ペットから離れることが不安ですか?
ペットと分離不安と言えば最初に頭に浮かぶのは、お留守番の時に吠え続けたり物を破壊してしまう犬のことでしょう。そのような犬の分離不安に関する研究は何百と発表されており、対策グッズなどもさまざまな種類のものが販売されています。
一方「うちは犬よりも私の方が分離不安で」と半分冗談で口にする飼い主さんの声もよく耳にします。人間の場合、分離不安は赤ちゃんや子どもの重要な発達段階のひとつなのですが、程度によっては対策が必要な場合もあります。
アメリカの精神医学協会は、分離不安障害を診断カテゴリーのひとつとして正式に認定しました。
分離不安とは「愛着を持っている相手から離れることに対して持続的で強い不安や恐怖を持ってしまう状態」です。愛着を持っている相手がペットである場合にも当てはまるのでしょうか?
このようなペットに対する分離不安について、オーストラリアのアデレード大学の心理学の研究チームが飼い主へのアンケートを通して調査を行なって報告しています。
ペットに対する分離不安についてのアンケート調査
この研究ではペットに対する飼い主の分離不安の心理的背景が調査されました。調査の対象となったのはオーストラリアのペットの飼い主313人です。年齢は18歳から76歳で中央値は42歳、約9割が女性でした。
回答者は人間に対する分離不安、ペットに対する分離不安、ペットに対する愛着の度合い、社会的サポートの認知度の4つについて標準化された質問についてスケールを使って回答しました。回答はそれぞれスコア化されます。
集められた回答を分析したところ、はっきりとした傾向が表れていました。
ペットへの分離不安になりやすい人とは?
質問票への回答からは、分離不安になりやすい人には次のような傾向が見られました。
- 人間に対して分離不安のスコアが高い人はペットに対しても分離不安スコアが高い
- ペットへの愛着が強い人は分離不安スコアも高い
- 友人や家族など社会的サポートが少ない人は、分離不安スコアが高い
- 猫の飼い主は分離不安スコアが低く、犬の飼い主は高い
- 子どものいない飼い主はペットに対する分離不安になりやすい
ペットに対する分離不安を口にする人はたくさんいますが、研究という面では軽視されて来ました。実際にその症状が軽い場合も多いようです
しかし場合によっては深刻な心理的な障害になったり、二次的な障害が生まれることもあります。例えば実家のペットと離れて一人暮らしを始めた人、ペットと離れることが不安で治療のための入院を拒否する人などが挙げられます。
冗談めかして「私は愛犬に対して分離不安で」と笑っている人の中にも分離不安障害が潜んでいる可能性もあります。2022年に実施されたアメリカのペットの飼い主向けのアンケート調査では40%の人が「ペットを1日中家で留守番させることが不安だ」と答えていることからも、潜在的なペット分離不安の可能性が垣間見えます。
まとめ
ペットに対する分離不安になりやすい人は、人間に対しても分離不安の傾向が強く、ペットへの愛着も強く、友人など社会的サポートが少ないという傾向があること。犬の飼い主は猫の飼い主よりも分離不安になりやすいことなどの研究結果をご紹介しました。
このような研究が実施されることで、分離不安の傾向が強い人の特徴や傾向が明らかになり、考えられる弊害やどのような対策を立てるべきなのかが明確になります。
一般の飼い主としても、自分と愛犬の関係を考えるきっかけになるかもしれませんね。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.jad.2020.03.147
https://docs.cdn.yougov.com/nzp85cy9j8/crosstabs_Pets.pdf