年を取るということ
人間の場合、よく「年をとると性格が変わり、頑固で自己中心的になったり用心深くなったりする」といわれることがあります。
同じように、犬の場合も「年をとると甘えん坊になる」という事をよく耳にします。年をとることで、体調や心境にさまざまな変化が生じ、それが原因で性格が変わったように見えることがあるようです。
人間も犬も、年をとることで下記のような変化が起きるといわれています。
- 今まで簡単にできていたことが、努力してもできなくなる
- 今まで認識できていたことが、認識しづらくなる
- 持病を患うことで慢性的な体調不良に見舞われる
人間であれ犬であれ、これらの変化がとても不安な気持ちにさせ、自信を失わせることは、想像に難くありません。ましてや、犬は人の4〜7倍のスピードで年をとっていきます。飼い主さんは、そういうことを意識し、配慮しながらシニア期に入った愛犬に対応しなければならないといえるでしょう。
今回は、犬がシニアになったことで甘えるようになる理由やその際にみせる行動、飼い主さんとしてどう対処すればよいかなどについて解説します。
愛犬がシニアになると甘えるようになる理由
1.加齢による能力の低下
年をとると、筋力の低下により足腰が弱くなったり、五感の感度が鈍ってきたりします。今まで楽々と歩いていた散歩コースが辛くなってきたり、見えていたものがよく見えない、聞こえていたものがよく聞こえないといった状況になるのです。
今までできていたことができなくなったり、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚が衰えてきたりしたら、常に不安な気持ちになり、自信を失ってしまうことでしょう。楽しみだった散歩や食事への興味も、半減どころではなくなってしまうでしょう。
そんな不安な気持ちを少しでも落ち着かせ、飼い主さんに頼りたいという気持ちが、愛犬を甘えたくなるような心境にさせているのだと考えられます。
2.加齢による慢性的な体調不良
年をとることで低下するのは筋力や感覚だけではありません。身体機能も徐々に衰えていき、さまざまな病気にかかりやすくなります。特に老犬の場合、心臓病・腎臓病・糖尿病・悪性腫瘍・関節炎・呼吸器などの病気を発症しやすくなります。
こうした持病を抱えてしまうことで慢性的な体調不良が続き、その不自由さや辛さから、飼い主さんに甘えたいという心境が芽生えるのだと考えられます。
3.認知症
犬も高齢になると、人間の認知症のような症状を発症することが知られています。認知症になると、生活リズムが狂ってしまい昼夜が逆転したり、さっき食べたこともすぐに忘れてしまったりといった状態になり、その行動が甘えているように見えることがあります。
シニア犬がよく見せる甘えたような行動とその対処法
そばから離れようとしない
シニア犬になると、常に飼い主さんについて回ったり、しきりにクンクンと鳴くようになる行動が見られます。
視界に紗がかかったようになったり、耳に綿が詰まっているような聞こえ方になったりと、年をとることで今までの世界を今まで通りには感じ取れなくなって生じた不安から、最も信頼できる飼い主さんのそばにいることで、安心感を得ようとしているのかもしれません。
見えづらく聞こえづらくなっていますので、できるだけスキンシップを増やすことで、愛犬を安心させてあげると良いでしょう。愛犬の正面から、なるべく高く張った大きめの声をかけながら近づき、優しく撫でてあげるようにしましょう。
夜中によく鳴く
飼い主さんご家族が寝静まった夜中にしきりに鳴いているという場合、認知症で昼夜逆転してしまっている可能性があります。
まずは、無理をさせすぎない程度で構いませんので、できるだけ昼間に遊んだり散歩をさせたりして疲れさせ、夜にしっかりと眠れるように生活リズムを整えてあげることを心掛けてください。
また、他にも認知症を疑わせる症状が見られる場合は、かかりつけの動物病院に連れて行き、相談することをおすすめします。
四六時中食べたがる
さっき食べたばかりなのに、すぐにまたおやつの催促をするといったような場合、関心を引きたかったり甘えているだけという場合もありますが、やはり認知症の症状が出ている可能性があります。
一度に食べさせる量を減らし、食事の回数を増やすといった対策を行うと同時に、やはり他にも認知症を疑わせる症状が見られる場合は動物病院に相談しましょう。
散歩中なのに歩きたがらない
若い頃は散歩が大好きだった犬も、年をとり関節炎などを患うことで、長時間歩き続けることが辛くなってきます。これは単に甘えているだけではなく、痛くて歩けなくなり、飼い主さんに抱っこをせがんでいる可能性も考えられます。
そのため、散歩の距離を短くする、起伏の少ないコースに変えるなどといった工夫をすると同時に、かかりつけの動物病院で関節炎や心臓病などを発症していないかどうかを検査してもらいましょう。
まとめ
私達飼い主も、いずれは年をとり、体力の衰えや記憶力、感覚の低下に悩まされるようになります。しかし、犬は私達の4〜7倍もの速さで年をとっていくため、気付けばあっという間にシニア期に入っているということが少なくありません。
愛犬達の行動の変化には、大抵の場合理由があります。その理由を見極めて、正しく対処することで、シニア犬もできるだけ楽しく快適な暮らしを続けられるようにしてあげたいものです。