コロナ禍の動物保護施設の運営について調査
コロナ禍によるロックダウン中に新しくペットを迎えた人は多く、世界の多くの地域で一時的なペットブームが起きたことが知られています。この現象はアニマルシェルターや、動物保護団体にも大きな影響を及ぼしました。
パンデミックの初期にはアメリカでも都市機能の閉鎖が多く実施され、動物保護施設でも一般来場者受け入れの中止や、スタッフやボランティアの数を制限することを余儀なくされました。
そのような状態で保護動物の世話を行うため、多くの保護施設や団体が預かりボランティアのプログラムの割合を高くしました。
このような状態をよく知るため、アメリカのアリゾナ州立大学とバージニア工科大学の研究者チームが、パンデミックの初期に動物保護施設が保護犬の預かりボランティアのプログラムをどのように利用したのか、またその成果はどのようなものだったかについての調査を行い結果を発表しました。
初めての預かりボランティアの人々の傾向
この研究では全米19のアニマルシェルターのデータを使って、パンデミックの最初の4ヶ月(2020年3月から6月まで)の保護犬の譲渡率を測定しました。
データ分析の他に各施設や団体のスタッフへのインタビューを行い、預かりボランティアプログラムの実践方法、人的資源や財源の状態などについてより詳しい情報を得ることができました。
一方リソースが豊富な団体は、近隣住民に対して預かりボランティアの募集を実施しており、預かりボランティアの大半が初めてプログラムの参加した人たちでした。
犬の保護施設で働いていたり、ボランティア経験のある人の大半は自宅で犬を飼っています。一方初めて預かりボランティアに参加した人は犬を飼っている率が低く、そのような犬を飼っていないボランティア初心者のうち77%が、預かった犬をそのまま家族として迎え入れていました。
また、初めての預かりボランティアの人のうち、2頭目の犬の預かりをした人は4分の1以下でした。
預かりボランティアが預かった犬を迎えることは歓迎されない傾向もあるのですが、研究者は「犬を飼っていない預かりボランティア初心者を最初から譲渡希望者としてカウントして対応することで、ボランティアの研修コストを抑えたり譲渡率のアップにつなげられる可能性がある」としています。
譲渡率の高い団体の預かりプログラム運営
犬の譲渡成立までのスピードが速く譲渡率の高い施設や団体のプログラム運営にはある共通点が見られました。それは譲渡希望者が預かりボランティアの家庭に訪問して犬と面会できるというものです。
希望者と犬との面会をシェルターに限定している場合と比べて、預かり家庭で犬での犬との面会ができる場合は譲渡までの時間が30%以上も短縮されていました。
これはシェルターの環境は犬にとってストレスが多く、快適な預かり家庭からシェルターに連れて来られてストレスを感じて表情や行動に影響することがまず考えられます。
反対に普段生活している預かり家庭での面会は、譲渡希望者が犬と自宅で過ごすイメージを思い浮かべやすく、犬もリラックスして本来の姿を見せているからではないかと考えられます。
また譲渡希望者の多くは、施設や団体のスタッフよりも預かりボランティアの意見をより信頼する傾向があると研究者は指摘しています。このように譲渡希望者が預かりボランティアにアクセスできる方法を作ることは、譲渡率アップに役立つ可能性があります。
まとめ
パンデミックの初期にアメリカの動物保護施設で増加した預かりボランティアのプログラムについて調査した結果をご紹介しました。
初めて預かりボランティアをする人の大半が犬をそのまま家庭に迎え、次の預かりボランティアには戻って来ない傾向について改善方法を考えたり、憤ったりするのではなく「それはそれで最初から考慮して受け入れると、結果的に保護犬の譲渡率のアップにつながる」という柔軟な姿勢は、保護犬に幸せな家庭を見つけるという本来の目的に沿っている感じがします。
《参考URL》
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.862590/full