指示していないのに「オテ」をする?
ある犬関連雑誌が2018年に行った読者アンケート調査で、74.9%の飼い主さんが「愛犬がよく前足で飼い主に「ちょんちょん」としたり「ちょこん」とする仕草を見せる」と回答しています。つまり、飼い主さんが「オテ」という指示を出していないのに、愛犬が自分から進んで飼い主さんにオテのような仕草をすることが多いということが分かります。
実は、多くの犬が前足で飼い主さんに触れるような仕草をよくすることから、「オテ」は犬にとっては覚えやすい芸の代表だともいわれているようです。
もちろん、「オテ」はしつけというよりも芸の一種のため、飼い主さんが愛犬に教えなくてはならない必須コマンドではありません。そのため、「オテ」をマスターしていない犬もいることでしょう。「オテ」をマスターしているか否かに関わらず、飼い主さんが指示を出さなくてもオテをする犬が多いのは、なぜなのでしょうか。
犬が指示をしていないのに「オテ」をするときの心理
犬が自分から飼い主さんに近寄り、前足で「ちょんちょん」としたり膝などに前足を「ちょこん」と乗せたりする仕草は、特に子犬によく見られる仕草だといわれています。そして、これは相手に働きかける時に行う行動だと解釈されています。つまり、相手に対して何か要求がある時に、それを伝えようとして気を引くために行う仕草だと考えられているのです。
もちろん、飼い主さんの気を引きたいのであれば、吠えてアピールすることも出来るでしょう。しかし、吠えると飼い主さんが嫌がることも多いため、犬が人間との暮らしの中で自然と編み出したアピールサインが、「自らオテをしに行く」という行動なのかもしれません。
では、指示を出していないのに愛犬が「オテ」をした時の具体的な心理について、代表的だと考えられているものをご紹介しましょう。
1.退屈だというアピール
まず多いと思われているのが、退屈しているというアピールです。せっかく飼い主さんが同じ家の中にいるのに、自分以外のことに注意を向けていて、寂しいし退屈しているということをアピールしているのです。
在宅ワークで家にいる時間が増えたものの、PCの前で仕事ばかりしている飼い主さんは、身に覚えがあるのではないでしょうか。「ねぇ、放っておかないでこっちを向いてよ!」、「ちょっとはかまってよ!」、「そろそろ一緒に遊んでもいいんじゃない?」といったところでしょうか。
2.具体的な要求があるというアピール
飼い主さんに対して何か具体的にして欲しい要求がある時に、それを伝えようとして行うと考えられています。前足で飼い主さんの膝を「ちょんちょん」とつつき、飼い主さんが自分に注意を向けてくれたら、別の仕草や表情、行動で具体的な要求を示すという方法です。
「ねぇ、トイレが汚れてるんだけど…」、「ちょっと背中がかゆいんだけど掻いてくれない?」などでしょうか。飼い主さんが自分を見てくれたら、すかさずにトイレまで誘導しようとしたり、背中を向けたりと、新たな行動を示してくる場合が該当すると思われます。
3.催促のアピール
習慣化している恒例行事の時間が近づいたことを知らせようとしている時にも、そっと近づいてきて前足で飼い主さんをちょんちょんと突くような行動をすると考えられています。毎日の行動がルーティーン化していて、いつも同じ時間に食事をしたり散歩に行くといったご家庭で見られる行動です。
「そろそろ散歩の時間だよ。早く行こうよ!」、「いつもならおやつの時間じゃないかな?」などといった感じでしょう。これは愛犬の仕草を見ると同時に、「いつも○○している時間かどうか」といったことで判断してあげましょう。
まとめ
「オテ」は、しつけというよりも芸の一種なので、必ずしも愛犬に教えなければならないコマンドではありません。そのため、「オテ」をしつけられていない犬もいるはずです。にもかかわらず、犬は何も指示されなくても、自ら飼い主さんに近寄って、オテのような仕草をすることがあります。
後ろから近寄ってきた人が、声をかけずにその人の気を引こうとした場合に行う行動が、肩を叩くというものです。犬が自分から近寄ってきて、自らオテをするように前足で飼い主さんの身体をちょんちょんとつついたり、前足を膝などにちょこんと乗せたりする行動は、この肩を叩く行動と同じような意味合いを持つようです。
愛犬に自主的なお手をされた場合は、愛犬が飼い主さんの注意を自分に向けさせたいときだと考えて良いでしょう。そして、その時の様子や愛犬の次の仕草、時間帯などから、愛犬の要求を汲み取ってあげてください。
なお、「オテ」はしつけではなく芸の一種ですので、必ず教えなければならないコマンドではありません。しかし、「オテ」と「オカワリ」(オテの時とは反対側の手を出させる)を教えておくと、爪切りがしやすくなるという利点もありますので、教えておいて損はないと思います。