犬を迎えた日の気持ちを思い出して
「犬に優しくしたいのにできない」と悩んでいませんか?そのような悩みを抱えて苦しんでる飼い主さんは実は少なくありません。
なぜ優しくできないのでしょうか。その理由の多くは、しつけがうまくいかず犬との良好な関係を築けないことにあるように感じます。
では、どのようにしたらそうした悩みを解決できるのでしょう。しつけをひたすら頑張るしかないと思いますか?もしそう考えているようでしたら、ぜひ一度しつけに対する考えを頭の横に置いてもっと純粋に考えてみてください。
あなたが犬を迎えた日、迎えようと思ったその瞬間の気持ちを思い出してみてください。
その当時、あなたはその子を見てこのように思いませんでしたか?
- かわいい
- 守りたい
- 可愛がりたい
- 幸せにしたい
- 存在が癒やされる
そこには優しさと愛情で溢れた気持ちしかなかったのではないでしょうか?
もちろん、それだけではなく「迎えるならしつけもちゃんとしなきゃ」という気持ちもあったとは思いますが、少なくとも「傷つけてやろう」「痛めつけてやろう」という思いはなかったはずです。
しかし、「しつけをしなければ」という思いはいつの日か「言うことを聞かせる」という支配的な思考にすり替わり、あなたも犬も決して幸せではない状況になってしまったのではないでしょうか。
あなたは犬を支配したいのではないはずです。あなたは犬と楽しく過ごすために、ただルールを教えたいだけですよね?
犬との関係は接し方ひとつ
犬との関係の築き方というのは実はすごくシンプルですが、その接し方一つで幸にも不幸にも簡単になってしまいます。そして、犬との良好な関係を築くためには、「優しさ」で満たしてあげる以外にありません。
では、その「優しさ」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
毎日たくさんの写真を撮ること?
高級なフードや手作りの食事を用意すること?
おやつを与えること?
たくさん抱きしめたり撫でたりすること?
かわいいね、と優しい言葉をかけること?
散歩に行くこと?
まず定義として「動物に優しく」というのは、人間がどう感じるかではなく、動物にとってどうなのか、だと認識してください。つまり動物福祉(アニマル・ウェルフェア)に則って環境を提供することが大事だ、ということです。
- 飢えと渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み病気傷害からの事由
- 恐怖や抑圧からの自由
- 本来の行動がとれる自由
これらは、人間が管理する動物の基本ニーズであり、基本となる動物福祉の評価として国際的に定められている基準です。
もちろんこれは犬にも適用される評価基準です。どうでしょう?これらの文言から、犬に対してどのように接するべきか見えてきませんか?
少なくとも、『犬が怯えたり苦しんだりというようなネガティブな状況に置かれてしまわないように努力しなければいけない』ということは理解できるのではないかと思います。すなわち、もしこの動物福祉に反した対応を犬にとってしまえば、それは犬を確実に苦しめ不幸にしていることになるのは確実、ということです。
「しつけのため」と言って大きな音をだして驚かせたり、首輪にリーシュをつけて「だめ!」と首にショックをかけたり、あなたに助けを求めて鳴いているのに無視したり…。それは動物福祉に則っている行為といえるでしょうか?
動物福祉というのは動物の幸福を評価するための基本的概念です。それに反するということは確実に犬を不幸に近づけているということ。
犬が幸せであるか不幸であるかはあなたがどのように感じているかではなく、犬自身がどのように感じているか、でしかありません。つまり、あなたの犬への関わり方一つで幸福にも不幸にもなるのです。
犬のしつけは「優しい方法」一択
「犬のしつけ」というと、どうしても「犬を変えよう」「犬をコントロールしよう」というイメージが先行してしまいがちですが、実のところそうではありません。
まず犬との信頼関係ができていなければ、そもそも犬をしつけようなどということはほぼ不可能。そしてその信頼関係は、犬に厳しく辛くあたることでは決して叶うことはありませんし、むしろ関係性としてはマイナスをたどる一方です。
犬と信頼関係を築きたいのであれば、ただ優しく接すること、そしてその優しさは動物福祉に則っていることが大切です。また、動物福祉に則るということはその動物種について学び、知ることであり、それは行動学を知ることにつながります。
例えば、犬と信頼関係を築くことができれば犬のほうからあなたの近くにいてくれるようになるので、しつけの基本といわれている「おいで」も教えるのは難しくありません。お散歩で引っ張らないようにしたいのであれば、まずは犬が引っ張る原因を知り引っ張る必要がないように環境を整えればいいのです。
また同時に「吠えさせないためにしつけを」という声も耳にすることがありますが、これは犬という動物をまだ理解できていない可能性があります。
犬という動物は吠えて当たり前です。もちろん、だからといって無闇に吠えさせるのも人間社会では困ったことになってしまいますから、「吠えてはいけない」ではなく、吠える必要がないことや吠える代わりの方法を犬に教えましょう。
このように、「犬をしつける」ということは、犬という生き物を知ったうえで犬が犬らしくあることを認め、人間社会にとって適切と考えられる行動を変わりに教えることです。そして、それを教える方法として褒める叱るのメリハリでは信頼関係を築けないどころかマイナスになるだけなので、動物福祉に則った優しい方法でなくてはなりません。
まとめ
「犬を迎えたらしつけなければいけない」というのは、犬と人間社会で共存するために必要不可欠だからこそみんな必死になるのだと思います。
もちろんそれ自体は悪いことではありませんし、共存していく上では素晴らしい考えや取り組みです。ただし、そのために犬を苦しめたり困らせたりするのは決して褒められたものではありませんよね。また、それは動物福祉に反している行為なので、犬は決して幸福である状態とは言い難いでしょう。
犬をしつけようという気持ちは大変素晴らしいですが、まずは、犬に優しくしたいのか、それとも傷つけたいのかを自問自答してみてください。
決して傷つけたいという人はいないと思います。