犬の熱中症の『初期症状』5つ|応急処置や予防法、病院へ行く目安

犬の熱中症の『初期症状』5つ|応急処置や予防法、病院へ行く目安

犬も熱中症になります。人よりも犬のほうが熱中症になりやすく、重症化もしやすいです。重症化させないためには、飼い主さんが初期症状に早く気づき、処置を行うことが重要です。この記事では、犬が熱中症になっている時の『初期症状』のほか、やるべき処置や病院へ行く目安などについても紹介します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の熱中症とは?

暑そうなフレンチブルドッグ

犬の熱中症とは体温の調節機能が働かなくなり、高体温や脱水になることで全身にさまざまな症状が表れる病気です。

高温多湿の環境に長時間晒されることで熱中症を発症するのは犬も人も同じですが、犬のほうが発症しやすい要因を持っています。その要因とは、犬は全身が毛で覆われていること、発汗による体温調節ができないこと、高温となる地面の近くを歩くことなどです。

犬が熱中症を発症するとどんどん症状が進み、重症化すると嘔吐、下痢、血便、血尿、吐血、けいれん、チアノーゼ(口内や舌の色が青紫色になる)、意識消失などを起こします。処置が遅れると後遺症(脳や内臓の機能障害など)が出たり、命を落としたりすることもあります。

どの犬も熱中症になる可能性がありますが、特に注意が必要なのは

  • 短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、シーズーなど)
  • 北方原産の犬(シベリアンハスキー、サモエドなど)
  • 大型犬
  • 肥満の犬
  • 子犬
  • シニア犬
  • 持病がある犬(循環器疾患、呼吸器疾患、腎疾患など)

などです。

犬の熱中症の『初期症状』5つ

パンティングするコーギー

犬の熱中症は、重症化する前の初期症状に飼い主さんが早く気づいてあげることが大切です。では、どのような初期症状が見られるのでしょうか。

1.荒い呼吸をしている

犬は人のように全身に汗をかいて体温調節することができません。発汗による体温調節の代わりに、舌を出してハァハァと荒い呼吸(パンティング)をします。このようにして唾液の水分を蒸散させ、その気化熱で体温を下げるのです。

走ったり興奮したりしたときにも呼吸が荒くなりますが、この場合は比較的短時間でおさまります。苦しそうな荒い呼吸がなかなかおさまらない場合は、熱中症の初期症状かもしれません。

2.よだれを大量に出している

犬が暑さを感じ荒い呼吸をしていると、ずっと口を開けた状態になるため、よだれが出やすくなります。苦しそうな荒い呼吸に加えて、ダラダラとよだれを大量に出している場合は、熱中症になっている可能性が高いです。

3.歯肉や舌、目が充血している

歯肉や舌、目が充血するのも熱中症の初期症状のひとつです。重症化すると歯肉や舌が青紫色になります(チアノーゼ)。チアノーゼは血中の酸素が極端に不足していることを意味し、かなり危険な状態です。

4.落ち着きがなくなる

熱中症になると落ち着きがなくなり、うろうろしたりすることもあります。熱中症による体調の変化を感じて不安になっていたり、涼しい場所を求めていたりするために落ち着きがなくなると考えられます。

5.体が熱くなっている

熱中症になると体が熱くなります。「熱中症かも?」と思ったら、犬の耳や脇の下、お腹などを触ってみましょう。普段より熱く感じるのなら、熱中症の疑いが濃厚になります。

可能であれば、ペット用の体温計で直腸温を測定(肛門に体温計の先端を2〜3cmほど差し込んで測定)してください。犬の平熱は人よりも高く、大体38〜39℃です。熱中症の疑いがある犬が40℃を超えているのなら、熱中症と判断していいでしょう。

犬が熱中症になった時の応急処置

濡れたパグ

犬に熱中症の症状が見られたら、すぐに応急処置をする必要があります。動物病院へ行くのは、応急処置をしたあとです。高体温の状態が長くなるにつれ症状が重篤になってていくため、何の処置もせずにそのまま様子を見るのは絶対にNGです。

熱中症が疑われる犬にまずやるべきことは、涼しい場所(クーラーの効いた室内や風通しのよい日陰など)に移し、水が飲めるようなら飲ませることです。無理に水を飲ませると、誤嚥に繋がり危険なのでやめましょう。

その次は、体を冷やします。全身に水をかけたり、水で濡らしたタオルで体を包んだりして、扇風機や団扇などで風を送り冷却しましょう。太い血管のある首周り、後ろ足の付け根の内側、脇の下を重点的に冷やすと効率的です。

早く体を冷やそうとして、氷水や冷水を使うのはNGです。末梢神経が収縮して放熱しにくくなり、深部体温が下がらず逆効果となります。常温の水で冷やしましょう。

応急処置をしたら濡らしたタオルで体を包み、体を冷やしながら動物病院へ向かいます。向かう前に電話で連絡しておくと、到着してからスムーズに対応してもらえるでしょう。

犬の熱中症は、発症から90分以内に治療を開始しないと命に関わりますので、飼い主さんには迅速な行動が求められます。

動物病院へ行く目安は?

聴診器を当てられるラブラドールレトリーバー

応急処置によって元気になっても、実は内臓などがダメージを受けていて数日後に機能障害が出てくることがあります。犬に熱中症の症状が見られた場合は、回復したように見えても動物病院を受診するのが基本です。

意識が朦朧としていたり意識がなかったりする場合は一刻を争うので、応急処置後、体を冷やしながら早急に受診しましょう。

犬の熱中症を予防する対策

水分補給をする柴犬

高温多湿の環境であれば、屋外でも屋内でも車内でも熱中症になってしまう可能性があります。犬の熱中症を予防するためには、飼い主さんが対策をしっかり行うことが大事です。次のような対策が犬を熱中症から守ってくれます。

  • 夏場は室内の温度を26℃前後、湿度を50%程度を目安にエアコンで調節する
  • 夏場の散歩は朝晩の涼しい時間帯に行く
  • いつでも水を飲めるようにしておく
  • 屋外ではこまめに水分補給をさせる
  • 車内に犬を置いていかない
  • 冷却グッズを活用する

まとめ

キョトン顔で水枕を頭に乗せる犬

高温多湿になる夏場は、熱中症に要注意です。犬の熱中症は重症化しやすく命にも関わるので、初期症状を見逃さないようにしましょう。症状に気づいたら様子を見たりせずにすぐに応急処置をして、動物病院へ向かいましょう。

熱中症は最悪の場合死に至るとても怖い病気ですが、飼い主さんがしっかり対策を行えば防げる病気でもあります。屋外だけでなく屋内や車内でも油断せずにしっかり対策をして、愛犬を熱中症から守りましょう。

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