進歩を続けるペット医療の世界
医学の進歩によって、かつては不治と言われた病気が治療できるようになったり、辛い症状を軽減することができるようになった例は私たちの周りにもたくさんあります。これは人間の世界に限ったことではなく、犬や猫などペットのための医療にも当てはまります。
特に犬は人間と生活環境を共にし人間と共通する疾患も多いことから、人間の治療モデルとして多くの研究が行われており、ペット医療の進歩に大きく関わっています。またペットを対象にした専門医(ガン治療、循環器系、眼科など)に対するニーズも高まっています。
アメリカのペット医療サイトPET MDが、ペットの医療においてこの10年間で特に進歩した分野で使われている2種類のツールについて紹介しています。知っておくと、愛犬のいざという時の助けになるかもしれません。
ペット医療における3Dプリンター
1つ目のペット医療のためのツールは『3Dプリンター』です。3Dプリンターは過去10年で大きく技術が進歩し、飛行機の部品や住宅など「そんなものまで!?」と驚くようなものが作れるようになり、さらに価格も手頃になっています。
この恩恵はペット医療の分野にも及んでいます。CTやMRIなどの画像を基に3Dプリンターを用いた正確な3D模型が簡単に作れるようになりました。
このような3D模型は骨折の診断や手術の計画、正常な状態と異常な状態を視覚化して比較する際などに役立ち、よく使われているのだそうです。
3D模型を作るだけでなく、体内に移植するための人工関節や人工骨も3Dプリンターを用いて作ることが研究されています。2018年にはカナダのオンタリオ獣医科大学で脳腫瘍を患った犬の頭蓋骨の一部を3Dプリンターで作って移植し、世界中で大きな話題となりました。
また、事故や腫瘍などで脚を切断しなくてはならなかった場合の義肢、骨折治療などに使用するボルトなどもそれぞれの動物に合わせてカスタマイズしたものが3Dプリンターで早く簡単に作れるようになっているそうです。
手術と治療、レーザーが果たす色々な役割
もうひとつのツールは『レーザー』です。
過去10年間で急速に利用が増加したもののひとつに手術用レーザーがあるそうです。レーザーとは光線(電磁波)を発生させる光電子デバイスで、高度に集光されたレーザービームをメスのように用います。
組織を切除した際に毛細血管やリンパ管を溶接したように密閉するため、出血が少なく感染症のリスクも低くなります。また手術後の痛みの軽減、治癒時間の短縮といったメリットもあります。
手術用レーザーの装置は高価で、使用するためには専門的なトレーニングが必要なため大学病院や外科手術専門施設、不妊化手術専門施設、歯科や眼科などの専門医などで多く使用されています。
手術用とは違う種類のレーザーを使用する治療用のレーザーもあります。治療用レーザーが初めて医学文献に登場したのは1968年のことだそうですが、獣医療での利用は過去10年で大幅に増加しました。
レーザー治療は鍼灸やマッサージなどと同じく理学療法のひとつで、痛みや炎症の治療に薬物療法の代わりまたは併用して使用されます。
特に腎臓や肝臓に疾患があって鎮痛剤を使用できない動物の痛みを和らげるために有効です。治療には痛みを伴わず、リラックス効果も期待できる動物に負担の少ない治療法です。日本の動物病院でも導入しているところが増えています。
まとめ
3Dプリンターとレーザーというペット医療と一見関係のなさそうなツールが、過去10年で急速に使用が増えペットの医療の可能性を広げているという話題をご紹介しました。
今すぐに必要な知識ではなくても、将来の愛犬の治療にいろいろな選択肢があることを知っておくと心の安らぎにつながります。また、かかりつけの獣医さんから説明を受けた時に理解がし易くなるかもしれません。
人間の医療も獣医療も、医学の進歩のために日々研究に尽力している方々、それらを使って治療してくださる医療関係者の方々への感謝を改めて強く感じます。
《参考URL》
https://www.petmd.com/dog/pet-lover/4-ways-veterinary-science-has-advanced-past-10-years
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6741827/
https://www.aaha.org/your-pet/pet-owner-education/ask-aaha/laser-therapy/