愛犬が老いるということ
近年では食生活や運動習慣、医療の発達など人と同様に犬の平均寿命も延びています。その結果、昔はそれほど目立たなかった「犬の老い」を飼い主が目の当たりにし、その対応方法がクローズアップされることが増加しています。
さて、犬が年老いるといったいどんな状態になるのでしょうか。「犬の老い」のサインをいくつかご紹介しましょう。
まず犬が老いてくると、見た目で全体に白っぽく、つやが失われたように見えるようになります。これは被毛に白髪が増え毛艶が失われることが原因です。ほとんどの場合口元や目元からこの現象が始まり、徐々に体全体に広がっていきます。
また犬は老いるとすぐ脚力が低下してきます。歩行の速度が遅くなったり、特にお尻から後ろの太ももの筋肉が削げ落ちてきたりして、運動自体をそれほど喜ばなくなっていきます。運動をしなくなるのでますます筋肉が落ちていき、後ろ脚がすっきり伸びずにお尻が落ち気味に見えるようになるでしょう。
また今までだったら小声で名前を呼んでも反応したのに耳が遠くなって呼んでも近くへ来なくなったり、呼ばれたのに怒って吠えるようになったりすることもあるでしょう。
このほか、食欲が落ちる、トイレの失敗が増える、白内障で目の奥が白っぽくなってきたなどの「老いのサイン」が見られ始めたら、飼い主としてどんなケアをしてあげたらよいのでしょうか。
老犬が幸せに暮らすためにできること
犬たちは人よりずっと早く成長し、そして老いていきます。自分の体の変化に一番戸惑っているのも犬たちです。
そんな老犬たちが幸せに暮らしていくために、飼い主ができることや心がけたい3つの条件を挙げていきましょう。
1.「できないこと」を叱らない
トイレや段差の上り下りなど、いままで簡単にできていたことが老いとともにできなくなることは犬にとってもショックなことです。我が家にいた老犬もトイレがうまくできなくなった時にものすごく動揺していました。
しかしこれを「できなかった」と叱ることはよくありません。「ちゃんとやろうとした、けどできなかった」という愛犬の気持ちを受け止めてあげてください。そしてちゃんとできたときは思い切りほめてあげてくださいね。
2.環境を老犬向けに整える
前述したように、足腰がどうしても弱くなるため、床で滑ったりつまづいたりして転びやすくなります。また白内障などでまぶしさを感じやすくなった犬は、視野の明るさによってはモノが見えずに机や障害物にぶつかってしまうことも。
愛犬が老いてきたなと思った場合、床にマットをしいて滑りにくくしてあげたり、なるべく段差や障害物となりそうなものを犬の生活スペースから取り除いてあげたりするとよいでしょう。
またおやつやフードも、高たんぱく低脂肪で消化吸収の良いシニア向けのものにしてあげることも忘れずに。
3.刺激を与えてあげる
私たち人間も、どんなに具合がよくなくてもずっと家の中に閉じこもっていては気分も鬱々として余計に具合が悪くなりそうな気がしてきませんか?
犬たちはお外が大好きです。お散歩に行けば外の風やにおい、風景、踏みしめた足裏の感覚など様々なことを味わっています。
これを「あまり歩かなくなったから」といって散歩の時間を減らしたり家に閉じ込めてしまったりしたら、犬にとって食事と同等なほどに楽しみにしていることを奪っているということになります。淡々とした室内の暮らしだけでは、犬たちの脳も急激に衰えてしまいます。
たとえ自力で歩けなくとも、抱っこやカートでお外に連れ出してリフレッシュさせてあげることは大切ですね。
まとめ
人も動物も等しく年を取り、老いていきます。自分の体の急激な変化を受け入れがたいのも、人・動物ともに変わらないでしょう。
不安な気持ちをもつ犬たちに大切なのは、飼い主の「受容」です。飼い主として犬たちの変化を受け入れ、その時必要なケアをしながら少しでも長く幸せに暮らしていけるとよいですね。