後、下記のカテゴリー別に、行動に変化が見られたか
 カテゴリー:食事、睡眠、発声、排泄、攻撃性、感情、縄張り
3.行動の変化があった場合、どのような変化で持続期間はどのくらいだったか

<回答の回収概要>
有効回答数=279、過去5年以内に死亡した動物=356匹、残っている動物=414匹

<結果概要1:亡くなった同居ペットの遺体を見たか>

  • 残っている動物の内、158匹(犬の58%、猫の42%)が亡くなった仲間の遺体を見た
  • 遺体を見た内の115匹(73%)が、死んだ仲間の体のニオイを嗅いで調べていた

<結果概要2:行動の変化>

  • 仲間の遺体を見た動物と見なかった動物との間に、行動変化の違いは見られなかった
  • 残っている犬の74%(159頭)と猫の78%(152匹)が変化を示した

<結果概要3:変化の持続期間>

  • 感情、睡眠関連の行動変化の中央値は2〜6ヵ月の継続
  • 縄張り、食事関連の行動変化の中央値は2ヵ月以下の継続

では次に、犬の行動変化についてもう少し詳しくご紹介します。

犬が仲間を失った時に見せるペットロス症状のような行動の変化

甘える犬

1.感情的な変化:甘えん坊になる

61%の犬が、より愛情を求めるような行動を見せたという結果が出ています。

回答の内訳は、下記の通りです。

  • より多くの愛情を求める行動を見せた=35%
  • しがみつくようになった=26%
  • 愛情を求めなくなった=10%
  • 接触を避けるようになった=3%
  • 変化なし=26%

2.縄張りの変化:亡くなった子のお気に入りの場所を気にする

40%の犬が、亡くなった同居ペットがお気に入りだった場所に関する行動に変化を見せています。

回答の内訳は、下記の通りです。

  • 亡くなった同居ペットのお気に入りの場所を探し回る=30%
  • 亡くなった同居ペットのお気に入りの場所を避ける=10%
  • いつもより高いところに行きたがる=5%
  • 隠れる時間が増えた=14%
  • 変化なし=41%

3.その他

<排泄>
排泄の回数に関しては、増えると変化なしが同じ40%となっており、排泄場所については変化しないが92%ですので、あまり顕著な変化は見られないと考えて良いでしょう。

<睡眠>
睡眠時間に関して、34%が増えたと回答していますが、変化なしが58%と半数以上となっており、やはりあまり顕著な変化は見られないと考えられます。

睡眠場所に関しても、これまで寝ていた場所を避けるようになったという回答が15%ありますが、ほとんどは変わらないようです。

寝る場所の変化に関しては、『亡くなった仲間のお気に入りの場所を避けるようになる』という変化と関連している可能性も考えられます。

<食事>
食事量の減少が35%、食べるスピードが遅くなったが31%でしたが、食事の変化がその子の健康に影響を与えたかに関して91%が「いいえ」という回答でした。

ただし、同居犬を亡くした犬の方が、同居猫を亡くした犬よりも食べるスピードが遅くなる傾向が大きかったそうです。ロスした仲間の動物種によっても、行動の変化に差異が生じるようです。

<発声>
鳴いたり吠えたりする時間数や声の大きさに関しても、あまり大きな変化は起きないようです。

ただし、残された動物が猫の場合、犬よりも鳴いている時間が長くなったり声が大きくなる率が高くなるという結果が出ています。

<攻撃性>
人に対しても他の動物に対しても、攻撃性にはほとんど変化が見られませんでした。

猫も似たような結果でしたが、他の動物に対する攻撃性は、猫の方が若干高くなる傾向があるようです。

まとめ

撫でられる犬

調査は飼い主さんの観察眼を通してのものです。そのため、ペットロスである飼い主さんの精神状態が反映されているということを忘れることはできません。

また、飼い主さんの精神状態が、残された犬に影響を与えている可能性も大いに考えられます。なぜならば、犬は飼い主さんの感情を敏感に察知し、共感しやすい傾向があるからです。

これらの注意点を踏まえる必要がありますが、報告では犬や猫にも仲間を失った際にペットロスと似たような行動の変化が見られると分析しています。ただし、彼らが仲間を失ったことに対して悲しんでいるのかどうかについては、さらなる立証が求められています。

飼い主としてできることは、無理をせず、しかし今まで通りの生活を続け、残された愛犬と共に前向きに楽しい時間をたくさん作ることだと言えるのではないでしょうか。そうすることで、まず飼い主さんご自身が亡くなった子を明るい気持ちで思い出せるようになり、それが残された犬にも楽しい毎日を与えてあげる力になるはずです。

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