1.狂犬病
致死率の高い病気として最も多くの人が思いつくのが狂犬病でしょう。狂犬病はまさに致死率100%、治療の見込みのない死の病です。その名称から犬だけに発症すると誤解されがちですが、狂犬病の原因である狂犬病ウイルスは人間を含むすべての哺乳類に感染・発症します。
日本は島国という地理的条件や厳しい検疫制度の導入といった対策の徹底から、世界でもまれな狂犬病清浄国となっています。とはいえ物流・人流の多い現代社会で油断は禁物です。
症状
狂犬病の症状には、あらゆるものに襲いかかるほど狂暴化する「狂躁型」と全身に麻痺症状が現れてよだれを垂れ流し衰弱する「沈鬱型」の2種類があります。狂躁型の場合であっても、狂乱状態の狂躁期を経て麻痺期に移行し、起き上がれなくなって1週間程度で死に至ります。割合としては狂躁型がほとんどです。
予防法
日本では狂犬病予防法に基づき、年に1回の狂犬病予防ワクチンの接種が義務付けられています。この地道なワクチン接種が日本を狂犬病清浄国たらしめているといっても過言ではありません。「日本で狂犬病なんて」と油断することなく、必ずワクチンを接種させましょう。
2.犬ジステンパーウイルス感染症
犬ジステンパーウイルス感染症は、ジステンパーウイルスに感染した犬のくしゃみなどを浴びたことによる飛沫感染、分泌物や排せつ物に触れたことによる直接感染、ウイルスが付着した食べものなどを食べたことによる間接感染によって感染・発症します。
特に1歳未満のワクチン未接種またはワクチンの抗体価が十分ではないパピー期の子犬が罹患することが多いのが特徴です。感染力の強い急性疾患ですが治療法はなく、致死率も極めて高い疾患です。
症状
初期症状は発熱や食欲不振、下痢などの軽いものが多いため風邪と勘違いして見過ごされがちです。しかし症状が進むと、発熱などの初期症状に加えて体重減少、大量の目やに、悪臭を伴う下痢・血便、呼吸困難などの異常が現れはじめます。鼻や肉球がカチカチになりひび割れたようになる症状を伴います。
ジステンパー特有の神経症状が現れるのは末期で、興奮状態に陥る、無意味に回転する、けいれん、下半身の麻痺などが代表例です。
予防法
年に一度、動物病院で混合ワクチンを接種させているという家庭がほとんどでしょう。実際、多くのドッグランや宿泊施設でも、狂犬病予防接種とワクチン接種が施設利用の条件とされています。
5種混合、7種混合など種類は動物病院によってさまざまですが、ジステンパーウイルスのワクチンもこの混合ワクチンの中に含まれています。ジステンパーウイルス感染症は年に一度のワクチン接種で十分に予防が可能です。
3.進行性脊髄軟化症
何らかの原因で脊髄の一部に障害を負った場合に、その部分から脊髄が壊死を起こし、更にその壊死が頭側及びしっぽ側のそれぞれに向かって徐々に進行していく病気です。
最終的には脊髄壊死による呼吸器系神経の麻痺により、呼吸ができなくなって死に至ります。
あまり聞きなじみのない病気ですが、発症してしまうと有効な治療法が確立されていないうえ、先に紹介した2つの病気と大きく違うのは明確な予防方法もないという点です。
ごくまれに壊死の進行が止まる例もありますが、ほとんどの場合には壊死の進行により1週間から10日以内に死に至る恐ろしい病です。
症状
脊髄損傷による歩行不能が初期症状としては挙げられますが、その時点では進行性脊髄軟化症とは診断できません。元気や食欲がなくなる、発熱、嘔吐、知覚過敏などの症状とともに全身の麻痺が徐々に進行していき、最後は呼吸不全で亡くなります。
予防法
すでにご紹介した通り、この病気に予防方法はありません。しかし進行性脊髄軟化症は何の前触れもなく発症するものではなく、脊髄の一部に障害を負ったことがきっかけで発症します。
事故による骨折などで脊髄を損傷した場合も考えられますが、最も多いのは重度の椎間板ヘルニアを患っている場合です。また、急性ヘルニアの緊急手術後に発症・亡くなってしまうパターンもあります。あえて予防法と言うなら、脊髄へのダメージを避けることくらいしかありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?「もし愛犬が発症したら」と怖くなってしまった人もいるかもしれませんが、ご紹介したうちの2つはワクチンによって確実に予防ができる病気です。愛犬に無用なリスクを背負わせないためにも、確実な予防行動をとるようにしましょう。