犬の存在は周囲からの印象に影響する?
人が1人で歩いている時と、同じ人が犬と歩いている時とで周りの人に与える印象が変わるというのは、多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか。
過去にも多くの心理学の研究者が同行している犬によって好感度が上がったり、近寄り難く感じられたりするというリサーチ結果を報告しています。
このたびスペインのハエン大学の心理学の研究チームが、犬の存在とサイズが周囲の人間に与える印象や感情にどのような影響を与えるかを調査した結果を発表しました。
ヨーロッパの多くのメディアでも話題になっている興味深い結果についてご紹介します。
男女のモデルと小型中型の犬で印象を評価
この研究では296人の女子大学生が調査に参加しました。また調査に使用する画像を作成するために男性と女性の俳優各1名、ワイヤーヘアード・ダックスフンドに似た小型雑種犬1頭、ポルトガル・ポデンゴに似た中型雑種犬1頭が採用されました。
この犬たちは比較的珍しい外見をしているため「子供の頃飼っていた犬に似ている」とか「こういう犬に噛まれた経験がある」といった先入観や偏見を持たれにくいという理由で選ばれました。
研究チームは、男性単独、女性単独、男性と小型犬、男性と中型犬、女性と小型犬、女性と中型犬の組み合わせで、昼間の明るい都市の公共空間(ポジティブな状況)、または薄暗く静かな夜道(ネガティブな状況)で撮影した写真を用意しました。犬は常にリードでつながれており、俳優の顔にはモザイクがかけられていました。
女子大学生たちは「あなたが1人でいる時にこの写真の状況でこの人が自分に向かって歩いてくるところを想像してください」という設定で、これらの写真を見て感じた印象を「肯定または否定」「状況を制御できるという感覚」「気持ちの穏やかさ」「安全の感覚」の項目で評価しました。
犬ありと犬なし、感じた印象評価を集計した結果
集計した回答から参加者は、小型犬でも中型犬でも犬がいる場合に「より肯定的で、状況を制御できるという感覚がより強く、より穏やかな気持ちで、安全である」と感じていたことがわかりました。
これはネガティブな状況でも同じで、犬の存在そのものが肯定と安全の感覚をもたらしていました。
また小型犬はほとんど全ての状況で、中型犬よりも強い肯定的な感情反応とより高いレベルの安全の感覚を示していました。
興味深いことに「昼間の明るい都市の公共空間」というポジティブな状況では、小型犬の効果がより強く示されました。この点は犬の存在の効果を評価する際に今後考慮しなくてはいけない点として挙げられました。
まとめ
約300人の女性を対象にした調査で、男女それぞれ単独、小型犬を連れている、中型犬を連れているという写真を比較して感情や印象を質問したところ、小型でも中型でも犬を連れていると肯定的で安全な印象を与え、小型犬ではその傾向がより強かったという結果が出たことをご紹介しました。
この調査結果はさまざまなメディアで取り上げられ「デートアプリのプロフィール写真は小型犬と撮るのをお勧め」などと紹介されています。あまりに取り上げられると小型犬を使って悪用する人が出るのでは?と心配になってしまうくらいです。
犬と一緒にいる人に対しては何となく心のハードルが低くなる気持ちはよくわかるのですが、皆様くれぐれもお気をつけください。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.jveb.2022.07.005
https://www.telegraph.co.uk/news/2022/08/09/size-matters-men-using-dog-win-womans-heart-why/