犬が多飲多尿になる原因とは
犬が多飲多尿になってしまう原因には、以下のようないくつかの理由が考えられます。
1.膀胱炎
膀胱炎とは、膀胱内に細菌が侵入する、結石ができるなどして膀胱粘膜に炎症を起こす病気です。多飲多尿ではないのですが、少量の排尿を頻回行う「頻尿」が見られます。他には、血尿や排尿時に痛そうにするなどの症状が見られ、若い犬でも発症することがあります。
膀胱炎にはいくつかの原因がありますが、犬では細菌感染による膀胱炎が最も多く見られます。細菌が尿道から膀胱内に入って増殖し炎症を起こすのです。糞便に由来する細菌が原因となることもあり、そのタイプは尿道と肛門が近いメスの方が起こしやすいそうです。
2.糖尿病
糖尿病になると、尿量が増え水もたくさん飲むようになります。
他にも、食欲はあるけど痩せていく様子が見られます。
3.腎臓病
尿の問題は、尿を作る器官である腎臓が関係することも多くあります。腎臓は体内の毒素を回収し、尿として排出する機能を担っています。
腎臓が正常に働かないと、その毒素を排出することができません。そのため、たとえば慢性腎臓病の初期には何とか毒素を十分に排出しようと、薄い尿がたくさん作られるようになり、体も失われた水分を求めて多飲になってしまいます。
4.内分泌系の病気
体内の水分バランスを適切に保つためには、様々なホルモンが関わっています。
体内の水分が減ると脳が感知し、脳や腎臓から尿量を減らす働きをするホルモンが放出されます。
そのような内分泌系に異常が起こると、多飲多尿が認められることがあります。副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、多飲多尿が見られる犬の代表的な内分泌疾患です。
5.子宮蓄膿症
子宮内で細菌感染が起こり、膿が溜まったり細菌が作る毒素によって様々な異常が見られる病気です。多飲多尿、嘔吐、下痢、陰部からの排膿などの症状が見られます。重症化すると、子宮だけでなく腎不全や腹膜炎など合併症を発症して命に関わることもあります。
筆者の先代犬のゴールデンレトリーバーは、7~8歳頃に生理が長いと感じて動物病院を受診したら、子宮蓄膿症と診断されました。その後手術を受け、11歳まで生きました。
犬は人間と違ってはっきりとした閉経がありません。高齢で避妊手術をしていないメス犬は、かなりの確率で子宮蓄膿症になりますので、出産予定がない犬には若いうちの避妊手術をお勧めします。
6.薬の副作用
ステロイド剤の副作用のひとつとして、多飲多尿が見られることがあります。病気をして薬を使い始めてから、犬がトイレを我慢できなくなるということは珍しくありません。
外でしか排泄しない犬であれば、外に連れていく回数を増やしてあげてください。あまりにもお漏らしが多い場合は獣医師に相談しましょう。
7.ストレス
同居犬が増える、家族のメンバーに変化があったなどが犬のストレスになることがあります。強いストレスが長期間続くと交感神経の興奮が続き、喉が渇きやすくなって水をたくさん飲むようになることがあります。
多飲多尿の判断の目安は?
犬の飲水量の目安
犬の一日に必要な水分量は、体重1㎏あたり約50(40~60)mlです。つまり体重10㎏の犬なら一日に500ml前後の水を摂取していれば問題がないということになります。
ただしこれには、食事に含まれる水分も含まれます。また、暑ければ水を飲む量が増えるのは自然なことで、問題ありません。
犬の飲水量のはかり方
犬が飲む水の量をはかるには、次のような方法があります。その日の天気や運動量によっても必要な水分量は変わるので、3~4日分以上の記録をつけて、飲水量が適切かどうかを判断しましょう。
- 24時間のうち何時に計測を開始するか、時間を決める
- 毎回計量カップで量を測ってから容器に水をいれ、交換する際には残っている量をはかり、差し引きして飲んだ量を算出する
- 24時間後に、飲んだ全ての量を合計する
多尿の判断の目安
一日の飲水量が、体重1kgあたり90~100mlを超えると、病的に飲水量が多いと考えます。 また、多飲多尿がある場合には次のような変化が見られます。
- トイレの失敗が増えた
- トイレシートにしみ込む量が多く薄い
- おねしょをする、夜間にもトイレに行くようになる
外でトイレをする子は変化がわかりづらいかもしれませんが、犬が早く散歩に行きたがる、何度も散歩に行きたがる、室内で漏らしてしまう、1回の排泄量が多いなどの異変が見られるでしょう。
まとめ
犬も人間も、体の半分以上は水分でできています。体内で毒素が作られてもきちんと排出されたり、細胞や臓器が正常に働けるのは適切な量の水分が体内にあるおかげです。
多飲多尿になっているということは、体内に適切な量の水分を保持するシステムのどこかに異常があるということで、治療が必要な病気にかかっていることが多くあります。
体にとって大事な機能が正常に働かなくなっていると、命に関わる事態に発展することもよくあります。おかしいと感じたらすぐに獣医師に相談し、治療を受けましょう。