1.呼びかけや指示を無視する
犬の耳の聴こえが悪くなっていると、当然のことながら飼い主さんが名前を呼んだり、「おすわり」などの指示を出したりしても聞こえずに無視する形になってしまいます。
ご飯や散歩の前など、普段であれば名前を呼べば喜んで走ってくるようなシーンでも、反応しないときは「聞こえていないかもしれない」と考えてみましょう。
犬と飼い主さんが顔を合わせた状態であれば、飼い主さんの口の動きや表情、ちょっとしたボディランゲージから何を言われているか犬が読み取ることもあります。そのため、見えない場所から名前を呼んだり、犬の背後で大きな音を出してみたりしてみると、聞こえているかどうかを知ることができます。
ただし、いたずらの後に名前を呼ばれたときや、しつけの指示を出されたときだけ無視する場合は、「聞こえていても従わない」「聞こえないふりをしている」という可能性もあります。
食べものや遊びに関する犬が本当に喜ぶことや、雷や花火といった犬が怖がる音にも反応しないときは、聴力が落ちている可能性が高いと考えましょう。
2.警戒心が強くなる
家の中で過ごしているときや散歩しているときなど、ちょっとした刺激に対して驚いたり、過剰に怖がったりするようになったときは、耳が聞こえなくなっている可能性があります。
犬の聴覚は繊細で、様々な音を聞き分けることができるとされています。そのため、目には見えていないことなどでも、その場の状況などを音で察知したり、把握したりすることができます。状況判断を早めにできるので、これからどんなことが起こるかを予測することもできるのですが、聞こえなくなることでそうした予測もむずかしくなります。
このようなことから、様々なできごとが犬にとっては唐突に行われているように感じられてしまい、びっくりすることが増えるのです。それがくり返されることで「いつ何が起こるかわからない」という不安感を抱くようになり、警戒心が強くなってしまいます。
3.眠っている時間が長くなる
犬は1日の大半の時間を寝て過ごしますが、その多くは浅い眠りだとされています。そのようなときは、寝ながらも周囲の音や気配を感じ取っているので、気になる音がしたり人が近づいた気配がしたりすると目を開けて、まわりの様子を確認します。
しかし、耳の聴こえが悪くなると、寝ているときに周囲で鳴っている音や声などを聞き取れないので、ぐっすり眠ったままの時間が増えます。特に、老犬の場合は体力が低下しているうえに、耳の聴こえも悪くなりやすいので、1日のほとんどを寝て過ごすようになるでしょう。
病院で行う聴力検査の方法
犬の耳の聴こえに疑問を抱いたときは、動物病院で検査してもらうといいでしょう。老化現象で聞こえなくなっている場合は、特に治療の必要はありません。しかし、内耳炎など耳の疾患が原因で聴こえに影響している場合は、聴力を元に戻すためにできるだけ早く発見して対処する必要があります。
動物病院で耳が聞こえているかどうかを検査するとき、特別な機械などは使わず、実際に音を出して犬の反応を確かめる方法で行います。犬が見えない場所で音を出して、振り返ったり耳が動いたりするかということをチェックします。また、怪我や疾患の可能性を考えて、耳の内部や周辺も診察します。
また、聴覚が正常に働いているかを正確に確認する「脳幹聴覚誘発反応テスト(BAER)」という検査方法もあります。音を聞かせたときにどのような脳波の波形を描くかで聴覚に関係する神経の働きを確認する検査です。非常に専門的な技術となり、一般的な動物病院ではほとんど行われていません。
しかし、聴覚に関する検査であればBAERがもっとも正確です。
まとめ
犬にとって聴覚は、飼い主さんの呼びかけを聞き取りコミュニケーションを取るために必要なものです。さらに、周囲の状況を判断したり、危機管理をするためにも役立ちます。
しかし、老化や耳の疾患などが原因で、聴こえが悪くなってしまうことも。病気や怪我が原因の場合は、早めに対処することで聴覚も改善する可能性が高いので、耳の聴こえに違和感を感じることがあれば、動物病院で診察を受けるようにしてください。