英国での調査結果、シワの多い犬種は皮膚の感染症に特に注意を!

英国での調査結果、シワの多い犬種は皮膚の感染症に特に注意を!

たるんだ皮膚や顔のシワが特徴の犬種に多い皮膚炎についての統計結果が発表されました。飼い主の知識、適切な繁殖などの重要性が問われる結果です。

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犬種特有の皮膚のたるみの部分に起きる皮膚疾患

後ろ足で耳を掻くフレンチブル

皮膚のトラブルは犬の疾患の中でも常に上位に来るもののひとつです。その皮膚疾患のひとつに、間擦疹(かんさつしん)という皮膚のたるみが作るヒダやシワの部分に起こる細菌感染症があります。別の呼び方では皺壁性(すうへきせい)皮膚炎とも言います。

ヒダやシワの間の皮膚の摩擦、湿気、通気性の悪さによって細菌の感染が発生し、炎症、化膿、潰瘍ができたりして痛みを伴います。

この間擦疹(かんさつしん)について、イギリスの王立獣医科大学が動物病院で受診した犬についての統計の結果を発表しました。

同大学では、イギリス国内で獣医療を受けた動物のデータを集計するVetCompassというプログラムを運営しています。このプログラムに参加しているイギリス全国の動物病院の臨床記録が匿名化されたデータベースとなっています。

この度の調査では90万頭以上の犬の臨床記録の中から間擦疹(かんさつしん)と診断されたものを抽出し、犬種などの犬の属性が分析されました。

たるみやシワに起こる皮膚炎についての統計

パグの口元の皮膚炎

間擦疹(かんさつしん)と診断された犬は、全犬種で見ると300頭に1頭の割合でした。1年間に病院で受診する犬のうち0.37%です。

しかし当然ながら、皮膚のたるみや顔のシワがスタンダードの犬種では間擦疹(かんさつしん)と診断される割合が高くなりました。短頭種の犬では間擦疹と診断された犬は1.0%で、中長頭種では0.3%でした。たるみやシワのない犬種で診断された犬は肥満が主な原因でした。

間擦疹に罹患した割合が高かった犬種は以下の通りです。倍率はリスクを雑種犬と比較した数字です。

  • イングリッシュブルドッグ 6.1%  49.1倍
  • フレンチブルドッグ 2.7%  25.9倍
  • パグ        2.1%  16.3倍
  • バセットハウンド  2.0%  10.7倍
  • コッカースパニエル 1.3%   7.5倍
  • シャーペイ     0.9%   6.4倍 
  • キャバリアキングチャールズスパニエル 0.9% 4.5倍
  • ボクサー      0.9%   4.6倍

間擦疹と診断された犬の中での下位の犬種は以下の通りで、数字は雑種と比較した場合のリスクです。

  • ヨークシャーテリア 0.1倍
  • ボーダーコリー 0.1倍
  • ジャックラッセルテリア 0.5倍
  • ラブラドールレトリーバー 0.6倍

間擦疹が見られた体の部位別では次のとおりでした。涙や唾液でぬれることが多い部分に起こりやすいことがわかります。

  • 口まわり 36.8%
  • 額など顔のしわ 22.0%
  • 外陰部 14.2%
  • 鼻のしわ 9%
  • 尻尾 5.8%
  • 眼の周囲 3.5%

最も多く報告された臨床症状は

  • 皮膚の赤み 34.2%
  • 炎症 24.2%
  • 皮膚が湿っぽい 20.6%
  • 悪臭 18.6%
  • 疼痛 18.0%

獣医師やケネルクラブが心配していること

ブルドッグの顔のシワを拭く飼い主

イギリスの獣医師団体は短頭種の犬の人気の高まりと共に、不健康な個体の増加と飼い主の知識不足に警鐘を鳴らし続けています。今回の調査結果でもまた短頭種の健康問題が浮き彫りになりました。

しかし、この研究に資金を一部提供した英国ケネルクラブの健康福祉担当者は、間擦疹の診断が全体で0.37%、短頭種が1%という数字は実際よりも少ない可能性を指摘しています。皮膚のたるみの間に起こる皮膚炎を見つけることは簡単ではありません。

皮膚のヒダやシワの間に皮膚炎が起きることを飼い主が知らない場合、症状を認識せず治療を受けていないことも考えられるからです。またその場合、たるみやシワの間を毎日清潔にして乾燥させることの重要性も、認識されていないケースが多いのです。

この調査研究の著者自身も、皮膚の赤みや湿り気などは診察した獣医師が記録に残さないことも考えられるため、調査結果は実際に皮膚炎に苦しんでいる犬の数を過小評価している可能性があると述べています。

特に罹患数が多かったイングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグ、パグの犬種クラブは、過剰なたるみやシワを作り出す極端な選択繁殖は避けなくてはならないことに同意しています。

しかしこれらの犬種の人気の高まりと共に、悪質な繁殖業者が極端な特徴を持つ犬をどんどん生産している傾向を嘆いてもいます。

悪質な繁殖業者が増えるのは、犬種についての知識や覚悟を持たずブリーダーの精査もせずに犬を購入する人々がいるからです。

まとめ

伏せの姿勢のシャーペイの子犬

犬種の特徴として皮膚のたるみやシワを持つ犬は、間擦疹(かんさつしん)という皮膚炎に罹患するリスクが高いというイギリスでの調査結果をご紹介しました。

たるみやシワの多い短頭種の犬にとって湿度の高い日本の夏は、呼吸にも皮膚にもリスクが高くなります。きちんとした知識を持ってしっかりと観察すること、適切なケアをすることで大切な愛犬の健康を守ってあげてください。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-022-14483-5
https://www.rvc.ac.uk/vetcompass/news/beauty-isn-t-even-skin-deep-new-study-from-the-rvc-finds-that-flat-faced-dogs-are-at-the-highest-risk-of-skin-fold-dermatitis

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