愛犬の食事の選択についての調査
愛犬の毎日の食事は健康に直結するものとして、多くの飼い主さんにとって悩ましい問題ではないでしょうか。
利便性や栄養面での安心感からメインとなっているのはやはり市販の総合栄養食のペットフードですが、生肉食や手作りタイプ、家庭での手作り食など他の選択肢に対する関心も相変わらずの高さです。
愛犬にとってどんなタイプの食事を与えるのがベストなのか?頭を悩ませたり迷ったりする飼い主さん、信念を持って愛犬の食事を選択している飼い主さんと、食事に対する姿勢もいろいろです。
この度イギリスのリバプール大学の獣医学部の研究者チームが、飼い主が愛犬が食べるものを選択する理由や信念について調査を実施しました。この調査では生肉食とそれ以外の比較に焦点を絞り、飼い主の意識が調査されました。
食事のタイプや選択の理由をアンケート
調査はインターネット上に6週間にわたって公開されたアンケートによって実施され、アンケートの告知はSNS、クラフツ・ドッグショー会場、獣医学ニュース出版社や生食獣医協会への文書によって行われました。
アンケートの概要は、愛犬にどのようなタイプの食事を与えているかとその理由についてというものです。質問は選択式、5段階評価、自由記述方式が組み合わせられており、参加者は全員が匿名で回答しました。
質問項目はどんなタイプの食事を与えているかの他に、フードを選択する時に参考にしたり影響を受けるのはどんな情報か、与えているフードが愛犬の健康に及ぼす利点とリスク、フードの選択による公衆衛生へのリスクの認識などが含まれていました。
また一般的なドライや缶詰のドッグフードを与えている場合と、生肉食を与えている場合で質問項目が分かれる箇所があり、生肉食の場合にのみ食事の準備や保存の方法、衛生管理についての質問が設定されていました。
このようにして合計1,831名の飼い主が3,212頭の犬の情報について回答を寄せました。
生肉を与える理由やリスク認識、食事のための情報源
アンケートを集計した結果、回答者の49.9%にあたる915名が愛犬に生肉食を与えていると回答し、50.1%の916名が生肉食以外の食事を与えていました。見事に半々の結果です。
ただし、「生肉食を与えている」に分類されるのは「週に1回以上生肉を与えている」という条件に当てはまる場合で、生肉食以外というのは「加熱した食事のみ(ドッグフード、手作り食)を与えている」という場合です。
そのため「生肉を与えている」という人の中にはドッグフードと併用している人も多く含まれています。
愛犬に生肉食を与えている傾向が強い因子は次のようなものでした。
- 多頭飼い
- 大型犬または中型犬
- 作業犬および繁殖犬
- 犬種(ジャーマンシェパード、ボーダーコリー)
- 不妊化手術をしていない
- 年齢が低い
生肉食を与えている理由は次のようなものが挙げられていました。
- 皮膚、被毛、歯、消化器など多くの面で健康に良い
- 犬にとってより自然である
加熱調理した食事のみを与えている場合の理由は、利便性、衛生上の問題が挙げられていました。
生肉食を与えている飼い主は、生肉食が健康上のリスクになると考えている人はほとんどいませんでした。反対に、加熱した食事を与えることがリスクになるという回答も目立ちました。
加熱調理した食事のみを与えている飼い主は「生肉を与えることは異物や骨の破片にリスクを感じる」と答えた人が約65%いましたが、生肉食を与えている飼い主では同じリスクを感じている人は2割を下回っていました。
生肉食のリスクのうち寄生虫や細菌が公衆衛生や周囲の人間に及ぼすリスクについて、生肉食を与えている飼い主は「全く認識していない」、または「多少はある」という回答が多かったのに対し、加熱食の飼い主は「リスクがある」という回答が多くなっていました。
生肉食を与えている飼い主の約8割は人間の食事と同じ場所で犬の食事を準備していましたが、手洗いや調理器具の洗浄には注意を払っていました。
犬の食事に関する情報源に関して、生肉食の飼い主は友人やソーシャルメディアが大きな割合を占めており、かかりつけの獣医師や獣医学栄養士への質問や相談をする人は少ない傾向がありました。
まとめ
愛犬に与える食事について、生肉食か加熱食か(市販のフードを含む)で分類して、選択の理由やリスク認識について調査した結果をご紹介しました。
犬の食事の選択に影響をあたえる要因は数多く複雑です。また生肉食の飼い主と加熱食の飼い主では、リスクや情報源についての認識が大きく違うことも明らかになりました。
生肉食のリスクを明確に数値化するためにはさらに調査が必要とのことですが、健康と安全対策に関する正確な情報を、生肉食を選択した人々が信頼している適切な媒体を通じて発信することの重要性もまた明らかです。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.prevetmed.2022.105741