犬は表情を使って意思疎通を行うことができる!?
『犬は人間と同じように、自分の顔の表情を使って感情を表現することができる』
これは、イギリスにあるポーツマス大学のジュリアン・カミンスキ博士らによる研究結果です。見知らぬ部屋に24匹の犬を入れ、その行動を観察するという調査が行われました。
人間が驚きや悲しみを表情によって表現するのと同じように、犬にも驚きや悲しみを表情で表現する能力を持っているということが明らかになったとされています。人間が自分の方を見ている時、犬は目を丸くすることで悲しみを表現し、舌を出すことで興味があるということを表現したのだそうです。
また、神経生理学者らの研究結果によると、知っている人の表情と知らない人の表情とでは、感情を見分ける能力があると明らかにされています。例えば、見知らぬ人が笑顔で「可愛いね~♡」と褒めてくれた時、(これは社交辞令の言葉だな)などということが犬にも分かってしまうということなのではないでしょうか。
人間の表情に合わせて犬の顔の動きも活発になる
ジュリアン・カミンスキ博士らの研究グループでは、次のような調査も行われました。
- 研究助手が犬に「顔を向けた状態」で食べ物を持っている
- 研究助手が犬に「背を向けた状態」で食べ物を持っている
このような時、犬はどのような表情で対応するのか、という内容です。
研究助手が犬に対して顔を向けている時と背を向けている時では、『顔を向けた状態で食べ物を持っている時の方が、犬の顔の動きが活発になった』としています。
私が何より驚いたのが、この研究結果に『食べ物を持っているかどうかは影響を及ぼさなかった』ということが明らかにされたことです。
食べ物を持っているから犬の表情がコロコロ変わったり、人間の表情をうかがったりするのだと思っていました。みなさんはどのように感じられましたか?
犬が人間の表情の中で最もよく認識できるのは笑顔である
メキシコ国立自治大学が行った研究結果によると、『犬は人間の笑顔を好む可能性がある』ということが明らかにされました。
論文の中では、次のように書かれています。
- 犬は人間の顔に細心の注意を払って行動している
- 視覚的な手がかりを使って飼い主の感情状態を認識している
- 犬の脳が人間の顔を処理する方法は不明である
- 犬が人間の顔を処理する候補として側頭皮質が挙げられる
研究者らによると、犬の側頭葉の一部が人間と同様であることを示唆しているそうです。どういうことかと言いますと、「犬も人間と同じように顔認識を行っている可能性がある」ということです。
人間の笑顔が好きな理由
犬は人間の幸せな表情を「特別なもの」と捉えているのではないかとされています。
(調査1)
- 笑顔の人間の写真を見せる
- 無表情の人間の写真を見せる
この調査では、笑顔の人間の写真を見た犬の脳の活動が増したことが分かったそうです。
(調査2)
- 笑顔の人間の写真を見せる
- 怒りの表情の人間の写真を見せる
- 恐怖の表情をした人間の写真を見せる
- 悲しみの表情をした人間の写真を見せる
この調査では、「笑顔」と「怒り・恐怖・悲しみ」とでは、笑顔の写真を見た時のみ脳の活動が増したそうです。そして、怒り・恐怖・悲しみの写真を見た時の脳の反応はどれも同じで、違いは見られなかったとしています。
つまり、笑顔は特別なものであり、怒り・恐怖・悲しみの表情はどれも似ているという捉え方をしているということなのではないでしょうか。はっきりと表情を見分けることや感情を読み分けることはできないのかもしれません。
まとめ
犬って本当によく飼い主の顔を見ていますよね。ジーッと見つめる視線を痛いほど感じることがあるのではないでしょうか。
飼い主がどのような気持ちでいるのか、今どのような感情を持っているのか、必死に読み取ろうとしているところなのかもしれません。
痛い視線を送っているけれど、飼い主がとくに表情を変えたわけではない時、なぜかスッと目を逸らしたりすることもありますよね。無意識に怖い表情をしていたのかもしれませんね。
《参考URL》
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/12228/
https://woofoo.jp/fido/dogs-brain-and-your-smiling-face/
https://woofoo.jp/fido/our-faces-in-the-dogs-brain/
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0149431