実験動物救済のための州法が成立
研究用の実験動物については、日本も含め世界の多くの国が動物実験の国際原則である『3R』に配慮して扱っています。3R原則とはReplacement=代替法の利用、Reduction=使用動物数の削減、Refinement=苦痛軽減を中心とする飼育や実験方法の改善を指します。
このたびアメリカのマサチューセッツ州において、もうひとつのRが実験動物の扱いに加わりました。それはRescue=保護救済のRです。
同州で犬や猫を使用している研究実験施設に対し、研究機関が終了した後は健康な動物をコンパニオンアニマルとして譲渡することを義務付けるという法律が2022年8月に成立しました。
研究実験に使用される犬はその穏やかな気質と扱いやすさからビーグルが大多数を占めているため、この法律はビーグル法という愛称で呼ばれています。
アメリカ全体の連邦法を上回る内容
ビーグル法の法案は2022年に州議会で可決し、8月に州知事によって署名され成立しました。これによってマサチューセッツ州は同様の州法を持つニューヨーク州やカリフォルニア州など12州に加わることになります。
アメリカ全体の連邦法では、研究施設における実験動物の飼育と使用についての規制はありますが、研究終了後の保護には触れていません。そのため研究の期間が終了すると犬や猫は安楽死処分となってしまうことが多いそうです。
マサチューセッツ州や先行の12州の州法はこの連邦法の規制を上回る内容となります。その内容とは、研究機関は犬や猫などの実験動物が研究に必要でなくなり、健康で公衆に対して危険を及ぼさないと判断した場合、動物保護施設やレスキュー団体を通じて又は直接に譲渡先を決めなくてはならないというものです。
研究施設とレスキュー団体の連携にも柔軟性
マサチューセッツ州の研究施設で飼育されている動物は犬だけで約9,000頭いると言われています。そのため地元の動物保護施設やレスキュー団体との協力や連携は不可欠なのですが、この法律ではその部分に柔軟性を持たせています。
「研究施設は特定の団体や保護施設から動物を提供するよう強制されることはない」反対に「保護施設やレスキュー団体は研究施設から実験動物の受け入れを要求されることはない」と定められています。
例えば、研究施設で犬の世話をしていた人や研究員が役目の終わった犬や猫を自宅に引き取りたいと考えた時に保護施設やレスキュー団体を通す必要はないですし、保護施設に動物を受け入れる余裕がない時には断ることもできるということです。
この細やかな対応は、特定の研究施設とレスキューグループの不健全な関係を防止するためにも重要です。
まとめ
アメリカのマサチューセッツ州で、研究施設で実験に使われていた犬や猫を役目が終わった後はコンパニオンアニマルとして譲渡することを義務付ける法律が成立したというニュースをご紹介しました。
研究施設での生活は、苦痛のないように工夫されていたとしても退屈で刺激のないものです。生涯の前半をそのような環境で暮らしてきた動物たちが家庭に迎えられて愛情を受けることができるようになるのは素晴らしいことですね。
ビーグル・フリーダム・プロジェクトという活動は、アメリカ全体の連邦法でも同様の規制を課すように議員への呼びかけや署名運動を継続して行っています。アメリカ全体ではこの州法のような例はまだ少数派ですので、連邦法への拡大はぜひ実現してほしいものです。
医療や医薬品開発において、完全に動物実験をなくしてしまうことは現在はまだ難しい段階です。せめて役目を終えた動物たちが幸せな再出発をできるよう、日本も含めた多くの国が取り組んでほしいと思います。
《参考URL》
https://malegislature.gov/Bills/192/H901
https://bfp.org/state/