名前と犬種の人気トレンドが示すもの?
人の名前はその人の生まれた時代の傾向を表しています。ある時代に人気のあった名前が、現在はほとんど見かけなくなったり、名前からその人の世代を何となく想像するというのもよくあることです。
これは英語圏の国でも同じで、時代によって名前のトレンドがあり、ある名前が人気のピークを迎えた後には次の世代で人気が急降下するという傾向も繰り返されています。面白いことに、これは巷で人気の犬種についても同じ傾向があるのだそうです。
このような現象から、アメリカのミシガン大学の進化生物学者が赤ちゃんの名前や犬種の人気の傾向を調べることで、人間の生態学的および進化的変化の理解につながるのではないかと研究結果を発表しました。
過去1世紀の名前と人気犬種を分析
研究者チームは過去1世紀にわたる新生児の名前のトレンドを調査分析しました。人気のある名前の変遷は一定の傾向が見られました。例えば、エマという名前は1800年代後半にピークを迎え、1900年代前半には急激に人気が低下したのですが、2000年台前半には最も人気のある名前のひとつに返り咲きました。
これはある名前が人気になるほど、次の世代の親がその名前をつける可能性が低くなるということです。自分の子どもにありふれた名前をつけたくないという親心ですね。
研究チームはさらに新生児の名前を調査したのと同じ方法で、アメリカンケネルクラブの犬種の登録データベースから過去の人気犬種の変遷を調査分析しました。その結果、人気犬種にも名前と同じようなトレンドのサイクルがあることが分かりました。
1940年代にはグレイハウンドが人気犬種で、1990年代にはダルメシアンが人気を集めました。現在ダルメシアンの登録数は1990年代の約10分の1になっています。ある犬種の人気がピークに達すると、人々は他人とは違う犬を手に入れたくなるということです。
日常生活の中で名前や犬種の人気が移り変わっていくことや、ブームが再来することは日常生活の中でも認識されますが、それがなぜ人類の進化と結びつくのでしょうか?
人気トレンドは遺伝子や生物の生き残り戦略に通じる?
研究者は『名前』や『犬種』という概念を遺伝子や生物に置き換えて考えられると述べています。
遺伝子や生物は生き残るための資源を求めて行動します。「子どものためにありふれていない名前をつけたい」という親心や「他人とは違う犬を飼いたい」と考える飼い主の心は『名前』や『犬種』という遺伝子や生物が生き残るための資源に当たります。
人々が同じ種類の『名前』や『犬種』をコピーし続けると多様性が低下します。しかし人間は名前についても犬種についても人気がピークに達すると、そのコピーをしたがらなくなります。これは自然淘汰の一種で、人々が新しい名前や犬種に意識を向けることで集団の多様性が高まります。
名前や犬種が巷に現れる頻度が高くなると淘汰の圧力が高まります。このような頻度依存の圧力は、遺伝子の多様性や免疫系の差など多くのことを決定する基本に通じます。
同じ種の生き物が皆同じ免疫系を持っていたら、同じ病気で絶滅するリスクが高くなります。生き物が皆同じ食性を持つと食資源はすぐに枯渇してしまいます。このようなことを避けて生き残るために集団の多様性は重要です。
人間はこれと同じことを名づけや犬種の選択でも行なっているらしいというのは興味深いですね。
まとめ
人の名前や犬種の人気トレンドが、人類の進化的変化を理解するモデルになるという研究結果をご紹介しました。
犬と暮らす上で直接役に立つ情報というわけではありませんが、繰り返される人気犬種のトレンドから、このような考察が生まれるというのはとても面白いことだと思います。
犬種ブームというのはあまり印象の良いものではありませんが、一定の犬種が人気になる時に問題なのは利益優先の乱繁殖や、準備をせずに安易に犬を迎える人間の行動です。これらのことも人間は進化を遂げないといけないですね。
《参考URL》
https://phys.org/news/2022-05-glimmers-evolution-babies-dog.html
https://www.nature.com/articles/s41562-022-01342-6